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ウニをたずねて八食に・先祖をたどる旅〜⑨


種差海岸をじっくり味わったあとは、

もうまったなしのウニまっしぐら、である。

私の生まれ育った埼玉県に海はないから当然ウニもとれない。

家族で寿司屋になど行く習慣もなかった。

私が食べた初めてのウニは、
母の親戚が送ってくれた八戸の冷凍ウニであった。

その冷凍ウニは、
なぜかホタテの殻みたいなのに、ギッチリ埋まってて、小さな私は長らくウニの生態を誤解していた。ウニがあんなに痛い体をしているとは知らなかった。

おそらく高価なものであったろうが、
いただきものでしか食べないので値段も分からず、
そうとも知らずバクバク食べた。

そういう経験を会えずとも南部の親戚にさせてもらって、恵まれていたと思う。

勿論いまはウニが高価で、
ありがたがって食べるものだと知っている。

おまけに高知の海にウニはいるけど、
ウニはその辺に売ってない。
カラフルな長太郎貝や、その辺の磯の貝をとって食べる人はいても、
トゲトゲしいウニを手間をかけて食べる文化はどうやら高知ではポピュラーではないらしい。

せいぜいウニの塩漬け瓶詰めを生協で買って、
何日かかけてちょびちょび味わうのが私の関の山である。

八戸では白い大盛りご飯をオレンジで覆うほど乗ったウニ丼を食べる…!!
そんな夢を見て飛行機に乗ってきたのだった。

種差から八食センターを目指す車中は
自作のウニの歌を歌いながら、空腹をまぎらわしていた。

八食センター。駐車場から小走りでウニに向かった。

八食センター内の食事処の看板にはあちこちでウニが大きく踊っていた。

ウニホタテイクラの豪華丼もあるが、
ウニ丼だけで3900円みたいな値段も見える。

産地だし旬だし、もっと安く食べられるのでは?と思っていたので、
そこに真っ直ぐ入っていく勇気はなかった。

お弁当コーナーもある。
ウニがたらふく食べられるなら、形態はなんでも構わない。

ウニ丼弁当の写真はご飯にウニの黄金色がギッシリ乗っているように見えた。

890円だ。

安すぎるのに、産地だし弁当だからだろうと、自分にいいように解釈して空腹すぎて判断力を欠いていた。

その結果手渡されたのは、

ウニの卵とじだった。思ったんと違う。

ご飯にぎっしりのってたのは、ほぼ卵だった。

空腹おそるべし。
いっぱいウニのってるといえばのってる。
高知にはこんな弁当売ってない。
しかし、私は卵とじ食べに来たんと違うで。

これは、名前が良くなかったね。
ウニ丼弁当じゃなくて、ウニの卵とじ弁当でしょ?
JAROに言うよ?


もうでもお腹空きすぎて、ありがたく頂いた。
八食センターの大きな木を見上げる外のテラスで。

美味しいは美味しいよ?勿論。

でも…私はこれでいいのか。
どんぶりいっぱいのウニを夢見て高知から飛んできたのではなかったのか。

八戸でご飯を食べるタイミングは、もうない。
日暮れ前に、八戸から母方の墓がある町へ移動しなくてはならないのだ。

ウニの卵とじ弁当を完食したあと、八食センター内をフラフラと見て回った。

八戸地方のうまいもんが揃うというだけあって、
お土産屋さんはもちろんのこと
いろんな食事処がある。

ウニ丼定食2500円…。
イメージしてたウニ丼に一番近くて妥当な値段。
これさっきのと足したら結局3000円以上するやんか。1人ぼっちでご飯食べるのにそんなに使ったことない。

逡巡した挙句、
食べることにした。

次いつ八戸に来られるかわからへん。
人の命も儚い。
悔いなく生きよう、と。

ウニの卵とじ丼の後にウニ丼定食、

もう大食い芸人の食いしん坊万歳状態である。

いつものキャラと違うことをしてしまうくらい私はウニが大好きなんだ。

食べたウニ丼定食。

美味。もう我が生涯にウニに関しては一片の悔いなし。


美味しかったんだけど、
正直、お腹いっぱいだった。空腹のスパイスを欠いていた。
卵とじ弁当食べる前に食べたかった。

でも、きっとこれ食べなかったら後悔したと思うので、食べられて良かった。

本願成就である。

ご先祖様ありがとう。



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