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短編小説集《note版》

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#小説

いつか 秘術は解けるから

 志那子はかれこれ三十年以上、変わらず穏やかにほほえみ続けている。

 りん、とちいさく風鈴の音がして、ああそう言えばしばらく軒先に吊るしたままだった、と思い出す。片付けなければ片付けなければとそのままに、つい日が経ってしまった。朝の日課を済ませて立ち上がると足許にイツコが擦り寄ってきた。やって来たときにはまだまだ溌剌としたお嬢さんだったイツコも、今やすっかりおばあさんといった風情だ。朝夕の食事時

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わたしのお父さん

 わたしのお父さんは、とてもやさしいです。わたしは今まで、お父さんに怒られた記憶がありません。
 お父さんについて作文を書く宿題が出たので、どうしてお父さんは、わたしを怒らないのか、お父さんに聞いてみました。お父さんは笑いながら言いました。
「おまえは、お父さんが怒らなければならないような、大変なことはしないからね。」
 でも、お母さんは毎日わたしを怒ります。お部屋が片付いていない、とか、宿題をほ

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