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ランダムな3単語から短い物語を書く(お題「天体観測/珈琲/粗探し」)

実は今年の1月末くらいから、言葉をまとめる練習として「ランダムな3単語から短い物語を書く」ということをしていました。今日の今日までスマホのメモ帳に眠らせていたのですが、段々ともったいない気がしてきたので今後ちょこちょこと載せてみようと思います。

今回の文章は1月末に書いた文章を推敲したものです。
お題は「天体観測/珈琲/粗探し」でした。


私の仕事は星座を見出すことだ。
夜空を生簀に流し込み、散らばった星々を繋げる。そうして見出した星座を上司に報告する。報告した中でも特に優れた星座だけが人間たちに言い伝えられていく。私はこの仕事をとても誇らしく思っていた。

同僚に星崎という男がいる。彼がここに来たのは去年のことだった。彼はその名前に負けない才能を持っていた。星崎はいつだって、誰よりも早く、的確に、独創的な星座を見出すことができた。私が焦り始めた頃には、彼はここのエースと呼ばれるようになっていた。

今日も星崎は誰よりも早く上司を探しに席を立つ。私は彼が見えなくなるのを見計らい、こっそりとその星座を覗き込む。独創的で美しい星座だった。粗探しは奴の完璧さを見出す作業にしかならなかった。この星座が跡形もなく消えてしまえばどんなに良いだろう。私はカップの珈琲をぐいと飲み干した。

上司と戻ってきた星崎は夜空を見おろし、例の星座を探し始める。首を捻る彼らを横目に私は黒い液体を啜った。あまりの苦さに顔を顰める。見るとカップの中には星が揺らめいていた。星を繋げてみる。すると非の打ちどころのない完璧な星座が浮かび上がった。紛れもない星崎の星座だった。この苦すぎる液体に口をつけることすらできない私を責めるように星たちは冷たく輝いている。

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