冬に待つ
氷嵐たる顔で君は弾く語り継ぐべき君の楽譜を
君はプリズムに人は死ぬという雪原だとおもう孤独の祈り
間違えて線路に出てしまったらそのまま真っ直ぐ雪の日々へと
鶺鴒は軽やかに踏む晩冬に僕の叶わず割れる薄氷
結晶を手渡すような接吻を白樺の幹へ捧げましょう
白樺に縋るなら女がではなくあの子が欲しいと言わなくちゃ
ひとり立つ、氷雨に打たれるようにおのずと俯く、大切なんだ
白き空気に視線が向く自らの輪郭を確かめる儀式
白の古書雪道に投げ捨てて白いものはみな白に還れよ
指先から闇に溶けていくことを白い闇のなかずっと待つ
いてもいなくても同じだろうといなくなってから雪兎が言う
全ての季節を冬にして無色無臭にすべての生物眠る
どうしても冬に留まれないままに血が出ることを恨めしくいる
雪は音を全て吸い込み寡黙に積もるだから春は騒がしい
春は花 萌木は皮膚を抉じ開けて命の臭い身体を犯す
白の森連れ出してくれと言ったのに春は来るよう時すでに春
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