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⑤STPの理解:商品企画のための「売れる商品コンセプトの作り方」

皆さん、こんにちは。このシリーズでは、商品企画初心者に向けて「売れる商品コンセプトの作り方」を説明していこうと思います。

僕は、2005年から、食品メーカーの商品開発部門やマーケティング部門で数多くの商品企画に携わってきました。また、マーケターとして多くのメンバーの育成に取り組んできました。その経験から感じたことは、新商品企画は事業の根幹を支える仕事であるにもかかわらず、多くの場合、メンバー個人の発想とスキルに依存しているということです。

経験上、商品企画のスキルUPには時間がかかります。このシリーズでは、僕が社内セミナーでメンバーに伝えている理論と考え方をできるだけシンプルにまとめてみます。商品企画初心者や、メンバーを育成されている上司の方々に、少しでも参考になれば幸いです。よろしくお願いします。

STPはマーケティングの心臓

こちらは、前回お話したマーケティングの思考プロセスです。

①環境分析 業界や市場構造の理解、競合分析、自社分析
②戦略立案 目的、ターゲット、戦い方の決定
③戦術策定 マーケティングミックス(4P)策定、実行と検証

この3つは、車の運転で言う「認知・判断・操作」と考えると分かりやすいんじゃないかと思いますが、ここで車の挙動を決める最も重要なの要素が、真ん中の「判断」です。マーケティングにおいても、その成否を握っているのは、どう戦うか、という戦略立案のプロセスです。STPとは戦略を表すフレームワークのことです。STPが決まると、商品が売れる理由が見えてきます。つまり、どんな商品を作れば売れるのかが分かります。あとは、戦術策定プロセスで、そういう商品コンセプトを完成させればいいんです。

STPのステップ

STPとは、Segmentation、Targeting、Positioning のことです。

:Segmentation 顧客をニーズの違いでいくつかの集団に分けること
:Targeting その中から、同質のニーズを持つ集団に的を絞ること
:Positioning 競合商品とは差別化されたポジショニングを作ること

セグメンテーションのコツ

セグメンテーションは、顧客をいくつかの集団に分けることですが、コツは属性ではなくニーズでくくるということです。ターゲットとは「~したい、〇〇」とニーズと属性の組み合わせ記述するのがルールです。ですから、セグメンテーションも、同じニーズをもつ集団を1つのグループとして考えるようにしてください。ニーズが同じなら、属性がバラバラだとしても問題はありません。たいていの場合は、ニーズでくくると属性も近くなります。

ターゲティングのコツ

次に、セグメントされた同じニーズをもつ集団の中から、ターゲットとする顧客集団を決めることをターゲティングと言います。ターゲティングのコツは、自社商品を魅力的だと思ってくれそうな集団を選ぶことです。言い換えれば、自社商品のベネフィットが刺さりそうな集団です。ここを間違えると、商品は売れません。

ポジショニングのコツ

上で選んだターゲット集団にとって、自社商品と競合商品がどのような関係性にあるのか、2つの軸で表すのがポジショニングです。ポジショニングのコツは、軸を「~できる」というベネフィットで書くことです。スペックや仕様、機能のような商品特徴を軸にしてはいけません。商品特徴を軸にしたい場合は、その商品特徴がターゲット集団にとってどう良いのかを考え、「~できる」とターゲット集団から見たベネフィットに変換します。

そのうえで、競合商品と明確に差別化されたポジショニングになるよう、「~できる」というベネフィットの軸を検討します。

STP検討

左のポジショニングはうまく差別化できていませんね。軸を変更することで、右のような競合と差別化されたポジショニングを目指します。軸は「~できる」というベネフィットですから、競合には無いベネフィットを持った商品になりました。これが、選ばれる理由になります。

STPはターゲットの頭の中にある

ポジショニングの軸である「~できる」というベネフィットは、ターゲットに依存します。つまり、ターゲットが変われば、ベネフィットも変わります。つまり、STPのポジショニングはターゲットの頭の中に構築するイメージのことなんです。軸は、ターゲットにとってのベネフィットであることを忘れないようにしてください。

STPは何度もやり直すもの

このような流れで、ターゲット集団を設定し、彼らにとって魅力的なポジショニングを作ることができれば良いのですが、実際にはなかなか難しいものです。ベネフィットの軸を変えても、うまく競合商品と差別化できないときは、ターゲティングをやり直しましょう。ターゲット集団が変われば、求めるベネフィットも変わります。そこで、もう一度、差別化されたポジショニングが作れるかを検討します。ターゲット集団を変更してもうまくいかない場合は、さらにセグメンテーションに戻り、ニーズのくくり方を変更してみます。このように、最終的に差別化されたポジショニングが作れるまで、何度もやり直し、STPを検討していきます。

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商品マッピングと混同しない

市場にある商品を、スペックや商品特徴、価格などで分類したものを商品マッピングと呼びます。これは、市場にどのような商品があるのかを一目でわかるように分類したもので、新しい商品スペックを考えたり、商談で競争環境を説明するのに有効です。ただ、この商品マッピングとSTPのポジショニングは別物ですので混同しないよう気を付けてください。マッピングの軸は何でもありですが、STPの軸はベネフィットです。

商品マッピングは客観的な商品分類、STPのポジショニングはターゲット目線でのベネフィットの差別化を表したものです。

まとめ

マーケティングの心臓であり、戦い方を決めるSTP。これを作れるかどうかがマーケターの実力と言っても過言ではありません。STPを見れば、売れるベネフィットがわかります。そのベネフィットを実現できるような商品コンセプトを作り上げていきましょう。

図解STP

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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