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エッセイのご紹介416 犬と牡丹(小黒恵子著)
こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。
今までは、神奈川新聞のリレーエッセイをご紹介してきましたが、今回は、神奈川新聞のサンデーブレイクに掲載されたエッセイをご紹介いたします。
記念館には、自筆の原稿が残っており、ここでは、原稿の方をご紹介します。実際の記事は、校正を重ね、少し異なっています。
詩人の書いたエッセイ、独特の言葉選び等を感じていただけると幸いです。
![](https://assets.st-note.com/img/1655000228911-vkhrIYOQIg.jpg?width=1200)
「犬と牡丹」
詩人・童謡作家 小黒恵子
日本画家の小倉遊亀さんの牡丹の絵が好きだ。そよ風にうすい花弁がひらりとかすかにゆれる気がする。
観る人の心を和ませ豊かにしてくれる。
今なお現役で描いている遊亀さんは明治二八年生れ、数えで百歳だそうだ。
遊亀さんの牡丹と言うと、十年前に八五歳で亡くなった母を思い出す。
いま十一歳になるシーズー犬が来た日、獣医さんが篭から出したとたん母が「あれっこの子、小倉遊亀さんの牡丹の絵にそっくりね。」と言った。
一瞬みんなびっくりしたが、まだ伸びきらない子犬の頭部の柔らかい毛が開いたさまは、なるほど牡丹の花にそっくりだった。
それから暫時「牡丹ちゃん」と言っていたが、毛も伸びフクロウのようなまんまるい目玉が目立つようになり、いつのまにか「ダンちゃん」になってしまった。
今年は国際家族年、家族ってすばらしい。泪がでるほど美しい。年とったダンをはじめ動物達と私の五人家族は、愛と信頼で支えあっている。
この初春早々病気で寝込んで了った私を、なめて治す動物の習性を発揮して、食事も求めず看護してくれた。
この家族達に心配や悲しみを与えてはならないと強く思った。
こんな時私は家族を抱きしめて、暖かい涙と共にたくましく生きる力が湧いてくる。牡丹のように暖かく美しい幸せを築いていこうと、国際家族年の初春に改めて思った。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回も、小黒恵子の神奈川新聞のサンデーブレイク原稿をご紹介します。(S)
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