AIを活用したITインフラ構築

近年、AI(人工知能)の進化は目覚ましく、さまざまな分野でその技術が活用されるようになっている。
ITインフラの構築や運用管理において、AIの自動化技術は大きな注目を集め、従来、インフラ構築には高度な専門知識と時間が必要だったが、AIを活用することで、これらのプロセスが効率化され、より迅速かつ正確に行えるようになってきた。

ITインフラ分野では、クラウドリソースのプロビジョニングや運用管理を自動化するためにAIが活用されている。これにより、リソース管理の効率化やコスト削減が実現し、多くの企業がこの技術を導入している。
また、自然言語処理技術の進展により、エンジニアはコードを書くことなく自然言語でインフラ構築を指示できるようになりつつある。このような背景から、AIを活用したITインフラ構築は今後さらに重要性を増していくと考えられるので、まずはどのような種類があるか見ていきたい。


1. AIを利用したクラウドインフラの自動化

AIを使ったクラウドインフラの自動化では、リソースのプロビジョニングや最適化、運用管理を効率化する。
たとえば、AIはサーバーや仮想マシンの最適な構成を予測し、自動的にリソースを割り当てる。これによって手作業で設定する必要がなくなり、効率的なリソース管理が可能になる。
また、AIは過去データを分析し将来のリソース需要を予測することで、自動的にスケールアップ・スケールダウンを行い、無駄なリソース消費を防ぐ。さらにストレージ管理にもAIが活用されており、ストレージリソースを監視しパフォーマンスと容量を最適化する。予測分析によって、新しいボリュームを事前に追加しストレージ不足を回避できる。

ツール例

AIを利用したクラウドインフラの自動化を実現するためのツールやサービスには、以下のようなものがある。それぞれがインフラのプロビジョニング、最適化、自動管理をサポートする。

1. Terraform by HashiCorp
概要
: マルチクラウド対応の**Infrastructure as Code(IaC)**ツール。HCLを使ってリソース定義し、AWSやAzureなどで自動プロビジョニングを行う。

  • 特徴: クラウドリソースの自動管理、Kubernetesクラスター対応

  • 料金: 無料プランあり。Standardプランは$0.00014/時間/リソース

2. AWS CloudFormation
概要
: AWS専用のIaCツール。テンプレートでAWSリソースを定義し、自動的にプロビジョニング・管理する。

  • 特徴: AWSリソースの自動管理、スタック操作の自動化

  • 料金: 無料で利用可能(リソース使用料は別途)

3. Red Hat Ansible Automation Platform
概要
: 構成管理、自動デプロイメントを行うオープンソースツール。マルチクラウドやオンプレミス環境に対応し、大規模なITインフラ管理に最適。

  • 特徴: 複数環境での統合管理、セキュリティ強化

  • 料金: $5,000/年から(最大100ノード)

4. Google Cloud Deployment Manager
概要
: Google Cloud上でインフラをコードとして定義し、自動的に構築・管理するツール。YAML形式で簡単に設定可能。

  • 特徴: Google Cloudリソースの自動プロビジョニング

  • 料金: 無料(リソース使用料は別途)

5. CAST AI
概要
: AIベースでKubernetesクラスターの最適化と自動スケーリングを行うプラットフォーム。リアルタイムでコスト削減も支援。

  • 特徴: Kubernetesクラスターの最適化、コスト削減

  • 料金: 従量課金制(詳細は要問い合わせ)


2. Natural Language Infrastructure as Code (NLIC)

Natural Language Infrastructure as Code (NLIC)は、人間が理解できる自然言語でクラウドリソースやその関係性を記述し、それをコードに変換してインフラ構築を行うアプローチ。
従来はYAMLやJSON形式でコードを書く必要があったが、このアプローチでは簡単な英語文でもインフラ設定を書けるため、複雑なコード知識なしでもクラウド環境を管理できる。
また技術者と非技術者が同じ言語でインフラについて議論できるため、チーム全体でのコラボレーションも向上する。

ツール例

1. Pulumi
概要
: Pulumiは、一般的なプログラミング言語(Python, JavaScript, TypeScript, Goなど)でインフラを定義できるIaCツール。NLICに近い形で自然言語に近いコードを使ってクラウドリソースを管理できる。AWS、Azure、Google Cloudなど複数のクラウドプロバイダーに対応。

