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赤いカディスの星


#読書感想文

今日の1冊!

社会人なりたての頃に読んだ。僕が読んだ直木賞受賞作の中では1番の作品である。

スペイン内戦を題材にした小説だ。

スペイン内戦はあまり日本人には馴染みがない!気がするが、なぜかスペイン内戦を題材にする人が多い気がする。

ヘミングウェイ好きの国民性があるのか、物語として魅力的なのか?昨年の日経新聞の連載もスペイン内戦だった。

戦争を題材にした映画、小説は数多くあるがスペイン内戦とアイルランド紛争を題材にした小説は外れがなく名作が多いと思う。

他の戦争が題材でも名作はもちろんあるが、なんか妙にヒロイズム・ナショナリズム、または自虐的だったり、なにか歴史に色をつけることを目的に書かれている気がして、登場人物に入っていけないことが多い気がする。

しかしスペイン・アイルランド両内線を題材にすると、例えありきたりな設定で、実際はありえなさそうな「美貌の女性テロリスト」が出てこようが、「天下無敵なヒーロー」が出てこようが、戦争の悲惨さ、その戦いに身を投じざるをえなかった人の悲しさ、歴史という大きな波に揉まれて争うことをとめられない人々の葛藤が必ず描かれている。

そしてこの小説は、日本のスペイン内戦作家の第一人者だと思う逢坂剛の代表作である。

日本人の家族の数奇運命とスペイン内戦を上手く組み合わせた奇跡的な名作である。

話のハイライトは結局シンプルに「母の息子を想う強い気持ち」になると思うが、最後の最後に泣かされてしまう。良い小説は、それを読み終わった場所まで覚えているものだ。このラストは、今は潰れてしまった渋谷の喫茶店で読み泣いた。

この小説を読んで、マドリッドとバスクの混合チームであるサッカーのスペイン代表がなかなか勝てない理由、また日本では信じられない現象だが、代表よりクラブの方が人気ある理由がよくわかった。こんな歴史を乗り越えて、この小説を読んだ数年後には欧州選手権で優勝したのだが、なんか親近感を持ち本当に嬉しかった。

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