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⑦商品コンセプトの理解:商品企画のための「売れる商品コンセプトの作り方」

皆さん、こんにちは。このシリーズでは、商品企画初心者に向けて「売れる商品コンセプトの作り方」を説明していこうと思います。

僕は、2005年から、食品メーカーの商品開発部門やマーケティング部門で数多くの商品企画に携わってきました。また、マーケターとして多くのメンバーの育成に取り組んできました。その経験から感じたことは、新商品企画は事業の根幹を支える仕事であるにもかかわらず、多くの場合、メンバー個人の発想とスキルに依存しているということです。

経験上、商品企画のスキルUPには時間がかかります。このシリーズでは、僕が社内セミナーでメンバーに伝えている理論と考え方をできるだけシンプルにまとめてみます。商品企画初心者や、メンバーを育成されている上司の方々に、少しでも参考になれば幸いです。よろしくお願いします。

商品が売れるということ

商品が売れるためには2つの要素が必要です。お客様は、商品そのものではなく、商品のベネフィットにお金を払います。つまり、その商品のベネフィットが魅力的かどうか、「ベネフィットの魅力」が1つめの要素です。もう1つは、他の商品では得られないベネフィットであることです。多くの商品の中から選んでもらうためには「ベネフィットの独自性」が必要になります。

商品コンセプトを考えるときには、「ベネフィットの魅力」「ベネフィットの独自性」、この2つを意識することが大切です。

ベネフィットはターゲットに依存する

ベネフィットを考えるとき、ベネフィットはターゲットに依存するということことを忘れないようにしましょう。ベネフィットとは、あくまでもターゲットが感じるものでしかありません。ある人には魅力的でも、他の人には全く魅力がないということもあります。ベネフィットはターゲットとセットで考えてください。

商品コンセプトの作り方

商品コンセプトは、この公式に当てはめて作ります。

商品コンセプト(note)

Tはターゲット、Nはニーズです。ターゲットは同じニーズをもつ集団なので「~したい〇〇」の形で書きます。「~したい」がニーズ、〇〇は属性です。

Bはベネフィットです。ターゲットのニーズ「~したい」を「~できる」の形で表したものです。

Iはアイデアで、ベネフィットを実現するための商品特徴や商品スペックのことです。このアイデアがあるから、このベネフィットを得られるというロジックが必要です。IとBは整合性があり1対1の関係になっていることが大切です。ここが、商品コンセプト作りの一番難しいところです。

NCNは新カテゴリー名です。この商品のカテゴリーが何か、この商品の何が新しいのかを表す名前をつけます。新しさは、独自性(差別化)です。このコンセプトのIやBが、他の商品と同じなら新しさはありません。他の商品と差別化されているということは、これまでになかったということなので、ターゲットはそこに新しさを感じます。NCNを作るときには、そのカテゴリーに存在する競合商品を意識して、どこが新しいのかを考えます。

商品コンセプト説明文

商品コンセプトが完成すると、1つの文章として表現できます。それが商品コンセプト説明文です。商品コンセプトの公式をこのように変換します。

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~したいはニーズ、〇〇は属性、△△はアイデア、~することができるはベネフィットです。

このように商品コンセプトを1つの文章として表すことで、意味が分かりやすいかどうか、ロジカルかどうか、具体的な商品がイメージできるかどうかをチェックします。違和感がある場合は、内容や表現を見直し、より分かりやすくブラッシュアップしてください。

何も知らない消費者が読んでも理解でき、具体的な商品をイメージできる文章を目指してください。それくらい分かりやすくしないと、商品コンセプトは伝わりません。

ニーズ発想と、プロダクト先行のコンセプト作り

メーカーの商品企画は、特定のニーズを持つターゲットを探すところからスタートする場合と、すでにある商品アイデアからスタートする場合があると思います。前者はニーズ発想の商品企画、後者はプロダクト先行の商品企画ですが、最終的に分かりやすくロジカルな商品コンセプトが完成すれば問題はありません。実際、多くの場合は、先にアイデアがあって、そのアイデアを活かすために最適なターゲットとベネフィットの組み合わせを検討して商品化するパターンだと思います。

プロダクトアウトとは何か

プロダクトアウトとは、商品のアイデアだけで、ターゲットとベネフィットを考えないままに商品化してしまうことです。たとえアイデアが差別化されていたとしても、そこにベネフィットを感じてくれるターゲットがいなければ商品は売れません。たまたま売れることもあるかもしれませんが、メーカーとして想定できていない売上は博打やくじ引きと同じで、運を天に任せているだけです。

プロダクトアウトにならないためには、その商品が「誰に」「どう良いのか」を考え、しっかりターゲットとベネフィットを決めてから発売しましょう。もし、ターゲットとベネフィットが見つからない場合は、発売してはいけません。売れる商品を作るということは、売れない商品は作らないということです。

売れる商品コンセプトを作るための3つのコツ

最後に、売れるコンセプト作りのコツを3つ、お伝えしたいと思います。

1.商品コンセプトのゴール

商品コンセプトは、T、I、NCN、Bの組み合わせですが、分かりやすく、ロジカルで、具体的でなくてはいけません。最終的に、商品コンセプト説明文を読めば、何も知らない人でも、どんな商品なのかを具体的にイメージできるレベルがゴールです。

2.アイデアとベネフィットの関係性を整える

商品コンセプトを作るうえで、アイデアとベネフィットの関係性が最も重要なポイントです。「△△というアイデアだから~できる」というロジックが正しいかどうか、アイデアとベネフィットの大きさが妥当かどうか、アイデアとベネフィットが1対1(必要十分)の関係になっているかをチェックします。分かりやすく、ロジカルで、具体的な関係性になるよう整えます。

3.時間をかける

商品コンセプトを作る作業はそれほど難しくありません。でも、実際に作るのは難しいです。ターゲット、ベネフィット、アイデアの組み合わせは何パターンもあり、正解はありません。何がベストなのか分からないと思います。とにかく時間をかけて、いろいろなパターンや表現を組み合わせてブラッシュアップすることが必要です。

短い時間で、分かりやすい商品コンセプトが作れるようになるには、経験が必要です。これは実際に作ってみないと身に付きません。ゴールを目指し、失敗を恐れず何度もチャレンジしてほしいと思います。

まとめ

「売れる商品コンセプトの作り方」いかがでしたでしょうか。この内容は、僕が実際に初心者のメンバーに教えているものです。BtoCの消費財をイメージした説明になっていますが、マーケティング理論、商品コンセプト理論の理解に役立つ内容になっているかと思います。マーケティングは自分でアウトプットすることでしか身に付きません。量をこなすことで、質が高まってきます。そのガイドとして、このシリーズがお役に立てば嬉しいです。

図解商品コンセプト

売れる商品コンセプトを作り、お客様に喜んでもらい、会社の業績に貢献し、市場を成長させ、マーケターとして自己実現を達成する。メーカーが元気になり、世の中に良い商品が溢れることを夢みています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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