  • 特徴: プログラミング言語でインフラを定義し、エラー検出やオートコンプリート機能が利用可能。

  • 料金: 無料プランあり。チーム向けプランは$50/ユーザー/月から。

2. HashiCorp Terraform with NLP Integration
概要
: Terraformはクラウドリソース管理のためのIaCツールだが、最近では自然言語処理(NLP)を統合した拡張機能が登場しており、自然言語からTerraformコードを生成できるようになっている。これにより、技術者以外でも簡単にインフラ構成を記述できる。

  • 特徴: マルチクラウド対応で、自然言語からIaCコードへの変換が可能。

  • 料金: 無料プランあり。Standardプランは$0.00014/時間/リソース。

3. Salami
概要
: Salamiはオープンソースのツールで、自然言語からTerraformコードへの変換を行う。GPT-4モデルを活用し、人間が書いた自然言語の指示からインフラ構成コードを自動生成する。

  • 特徴: 高精度な自然言語解析とTerraformコード生成機能。

  • 料金: 無料(オープンソースプロジェクト)。

4. AgentGPT
概要
: AgentGPTはChatGPTベースのツールで、自然言語で目標を設定するだけで自動的にタスクを生成し、それに基づいてインフラ構築が行われる。AWSやAzureなどのクラウド環境に対応しており、簡単な指示だけで複雑なインフラ設定が可能。

  • 特徴: 自然言語ベースのタスク生成と自動インフラ構築。

  • 料金: 無料プランあり。有料プランは使用量に応じた従量課金制。

5. GitHub Copilot for IaC
概要
: GitHub CopilotはAIによるコード補完ツールであり、IaC(Infrastructure as Code)にも対応している。自然言語プロンプトからTerraformやCloudFormationなどのIaCコードを生成し、自動的にクラウドリソースの設定が行える。

  • 特徴: 自然言語プロンプトからIaCコード生成が可能。

  • 料金: 無料トライアルあり。個人向けプランは$10/月。


3. IaL(Infrastructure as Language)

IaL(Infrastructure as Language)はNLICと似たアプローチだが、その焦点は自然言語から直接インフラコード(例: Terraformなど)への変換にある。IaLでは自然言語で記述された要件定義書からAIが自動的にコード生成し、そのコードによって実際のインフラ構築まで行われる。
このため技術者だけでなくビジネス担当者も含めた幅広いユーザー層が利用可能となる。IaLは具体的なツールや環境(例: Terraform, AWSなど)に焦点を当てており、自動生成されたコードはそのままデプロイ可能な形になることが多い。一方でNLICはより抽象的なレベルでリソースや設定を扱うため特定ツールに依存せず柔軟性が高い。

ツール例

NLICと同様


4. GitHub Copilot for Infrastructure as Code (IaC)

GitHub Copilotは自然言語プロンプトからインフラコード(IaC)を生成する機能も提供しており、それによってTerraformやPowerShellなどのIaCツール向けコードが自動生成される。
Copilotは機械学習モデルによってユーザーの意図を理解し、それに基づいて正確なインフラコードを生成するため、高度な設計やビジネスロジックに集中できる。またリアルタイムで学びながら作業できるため、新しいメンバーでも迅速にオンボーディング可能。

ツール例

1. GitHub Copilot
概要
: GitHub Copilotは、Visual Studio CodeやJetBrainsなどのIDEに統合されており、自然言語プロンプトからコード補完や生成を行う。TerraformやCloudFormationなどのIaCツールにも対応しており、インフラコードの自動生成が可能。開発者がインフラ要件を自然言語で記述すると、それに基づいて適切なコードが提案される。

  • 特徴:

    • 自然言語プロンプトによるIaCコード生成

    • TerraformやCloudFormationなどのIaCツール対応

    • コード補完、エラー検出、ドキュメント生成機能

  • 料金:

    • 個人プラン: $10/月 または $100/年

    • ビジネスプラン: $19/ユーザー/月

    • エンタープライズプラン: $39/ユーザー/月

参考リンク

2. GitHub Copilot with Terraform
概要
: GitHub CopilotはTerraformと連携してIaCコードの自動生成を行う。Terraformの設定ファイル(HCL形式)を作成する際に、Copilotが自然言語プロンプトからコードを提案し、リソース定義や変数設定などを効率化する。

