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代理店TVメディア担当は東日本大震災のおかげで使命をみつけました

Twitter を立ち上げタイムラインにて「そうだ、今日は」と思い出す。

#東日本大震災から8年

当事僕は銀座の広告代理店にてテレビCMのバイイング、セールスをしていた。
8年前の3/11は金曜日。曜日も絶対に忘れない。なぜなら金曜日に放送する某アニメが放送中止、CMも全て放送せず、緊急地震速報の特別番組に切り替わる。テレビ局からの連絡を、エレベーターが止まっていたので階段で駆け上がり、各スポンサー担当の営業担当に伝えに走り回ったのが、強く記憶されているからだ。

それから数日はリアルタイムに各テレビ局から更新される「通常のテレビ番組の編成なのか、緊急地震特番なのか」「テレビ局としてCMは流すのか、流さないのか」を広告代理店社内でテレビ担当→スポンサー担当営業に。
「CM流す場合、各スポンサーは通常CMを流すのか、AC(当事のポポポポーン。)を流すのか」を各スポンサー担当→テレビ担当に。
というやりとりを1日中続ける日々が続いた。
土日も同様に出勤して対応を余儀なくされたわけだが、当然ながら出勤できる人、できない人がいた。
何台も並んだテレビで各局の番組をモニターしながら、電話をする人間、メールをする人間がやっと他愛もない冗談話を挟むようになったのはいつからだったろうか。
今思うとふざけグセのある、場合によっては不謹慎な発言もしかねなかったあの先輩、あの同僚もあのときだけは自分の不安やモヤモヤがどこから来るものなのかはっきりせずにいるような、独特の緊張感を抱えて仕事していた気がする。
とある偉い方のご出身が東北で、ご家族と連絡がまだつかない、という話が聞こえてきた。
声に出さずに「え?!」という表情をした僕に上司は眉間にシワを寄せて噛みしめるように頷くことで対処した。

僕はこの数日で広告業界とマスメディア業界の限界、歯がゆさを痛感することになる。

先述の通り、当時の業界関係者の選択肢は
「CM流すか、AC流すか」
しかない。
各スポンサーに対しても、自社のみで判断しろ、は酷すぎる。当然ながら他社はどうなんだ、という確認依頼が社内外飛び交い、意思決定が遅れる会社も多かった。
早く判断しないとCMの差し替えが間に合わない。本当は返事をつつきたくて仕方がない担当者もこのときばかりはイライラをこらえてるようだった。電話越しの声はそう聞こえた。

通常のCMを流すと「こんなときに自社宣伝するとは不謹慎」。
同時に当事の記憶としてこびりつく「ポポポーンが耳から離れない。トラウマになる。怖い。」

ポポポーンは本来、たまにいろんな事情で放送されるくらいの頻度を想定し、かつテレビをみている人に安心感、ほっこりする反応を期待して作られたことが想像できる作品だった。僕はそう思っている。
が、いわゆる当時の「フリークエンシー」ではもはや安心どころではなく、むしろ「もう勘弁してくれ」といったニュアンスのツイートが数多くみられた。ちなみに当時の広告業界、とくにテレビ業界でTwitterでエゴサするなんてことを認知している人は少なかった。そんな声があることも知らない人の方が多かった。
奇しくもTwitterの存在や価値を国内に知らしめるきっかけとなったこの震災当時においていわゆる業界内ではTwitterの利用率は一般ユーザー以上に低かったというのが皮肉である。


ザーッと朝書いてしまおうと思ったが次から次へと記憶が戻ってくるので、続きは今夜書く。

↓↓↓

そして続き。


なにが歯がゆかったか。

繰り返しになるが広告主、メディア、そして視聴者を繋ぐ「HUB」という存在あることをアイデンティティに広告代理店マンとして働いていた当時の僕からすると、こんな事態において広告主に決断を迫る選択肢が
CM or AC 
であることが悔しくて悲しかった。
さらにはACのクリエイティブのストックが十分にないために本来視聴者にポジティブに受け止めてもらうべきものすら不快に感じさせてしまう、そんな事態を避けられないこと。ポポポーン、みなさん覚えてますか?

苦情殺到のAC--同じCMを大量に放映せざるを得ない理由

さらには(これは当時の僕がいう話ではないことを承知で)、
こんな事態だからこそ、被災地や関係者、もっというと国民全員を励ますことができるような応援CMの一つでもすぐに製作して放送することはできないのか、とすら考えた。
しかし製作予算やスケジュール、そしてテレビ局への納品スケジュールを考えたらそんなことは現実的ではない、とすぐに自分の中の別の脳みそが考えを制してくる。そんな自分が歯がゆかった。

正直、この時にはっきりと
「この仕事ってなんなんだろう」
「自分てなんなんだろう」
と考えたことを覚えている。



実は一方で。
この時の経験が、僕がその後転職するTwitter Japanでのもっとも記憶に残る、自慢の仕事に繋がるのである。

*ここから先は、有料にします。「ランチでは話せないかな。夜1、2杯のお酒と少しのツマミで少しだけ会話に火がついたとき、「実はさ・・」という感じでようやく話せる、ちょっとした僕の武勇伝だから。」
だからこの値段にしました。

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