見出し画像

詩のご紹介 365 まつぼっくり(小黒恵子詩)

 今日は、まつぼっくり(まつぼっくりの会 発行)に掲載されていた詩をご紹介します。
 まずは、「まつぼっくりの会」についての記載をご紹介します。

「まつぼっくりの会」について
  こどもたちのためにいい本をつくろう ― すこしばく然としていますが、そんな目的をもって、まつぼっくりの会は、一昨年(註:1967年)発足しました。
  会の主旨は、次のとおりです。
     ・こどもたちに愛されるいいうた(童話を含む)をつくる。
     ・こどもたちに夢をいだかせるいいうたをつくる。
     ・こどもたちの心に残るいいうたをつくる。
     ・たくましいこどもを育てるいいうたをつくる。

  まつぼっくりの会は、毎月一回、定期的に作品研究会を行い、年に四回『まつぼっくり』を発行します。
(註:1969年以降、年に四回は発行されておらず、『まつぼっくり15』では、機関誌「まつぼっくり」を発行しています。
となっており、下記の 定期購読・・・も記載されていない)
  『まつぼっくり』の定期購読ご希望の方は、1年分600円をまとめて
    東京都杉並区浜田山●~●~●
      ●●方 まつぼっくりの会(〒166)
  までお送りください。送料は会で負担いたします。また、会則をご希望の方は、ご遠慮なくお申し越しください。
  なお、会では、児童詩、児童画など、読者の作品投稿をお待ちしています。(住所、氏名、年齢を明記するようおねがいいたします)。

まつぼっくりの26  巻末

「まつぼっくりの会」について
  まつぼっくりは昭和四十二年に第一号を発行してから三十年になりました。仲間たちも色いろな出発をしてくれてうれしいかぎりです。当初のモットーは次の四つでしたが今も変わりません。
・こどもたちに愛されるいいうた(童話をふくむ)をつくる。
      ・こどもたちに夢をいだかせるいいうたをつくる。
      ・こどもたちの心に残るいいうたをつくる。
      ・たくましいこどもを育てるいいうたをつくる。
◎同じ志をお持ちの方はどうぞ   会費一五〇〇円/月

季刊日本童謡秋季号(第3巻第11号)P24より 

「まつぼっくり」4 1968(昭和43)年7月30日発行
 ・風が吹く……立石 巌
 ・食いしんぼのヤギ……小黒恵子
 ・ゆめをたべるバク……赤岡江里子
 ・ちょっとだけ とばせてね……高木あきこ
 ・ひるの つき……高橋吉子
 ・夕立どしゃぶり……浅田真知
 ・病院で……渡辺敏子
 ・馬のいない馬小屋……もりただし
 ・おんぶとだっこ……赤岡江里子
 ・もぐらのめがね(お話し)……立石 巌
 ・市長さんと遠めがね(お話し)……下田幸子
 ・”バオバブのうた”(お話し)……小黒恵子
 ・駅のねずみパク(お話し)……柳町輝子
 ・授業参観……高木あきこ
 ・シツレイシマス……小黒恵子
 ・外はいいな……高橋吉子
 ・かくれんぼ……増田泰子
 ・パパの手 ママの手……すず木みのる
 ・子犬が生まれたよ……赤岡江里子
 ・やーなんだ……立石 巌
 ・おばけのはなし……もりただし
 ・まっていたのは(お話し)……天野康子

                       小黒恵子 詩
食(く)いしんぼのヤギ
  タンポポ たべた
  クローバ たべた
  むぎの穂(ほ) たべた
  チクチク おくちが
  くすぐったい メエエー

  あの子と あの子の
  おはなし たべた
  お日さま たべた
  ポカポカ おなかが
  あったかい メエエー

  たべちゃった たべちゃった
  ひばりの声も たべちゃった
  ちょうちょが あわてて にげてった

まつぼっくり 4(1968.7.30発行)

                        小黒恵子 作
“バオバブのうた”

  大きいのが、とってもじまんのバオバブの木がきょうも大きな声(こえ)でうたっています。
     地球(ちきゅう)に足をふんばって
     空とあくしゅをしてるんだ
     おれはバオバブ 地球の王様(おうさま)
     世界(せかい)じゅうでいちばんでかいんだ
     嵐(あらし)がふいても洪水(こうずい)がきても
     ちっともちっともこわくない
     おれは王様 バオバブさ

