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『モンキーマン』「スラムドッグ$ミリオネア」の教訓

大珍品だった。

どこが大珍品なのか?

本作は、前半と後半でまるで異なる映画を観ているかのような、
極端な作風の違いが特徴的だ。

何が違うのか?

演出、編集、撮影、照明、アクションなど、
映画制作に関わるあらゆる要素において、
前半と後半で大きな変化が見られる。

特にアクションシーンは、
後半になるにつれてそのクオリティが飛躍的に向上する。

なぜこのような違いが生じたのか?

前半の演出がちぐはぐに感じられるのは、
主人公の成長過程を描く上で意図的な演出という解釈は可能だが、

後半のような演出をする監督が前半のような演出にOKを出す可能性は極めて低い。

監督を含めた制作チームの力量不足が原因なのか、
なにかしら理由はあるだろう。

まるで、前半と後半で異なるチームが制作に関わったかのような印象すら受ける。

ひとつ考えられるのは、デヴ・パテル、監督・主演で始めたけど、
なんかちがう・・・助けて、ジョーダン・・・・

では、後半とはどこから?

主人公がサンドバッグを叩き、

おじさんがボンゴのような打楽器を奏でるシーンから始まる後半のアクションシーンは、

そのダイナミックな映像美とスリリングな展開はすばらしい。

エレベーターのドアが開くだけでも美しく演出されているように、

アクションシーンだけでなく、
その他のシーンにおいても、

カメラワークや美術など、
細部にまでこだわりを感じられ、高い完成度を誇っている。

編集に関しては、母親と署長のシークエンスは、

徐々にその真相を明かしていくという繋ぎが採用されている。

大まかな内容は類推可能だが、

この手法は必ずしも効果的とは言えず、

もう少し早い段階で二人のシーン、

主人公の怒りを明示した方が、

観客の感情をつかむ上で役立ったかもしれない。

その独創的なインドならではの作風と後半の圧倒的なアクションシーンが魅力の、
少し変わった展開の自分の中では大珍品と言える作品だ。

【蛇足】

かつて、
私が在籍していた会社が配給を担当したデブ・パテル主演『スラムドッグ$ミリオネア』は、アカデミー作品賞を受賞したにも関わらず、
ビジネス的な大成功には繋がらなかった。

この経験から、アカデミー賞を受賞した作品が必ずしもヒットするとは限らないことを実感した。

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