  • 特徴:

    • Terraformのリソース定義やモジュール作成を補助

    • 自然言語でインフラ要件を記述し、自動的にTerraformコードへ変換

    • エラー検出やドキュメント生成もサポート

  • 料金: GitHub Copilotの料金体系に準ずる($10/月から)

参考リンク

3. GitHub Copilot for CloudFormation
概要
: GitHub CopilotはAWS CloudFormationにも対応しており、JSON形式でインフラテンプレートを作成する際に役立つ。Copilotが自然言語プロンプトからCloudFormationテンプレートを自動生成し、AWSリソースのプロビジョニングを効率化できる。

  • 特徴:

    • CloudFormationテンプレートの自動生成(JSON形式)

    • パラメータ設定やリソース定義の補完機能

    • オートコンプリートによる効率的なテンプレート作成

  • 料金: GitHub Copilotの料金体系に準ずる($10/月から)


5. AIOpsによるIT運用管理

AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)はIT運用管理における問題検出や解決策提案などを自動化する技術。
AIはリアルタイムでシステムデータ(ログ, メトリクス)を監視し異常なパターンや挙動を検知してアラート発する。また機械学習アルゴリズムは過去データからパターン学習し問題発生時にはその原因となっている要素(サーバー, ネットワーク, アプリケーションなど)特定する。
AIOpsは異常検知だけでなく、自動修復機能も提供しており人為的ミス削減やダウンタイム短縮にも貢献している。

ツール例

1. Moogsoft
概要
: Moogsoftは、リアルタイムで異常検知やノイズリダクションを行い、IT運用の自動化を支援するAIOpsプラットフォーム。機械学習アルゴリズムを用いてイベント相関や根本原因分析を自動化し、迅速な問題解決を可能にする。

  • 特徴: 異常検知、自動インシデント管理、ノイズリダクション

  • 料金: 無料プランあり。プロフェッショナルプランは$15/ホスト/月から。

参考リンク

2. Splunk
概要
: SplunkのAIOpsソリューションは、大量のデータをリアルタイムで処理し、機械学習を活用して異常検知やインシデント対応を自動化する。データ分析と可視化が強力で、IT運用の効率化に貢献する。

  • 特徴: リアルタイムデータ処理、機械学習による予測分析、自動インシデント対応

  • 料金: $15/ホスト/月から(年額契約)

参考リンク

3. Dynatrace
概要
: Dynatraceはフルスタック監視とAIOps機能を提供し、アプリケーションパフォーマンスからインフラ監視まで一元管理できるプラットフォーム。AIエンジン「Davis® AI」により、自動的に根本原因分析と予測分析を行い、問題解決を迅速化する。

  • 特徴: 自動根本原因分析、リアルタイム予測分析、フルスタック監視

  • 料金: $0.08/時間(8GiBホストあたり)

参考リンク

4. BigPanda
概要
: BigPandaはイベント相関と自動化されたインシデント管理機能を提供するAIOpsプラットフォーム。AIと機械学習を活用して、大量のアラートから重要なものだけを抽出し、自動的にインシデント対応を実施する。

  • 特徴: イベント相関、自動インシデント管理、リアルタイム分析

  • 料金: カスタム料金(要問い合わせ)

参考リンク

5. ScienceLogic
概要
: ScienceLogicはハイブリッドクラウド環境に対応したAIOpsプラットフォームであり、リアルタイムでITインフラ全体の監視と自動化された問題解決が可能。異常検知から修復まで一貫したワークフローが提供される。

  • 特徴: ハイブリッドクラウド監視、自動修復ワークフロー、リアルタイム分析

  • 料金: カスタム料金(要問い合わせ)

6. Amazon DevOps Guru
概要
: Amazon DevOps Guruは、機械学習を活用してクラウド環境で異常な動作を自動的に検出し、インフラやアプリケーションの問題を特定するサービス。異常検出後に推奨される修正アクションも提供されるため、運用チームの負担を軽減できる。

  • 特徴: 異常検出、自動アラート、推奨修正アクション

  • 料金: モニタリング対象リソースに基づく従量課金制(例: $0.004/1,000 AWS CloudWatchメトリクス)

参考リンク













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Ken @ インフラエンジニア
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