地上4,000m、きみの姿はないけれど。
「グランドキャニオンで、スカイダイビングをしたい」
地理の授業で見たその雄大な大地に、心を奪われた。
「行こう」目を輝かせてきみは言った。
20歳になって、きみは突然姿を消した。
受け入れられず心はおいてけぼり。
けれど、あの大地で飛ばなきゃいけない、
そんな気がした。
21歳の誕生日を目前に、
わたしはラスベガス郊外の地上4,000mにいる。
空気は冷たく、山脈と大地が延々とつづく。
荘厳さに湧き上がる自然への畏怖。
次の瞬間、
時速200kmのスピードで重力に身をまかせていた。
きみの姿はない。
けれど、きみとの約束がわたしをこの旅へといざなった。
きみの姿はない。
けれど、目下にひろがる到景をわたしは忘れない。
きみの姿はない。
けれど、きみは今もこの先も、わたしの中で生きつづける。
空の中、きみとわたしと大地がつながる。
すべてはつながっている。
旅が、きみが、それを教えてくれたんだ。
身体弱ヨワ系のみなさんの、お力になれますように。