池袋にあらばフォーベトへ行け
帰省のさなか、東武東上線が止まってしまった。わがふるさと埼玉の坂戸へ帰るには、東武東上線に乗るしかないのに。池袋で足止めを食ってしまった。かつて大学生の4年間通った池袋で、夕食どきにぽっかりと空いた時間。
……ならば、わたしは、思い出の味、フォーベトのフォーを食べたい!!!
わたしはある時までベトナムのフォーってやつはあまりおいしくない食べ物だと思っていた。某美術館の地下のレストランで食べたそこそこお高いフォーがぜんぜんおいしくなかったのだ。それきり、フォーと出会っても、あっ大丈夫です、という感じでスルーし続けてきた。
しかし、大学内のバイト先で先輩に「今日の昼はフォーを食いに行くぞ」と言われた。「わたしフォーってそんな興味ないんですけど……」と答えると「お前、それはフォーベトのフォーを食べてから言え。うまいフォーはうまいぞ」と一喝された。美術館のフォーがおいしくなかったことも訴えたが「美術館のメシは往々にしてまずい」と偏見まみれの返しをされた。
しぶしぶフォーを食べに、ひとけのない怪しげな雑居ビルへとぼとぼついて行き、4階でエレベーターを降りるとここはアジアの雑踏か?!というくらい賑わっている。店内は明るくてベトナム人と思われる店員さんがにこやかに迎えてくれた。
そしてここフォーベトで出会ったフォーのおいしかったこと!期待値が低かったのもあり、それはもう衝撃的においしかった。これか本場の味か!という食欲を誘う複雑な香辛料の香り、スープはばっちり味で物足りなさがない(おいしくないフォーはなんか味が薄い)。うまい。つるんとしたフォー麺はするする食べれてしまう。付け合わせのレモンを搾るとまたさわやかで箸は止まらぬ。これがうまいフォーか!
そう、ある時までフォーはおいしくないと思っていたと言ったが、ある時とはまさしく、フォーベトのフォーを食べた時だ。
そして10年の時を経て、今わたしは池袋で時間が空き、フォーベトへ向かっている。
久しぶりに来たフォーベトはやっぱり異国のように賑やかな店内だった。大学生の時はいつもランチでお世話になっていたので、夜に来たのははじめてだ。夜もまたお客さんでいっぱいで、やっと空いていた一席に滑り込めたという感じ。老舗と言っていいのだろうか、一体いつからやってるのかはわからないが、店内は年季が入った感じはする。大学生の時と変わったのはタブレット端末から注文するようになったこと。フォーは味を選んだりパクチー抜いたりオプションが色々あって、日本語が堪能ではない店員さんもいらっしゃるなかでタブレット注文は助かる。牛肉のフォーを頼む。
しばらく待つと運ばれてきた、そう!このフォー!黄金色のスープ!スライスされた生玉ねぎがたっぷりのったフォー!うれしい!ひさしぶりだね!フォーベトのフォー!
写真のシズル感については何も言わないでほしい。こっちは真剣なのだ。一刻も早くフォーを食べたいのだから秒速で写真を撮ってスマホをしまい、いただきますをする。
変わらずにおいしい!大学生の時にわたしにフォーベトを教えてくれた先輩に感謝する。そしてベトナムの人ありがと〜!おいしいフォーを作ってくれて!というか日本の、ここ西池袋にお店を作ってくれてありがとうフォーベト!人身事故で止まった電車というネガティブマインドからここまでわたしをハッピーにしてくれる味がここにはある!
…
ごちそうさまでした。またいつかくるね、フォーベトのフォー。
この記事を読んでくださった方はいつかこの記事を思い出して、池袋にあらばフォーベトへ行ってください。
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