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\安全認証マークがあるから安心とは言えない?/【ゲストコラム】自転車用ヘルメット緊急事態宣言!? (その2)

オートバイ用/自転車用ヘルメットのメーカーとして、いまKabutoが応援している「人」を通じて各シーンをより深く知っていただくべく、ご本人レポートやコラムなどを掲載しています。
今回、自転車ジャーナリストの浅野真則さん執筆の第2弾。自転車用ヘルメットを取り巻く危惧すべき現状をレポートし、安心・安全なヘルメットの選び方について解説していただきます。


こんにちは。自転車ジャーナリストの浅野真則です。自転車専門誌やWEBなどを通じ、自転車の魅力を伝えることをライフワークにしています。
前回、自転車用ヘルメットとして市販されている製品の中には自転車用ヘルメットとしての安全基準を満たしていない自転車用「風」のヘルメットがある―と警鐘を鳴らしました。(リンクは最下段に)今回はヘルメットの安全基準とは何か?について、オージーケーカブトさんにもヒアリングを行いまして、さらに深掘りしていきたいと思います。


🪖一口に「ヘルメット」と言ってもいろいろある

ヘルメットとは頭部の安全を守るための安全装備で、日本語では安全帽と言います。

さまざまな用途のものがあり、自転車に乗るときのための自転車用、オートバイに乗るときのオートバイ用のほか、カヌー用、スキー用、スカイスポーツ用などがあります。工事現場や工場などで使われる作業用のヘルメットもあります。実は、一口にヘルメットと言ってもさまざまなものがあるのです。

これらは頭部の安全を守るための安全装備である点は共通していますが、用途が違えば求められる安全性能も異なります。もちろん安全性認証のためのテストで求められる基準も異なるのです。

安全認証のひとつCEマークでは、用途別にいくつかの基準が設けられています。その一部を紹介すると、次のようなものがあります。

  • CE EN966 スカイスポーツ

  • CE EN1077 スキー

  • CE EN1078 自転車

  • CE EN1385 カヌー

  • CE EN387/50365 電気工用(耐感電)

  • CE EN812 バンプキャップ(農業食品等軽作業用)

CEマークの安全認証をクリアしたヘルメットは、いずれもCEマークが貼られており、ぱっと見ただけでは何用のヘルメットかは分かりません。そこで大事になってくるのが「EN1078」という認証の種類です。

余談ですが、自転車用ヘルメットとは異なる安全装備として、カスクや衝撃吸収帽があります。いずれも衝撃吸収材が使われていて頭部を保護しますが、自転車用ヘルメットほどの衝撃吸収性や安全性は期待できません。

⛑用途が違えば求められる安全基準も違う

たとえば製品安全協会の資料によると、安全性の認証試験では、いろいろな条件を設定してさまざまなテストを行っています。自転車用では、重量などの規定を満たした落下用人頭模型にヘルメットを装着し、試験台で規定スピードで落下させて衝撃吸収性を確かめるほか、アゴヒモの引張り強度試験を行って抜け落ちや伸びがないか、またヘルメット自体が脱げ落ちないか、などのテストを行うそうです。しかもヘルメットを濡らした場合、冷やした場合、温めた場合などなどさまざまな条件下で。このように試験の内容や求められる数値が「ヘルメットの用途」によって異なる、というわけです。

自転車用ヘルメットの衝撃吸収性試験の様子(写真提供:オージーケーカブト)
ヘルメットが脱げ落ちないかの試験や、あごひもの強度試験など各種試験を行います(写真提供:オージーケーカブト)

例えば、前出のCEマークの認証試験では、カヌー用ヘルメットは衝撃吸収落下テストの要求数値が他のヘルメットに比べて低く設定されています。また、カヌー用とスキー用のヘルメットでは、転倒時に岩などの角に頭をぶつけた時を想定するようなくさび形の台に落とす衝撃吸収落下テストが行われません。また工事用では、耐貫通性試験などが行われます。

つまり、同じCEマークが付いていたとしても、自転車用の安全基準をクリアしていないヘルメットでは、自転車乗車時の事故で十分に頭を守れない可能性があるのです。

そのようなヘルメットは、いろんな発売元が扱っていて、通販や店頭で普通に販売されているので、注意が必要です。

またさらに困ったことに最近は「CE EN1078」という認証シールを貼っていながら、衝撃を吸収する発泡ライナーが入っておらず、明らかに自転車用ヘルメットの安全試験に通らないであろうものも存在しているのです。

自転車用ヘルメットは、発泡ライナーがつぶれることで衝撃を吸収する

🪖いろいろな安全性認証マーク

安全性の認証についても、さまざまな団体が行っています。ここでは日本国内で流通しているヘルメットに付いている主なマークを紹介します。

・SG

一般財団法人製品安全協会が定める安全認証マーク。「Safety Goods」の頭文字をとったもの。自転車用ヘルメットだけでなく、さまざまな用途の安全基準があります。ヘルメットでは、通学用や子ども向けのヘルメットなどに多く採用されており、自転車用ヘルメットとしての安全基準を満たす場合は「自転車用ヘルメット」の表示が製品にあります。(ただしソフトシェルタイプに表示義務がないため、ヘルメット表面に表示がない製品もあります)

SGマーク

・JCF公認/推奨

日本自転車競技連盟が定める安全性認証マーク。日本国内で流通する多くのスポーツバイク向けのヘルメットに採用されています。JCF公認とJCF推奨の違いは、主に使用できるレースやイベントに制約があるかどうかの違いで、シールの色もJCF公認が白、JCF推奨は緑になっています。多くの自転車レースではJCF公認マークの付いたヘルメットを使うことが求められます。JCF推奨モデルはレースでは使えないこともありますが、安全基準は同等です。

JCF公認マーク/JCF推奨マーク

・CE

製品をEU加盟国で販売する際に必要な安全基準条件を満たしていることを示す安全性認証マーク。自転車用ヘルメットだけでなく、さまざまな用途のヘルメットの認証があります。自転車用ヘルメットとしての安全認証ナンバーは「EN1078」です。

CEマーク

・CPSC

アメリカ合衆国消費者製品安全委員会が定める安全基準。アメリカ国内及び世界で流通しているヘルメットの中で標準的な安全規格のひとつ。自転車用ヘルメットだけでなく、さまざまな用途のヘルメットの安全規格があります。

このほかにもドイツのGS、アメリカのSNELL(スネル)ほか、BSI、CENなどの安全規格があります。


🚴自転車用の安全基準を満たしているヘルメットを選ぼう

自転車に乗る際は、自転車用ヘルメットとしての安全基準をクリアしている製品を使うことが重要です。

先ほどさまざまな安全基準を紹介した中で、JCFは自転車用ヘルメット専門の認証ですが、それ以外の認証マークは自転車以外の用途のヘルメットもあります。したがって、購入時に自転車用ヘルメットの基準を満たしているのかを確認する必要があります。

例えば先に紹介したCEマークの場合は、自転車用ヘルメットとしての安全認証は「EN1078」です。ヘルメット購入時には、製品の仕様書などを見て自転車用ヘルメットの安全認証マークかどうかを確認しましょう。

通販だけでなく、一般のお店でも自転車用ヘルメットとして自転車用「風」のヘルメットが販売されている現状では、ユーザーであるわれわれが正しい知識を身につけ、自転車用ヘルメットを選ぶのが最善の方法なのです。

(執筆:浅野真則)

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