カバディは答辞のあとに

マサイ族にストーブを。エスキモーに冷凍庫を売りつけることも可能な奇跡のセールスマン山下達次郎は、ククルス・ドアンの島でバカンスの真っ最中だった。
 そこで今からデスゲームが始まるとも知らないまま。
 突如警報が鳴り響いた。この島にそんな機能を持った建物があるはずがないのだが。空は真っ赤に染まり、ククルス・ドアンの家の上空に青緑色の光が降り注いでいる。
 達次郎は薪割りを中断し、すぐさまドアンの元へ向かった。
「ドアンさん!明けましておめでとう!じゃなかった。何があったんですか!?」
ドアを開けながら達次郎は叫ぶ。
 「こちらへ来ては行けない!!!」
ドアンは叫んだ。だが時すでに遅し。
「ティロテン♪」
耳がキーンとなる音量でスマホの通知音が部屋中に鳴り響いた。
それが、自分が部屋に入ったことを「カウント」されたと直感できることは言うまでもなかった。
 部屋にはククルス・ドアン、ドアンの飼っている山羊、見習い牧師のジョフがそれぞれ部屋の四隅に立っていた。
 「明けましておめでとう・・・か。ある意味、この状況にぴったりの言葉なのかもしれんな。まぁこうなってしまっては仕方がない。早く君も部屋の角に立ちなさい。」ドアンが優しく指図する。

言われるがまま、達次郎はキッチンに一番近い部屋の角に立った。キッチンには、まだソーセージエッグを焼いた後の匂いが立ち込めていた。

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