『アグリーズ』「ザ・クリエイター/創造者」のように圧倒してほしかった。
近未来SFは、
その特異な世界観を視覚的に表現することで、
観客を物語の世界へ没入させ、
深い共感を呼び起こすことができるジャンルである。
宇宙ステーションや都市といった舞台設定は、
単なる背景ではなく、
物語のテーマやキャラクター性を映し出す重要な要素となる。
しかし、いくつかのSF作品は、
斬新なアイデアや哲学的なテーマに重きを置き、
舞台設定のデザインとストーリーが乖離しているケースも少なくない。
本作は、16歳になると整形手術を受け、
美しさに統一される近未来を舞台とした作品だ。
本作の美術デザインは、この独特な世界観を表現するために、
洗練された近未来都市の風景や、無機質な施設の空間などを巧みに描き出している。
特に、整形手術後の統一された美しさを持つ人々の姿は、
不気味さと美しさが共存する独特なビジュアルとして印象に残る。
しかし、本作の美術デザインは、世界観の構築に貢献している一方で、
物語の推進力にはなっていないという印象も受ける。
主人公タリーが友人を探し、
自身のアイデンティティを確立していく過程は、
テーマ性としては興味深いものの、セリフに頼りすぎており、
ビジュアル的に物語を推進するにしては起伏に欠け、
観客を飽きさせがちである。
あの・・煙と、あの人とあの人の変身はインパクトはあった!
もし、本作が「ザ・クリエイター/創造者」のような、
圧倒的なビジュアル表現の物量と、
シナリオの融合で観客を魅了する作品を目指していたのであれば、
例えば整形手術後の社会の矛盾をより露骨に表現したり、
主人公の心の葛藤を視覚的なメタファーで表現したりすることで、
観客に強いインパクトを与えることができたはずだ。
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