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私なりに、今を生きることを考えた:『大事なことほど小声でささやく』の感想

いわた書店さんに選書してもらった12冊の本を読み進めている。

2冊目のレビューは、森沢明夫さんが書いた『大事なことほど小声でささやく』。

あらすじ

評価:★★★★☆

身長2メートル超のマッチョなオカマ・ゴンママ。昼はジムで鍛え、夜はジム仲間が通うスナックを営む。名物には悩みに合わせた特別なカクテル。励ましの言葉を添えることも忘れない。いつもは明るいゴンママだが、突如独りで生きる不安に襲われる。その時、ゴンママを救ったのは、過去に人を励ました際の自分の言葉だった。笑って泣ける人情小説。

本の裏表紙より引用

第六章から成る短編小説。ゴンママとバーの仲間たちが悩み、誰かに救われてまた進んでいくまでの経緯が描かれている。

感想

いわた書店さんに選んでもらう前に、少し気になっていたけど設定があまり好きじゃなかった。私はお酒は飲まないし、ジムに行く習慣もないから、共感できるところがあるのかなと思っていた。そうしたら選書本に含まれていて、実際読んでみると、こんなバーがあったら行ってみたいし、仲間入りもしたいと思った。なんなら筋トレまでしたくなった。

カクテル言葉も良かった。カクテルに意味があるなんて初めて知った。花言葉みたいでおもしろい。毎回どんなカクテルが出て、その意味を知るのはワクワクした。

明るくて頼れる姉御?のゴンママも素敵。ゴンママは悩みなんて無さそうだけど、実は一番孤独を抱えている。ママの存在と言葉にみんなが救われて、ママもみんなに救われる。登場人物たちは変わり者だけど、楽しい人たちばかり。でもみんな、ひとりになると色んなことに思い悩んでいた。未来の不安、過去にとらわれている。

そんな中で大事になってくるのが、「今を生きる」。

当たり前のことだから難しい。過去や未来を心配したり、恨んだりして、今を忘れがちになる。でも登場人物たちは、誰かの言葉や誰かの何気ない行動や優しさに癒やされていく。

私は第四章の「四海良一の蜻蛉トンボ」の話がお気に入り。それを読んだ時、自分が求めている言葉はある日、突然やってくるんだと思った。

久々に小説で泣いた。この感想を書くためにチラッと読んだだけでも涙腺が緩んでしまった。四海のお調子者キャラと、彼の抱えてるものが重くて…。彼は過去にとらわれて、大切な人から目をそらしていた。そんな彼の心を軽くするのがゴンママの言葉と、家族の存在だった。

好きな言葉

言葉ってのはね、大事なことほど小声でささやくものなの。その方が相手の心の奥にまでしっかり届くんだから。

本書より

大事なことほど、大きな声で言った方がいいんじゃないのかと思った。でも大事な言葉は、何気ない瞬間に誰かの心に届く。大きな声で言わなくても威力がある。

誰かにもらった言葉がずっと心に残って、ふとした瞬間に何回も脳内再生されることがある。そういう言葉を心の拠り所にして、頑張れることもいっぱいある。本も人が書いたものだから、本から得た言葉がずっと記憶に残るときもある。この本も、私の中で大切な1冊になった。

今を生きる

この本のテーマは「今を生きる」ことだと思った。

過去と未来を思い煩っても、それは無駄なだけ。辛い過去にとらわれてないで、未来の不安もぜーんぶ忘れて、いまこの瞬間だけをしっかりと味わって生きなさい。それが禅の「幸せに生きる極意」なのよ。

本書より

「今を生きる」は私の生活のテーマでもある。今を生きることを考えると、「日日是好日」という言葉も思い出す。禅の言葉で、1日1日を大切に生きる心構えという意味。

頭では分かっていても、実際は難しいから苦しい。

家族からの暴力に苦しんで生活していた時の私は、心穏やかに過ごすことは難しかった。明日も昨日も考える暇もない。あれは「今を精一杯生きていた」ように見えて、「今を乗り切る」ことに必死だったような気がする。

あの家庭事情と、今の穏やかな生活から思った。

私の思う「今を生きる」は、目の前にいる人との時間を大切にして、体に良い美味しいものを食べて、ぐっすり寝て、趣味を楽しんで、散歩してお花を愛でる。やりたいこと、やらないといけないことも頑張る。未来と過去はたまに振り返るくらいでいい。

良い日もそうじゃない日も、あるがまま。悪い日、悪い感情は排除したくなるけど、100%元気でいられない。そういう日もあるんだと受け入れるようにする。

私の好きな「諸行無常」という言葉も、今を精一杯生きろってことなのかな。ずっと同じものなんてなく、常に変化していく。だからこそ「今」を生きないと、後悔が増えるのかもしれない。未来は「今」の積み重ねだと、私の旦那さんは言う。

未来も過去も気になるけど、なるべく「今」を大切にして、未来の自分が今日と同じように笑っていられるようにしていきたいな。

選書本1冊目のレビュー記事


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