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Facebook Fantasy Gamesなどの未来予測市場とハイブリッドスマートコントラクト

Facebookが、スポーツやテレビ番組など未来に何が起こるかをユーザーが推測できるファンタジースポーツライクな、「予想ゲーム」を発表しました。Facebook Fantasy Gamesと呼ばれるこのゲームは、直近では、米国とカナダでスタートしたことがニュースで報じられています。まだ日本では利用できませんが、Pick&Play Sportsというスポーツ予測ゲームを通じて、明日のサッカーの試合で、どちらが勝つか?というようなテーマについて、友達同士で予想をし合うというような使い方ができるようです。将来的には、スポーツだけではなく、CBSのSurvivorやABCのThe Bacheloretteなどのテレビ番組なども予想の対象になるとのことで、どのような使い方ができるのか非常に楽しみでもあります。

Augurや4CASTを始めとした未来予測の歴史


さて、このFacebookの新しいサービス自体は、ブロックチェーンのサービスではありませんが、このような未来予想のサービスは、ブロックチェーンの世界では、"分散型の未来予測サービス"として、非常に活発に議論がされてきたテーマでもあります。古くは2014年に設立されたForecast FoundationのAugurなど未来予想サービスを提供しています。Augurは基盤としてブロックチェーンのテクノロジーを用いており、予測したコンテンツについては後で、改ざんができないという点や、自動で報酬が計測され分配されるようなスマートコントラクトを活かしているなど非常にユニークで注目を集めました。ほかにも、Gnosisや日本で人気のLINEも、2018年に4CASTという分散型未来予測サービスを発表しています。


未来予測市場はギャンブル、デリバティブのような保険、金融商品といった様々な利用用途として捉えること可能で様々な分野の実証実験という位置付けのものがたくさん存在していました。

現実世界のデータと連携に必要なハイブリッド・スマートコントラクト

未来予測市場を始め、ブロックチェーンと現実世界を連動させるようなアイデアは、現実世界であるオフチェーンと、コントラクトが管理しているオンチェーンの世界の接続にハードルがあるケースが多いと思います。例えば天候デリバティブなどの事例では、天候情報を正確に把握できていなければ、そのあとの払い戻し自体の処理を正確に行うことはできません。スマートコントラクトはコードで書かれた自己施行型の契約で、お金の送受信や簡単な計算には長けている一方で、チェーン外のデータにアクセスすることや、乱数などを含む複雑な計算処理、外部のデータとの紐付けを行うことは難しいという現状があります。しかし、ブロックチェーンにオラクルネットワーク(Oracle networks)を導入することで、スマートコントラクトに検証可能なランダム性、オフチェーンデータ、追加の計算資源を提供することができるようになります。このようにオラクルネットワークを利用したスマートコントラクトをハイブリッド・スマートコントラクトと呼びます。

ChainlinkやBandProtocolなどの分散型オラクルネットワーク

分散型オラクルを成立するために、世の中に様々な、ネットワークサービスがあります。例えば、チェーンリンクはイーサリアムベースのプロトコルを用いて、分散型オラクルネットワークを使用してデータとスマートコントラクトをブリッジします。また、Band Protocolは、Cosmosブロックチェーン上で実行されるオラクルネットワークで、分散型ファイナンスなどでの利用用途などを目的として提供されており、これらも同様に実際のデータとコントラクトのブリッジに用いられます。ブロックチェーンオラクルは、オラクル自体が危険にさらされた場合、それに依存するスマートコントラクトも危険にさらされる可能性があるため、いかに外部のAPIやセンサーのデータを安全にチェーンに載せるのかというのは非常に重要な観点です。既に下記のようにデータを提供する事例が登場しています。

TheRundown — スポーツ業界へのリアルタイムのオッズ、スコア、統計
SportsMonks — サッカー、F1レース、クリケットのオッズ、統計、試合結果
SportsDataIO — いくつかのスポーツリーグのゲームスコア、プレーヤー統計、ゲーム前の先物、雑学クイズ

SportsMonksなどはサッカーやF1レース、クリケットのオッズや統計、試合結果などを提供するAPIを提供していますが、Chainlinkを介することでコントラクトから直接スポーツのデータを参照することが可能になります。


これまで記載したのは、プロリーグのstatsを生かす仕組みの話題でしたが、スマホのカメラなどを通して、個人のスポーツの技能を吸い上げ、それらを通じて、離れたところにいる人とバトルを行うといった、非常に面白い試みもあります。DotMoovsでは、仮想世界に国際的なスポーツ競争をもたらすために機能する革新的な競争環境プラットフォームと言われており、リフティングなどの回数などをAIの判定機能などを用いて吸い上げて、他者とのバトルを行います。スポーツの得意な人が、報酬を得られるような新たな試みと言えます。


UMAなどのOptimistic Oracle(楽観的Oracle)の事例

データの正確な検証には非常に多くのコストがかかりますが、これらのコストに対して、Optimistic Oracle(楽観的なオラクル)というアプローチによって解決しているプロダクトもあります。それがUMAというサービスです。

全てのデータは、正確であることを前提に設計されており、第三者がこの内容について、意義を申し立てた場合にのみ、プロセスに従い、UMAのデータ検証メカニズム(DVM)に紛争をエスカレーションし、48時間以内に紛争を解決するとされています。報酬とペナルティはどちらも金銭的なもので、利用者側は、一定の担保となるお金を預けることが前提に設計されているようです。UMAによると、1年間に受け取った正当な紛争は5件未満であり、このような楽観的なオラクルによって、コストの大幅な削減に成功した事例もあります。

Conclusion

今回は、ブロックチェーンの中と外の世界を繋ぐテクノロジーについて考えました。先にご紹介したUMAは、ユーザーがイーロンマスクが設立した宇宙輸送サービス会社であるスペースXの打ち上げ失敗に対する保険を購入できるようにしていることでも非常に注目が集まっています。宇宙に送り込む予定の、ペイロード(積載物)はそれ単体で非常に高額です。そのため、ペイロード(積載物)の所有者は、打ち上げが失敗するリスクをヘッジするための保険でもあり、または、宇宙の熱狂的な愛好家はその成功に対してベットすることで、自らの夢や好奇心をお金に変えるようなギャンブルとしても楽しむことが可能になります。

我々の周りの未来に起こりうる出来事は、良いことも悪いことも、本当に様々なことが起きます。明日の世界が、今日よりもほんの少しでも良い世界になっているようにと祈りながらも、自分が良い日には、世界の誰かに分かち合い、万が一、悪い日には、世界の誰かから、喜びを分け合ってもらえるようなソリューションこそが、未来予測市場の真意なのかもしれません。



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