  バオバブがそううたっていばってからだをゆすると、ゴオッと風が起(お)こってあたりの草や木は、ペチャンコにおじぎをしました
     おれは王様 バオバブさ
  バオバブはむねをはって、もう一度(いちど)とくいにうたいます。するとおへそのあたりでチッチと笑(わら)い声がしました。そこいらへんをチョンチョンとえんりょもなく、くすぐりまわるんです。バオバブは笑ったらいげんがなくなると思って、しかめっつらしてどなりました。
 「コラッ!! ちびすけやかましいぞ。」
 「ふふふふ、バオバブさん、いばってないでお話しましょうよ。」
 「なにお。しっけいな。わしは王様バオバフだぞ。」
 「わかってますよ。百科(ひゃっか)事典(じてん)にちゃんとのってますものね。直径(ちょっけい)十メートル以上(いじょう)もある世界一の巨木(きょぼく)でパンヤ科(か)、花は白くて一五センチ、五千年以上の木もある。」
 「ほうそうか。おれ様のことが百科事典にのっていたか。」
 「もちろん、わたしのことだってのってますがね」
 シャカイドリはちょっとむねをはっていいました。バオバブは本にのっていたというので、気をよくしたところでしたが、こんなちびすけといっしょと聞いてがっかりしたようでした。
 「百科事典なんかくだらん。」
 「でもおもしろいですよ。いろんな国の話や世界中(せかいじゅう)のめずらしいことなどなんでも書いてありますよ。」
 「わしの知(し)らんことも、のっているのか。」
 「ええ。もちろん、だいたいバオバブさんなんていばってばかりいるけど、なにも知らないんじゃないですか。」
 「なに。しっけいな。四方(しほう)八方(はっぽう)地平(ちへい)線(せん)まで見えるんだぞ。おれ様の知らないことがあってたまるものか。」
 「アハハハ、わたしは小さいけど空が飛(と)べますよ。山の上だって海の上だって、みんなみてきて、知っているんですよ。この間(あいだ)わたしが遠出(とおで)した時、旅(たび)の途中(とちゅう)の迷(まよ)い鳥(どり)にあいましてね、日本というすごくきれいな国に行って来たといってましたっけ。おもしろいいろんな話を聞かしてくれましたよ。」
 そういわれると、いばりしんぼだけれど気のよわいバオバブは急(きゅう)に自分が小さくなったような気がして、しょんぼりとつぶやきました。
—   どうもこのごろちと目が悪(わる)くなったわい ―  
   地球に足をふんばって
   空とあくしゅをしてるんだ

 早(はや)起(お)きの小鳥たちもまだ寝(ね)てるというのに、バオバブは夜明けのバラ色(いろ)の空に向(む)かって、大きな声でうたっていました。けれどそこまでうたうと、プツリとだまって考えこんでしまいました。
 「おいちびすけ。日本てのはそんなにすばらしいのか。」
 シャカイドリはねむい目をこすっていいました。
 「すばらしいのなんのって。ミズバショウがまっしろに咲(さ)いてる尾瀬(おぜ)沼(ぬま)、頭(あたま)を雲(くも)の上に出してる美(うつく)しい富士山(ふじさん)、東京タワーが三角(さんかく)のきのこみたいにそびえる世界一(せかいいち)の大都市(だいとし)東京(とうきょう)・・・・・・」
 「その東京タワーってやつはおれよりでかいかい。」
 「そういえば東京タワーの方が背(せ)は高(たか)いけど、やせっぽちだそうですよ。でも夜になるとあかりがついてクリスマスツリーみたいにきれいに光るってことですよ。」
 「じゃ、東京タワーにはどんな鳥(とり)が住んでるんだ?」
 「それがどうしたわけかスズメも住んでいないそうですよ。」
 「ふん。そうか。そんなのは木のくずだ。もっといろんな話をしてくれ。」
バオバブはだんだん元気をとりもどしました。
—   フン。東京タワーはスズメもカラスも住まんのか。どうだいおれの枝(えだ)は。いろんな鳥のホテルになってるじゃないか。人間(にんげん)たちがおれの皮(かわ)をけずってチューインガムにしてしゃぶってるじゃないか ―
  「おい君(きみ)たち。もっといろんな国の話をしてくれ。」
  「あっ。オオルリチョウが来た。ヨーロッパ旅行(りょこう)から帰(かえ)ってきたんですよ。あっ。カンムリバトもやって来ましたよ。みんなで話を聞きましょうよ。」
 それから ―
 バオバブの木には前(まえ)よりも大勢(おおぜい)の小鳥たちが集(あつま)って来ました。みんなうたの練習(れんしゅう)をしたり旅のおもしろい話を聞かしてくれました。
 バオバブの木からは、いつも楽(たの)しい笑い声が聞こえてきます。 オカピ チータ キリン ライオン ゴリラ ゾウ ダチョウ みんな小鳥の話を聞きに来ました。
 きょうも真赤(まっか)な夕日が地平線にしずんでいきます。バオバブは、いばるのをすっかりやめてニコニコとだまって笑っていました。けれどふしぎなことに森のほうから「バオバブのうた」が聞こえてきます。
   地球に足をふんばって
   空とあくしゅをしてるんだ

それは森の小鳥や動物(どうぶつ)たちの楽しく合唱(がっしょう)する声でした。

まつぼっくり 4(1968.7.30発行)

                         小黒恵子 詩
シツレイシマス

  シツレイシマス — 
  朝から晩(ばん)まで シツレイシマス
  それだけじょうずな 九官鳥(きゅうかんちょう)
  おかげでみんなが シツレイシマス
  すっかりうつって シツレイシマス
  こねこのまえを とおるにも
  やっぱりいっちゃう シツレイシマス
 
  コマッテシマウ ― 
  ちょっとくびまげ コマッテシマウ
  このごろおぼえた 九官鳥
  おかげでみんが コマッテシマウ
  すっかりうつって コマッテシマウ
  だれかとおはなし していても
  なんどもいっちゃう コマッテシマウ

まつぼっくり 4(1968.7.30発行)

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 次回も、「まつぼっくり」(まつぼっくりの会 発行)から、小黒恵子作品をご紹介します。(S)


いいなと思ったら応援しよう!