ぶらり旅に同行させてもらった。(4)
西武秩父駅へ戻ったときには、すっかり夕暮れになっていた。
ここからさらに数時間かけて、我々はそれぞれの帰路につく。
西武線、こんなに端から端まで乗ったのは初めてだ。
というか、そもそも自分の人生で路線まるまる1本乗るなんて思ってもいなかった。
山手線だって、ぐるっと一周乗りきったことはまだない。
しかも今朝、家を出たときには、まさかこんなに電車やバスに乗る一日になるなんて、夢にも思っていなかった。
行先のわからない旅って、楽しいなあ。
こんなに楽しい一日になるなんて思わなかった。
誘ってくれてありがとう。
計画性のある旅もいいけど、おおざっぱな旅もまたよろし。
のんびりとドタバタがいつ起こるかわからない。
まるで人生そのものだ。
でもその人生、腹が減っては戦は出来ぬ。
ということで、戻った西武秩父駅で夕飯を食べて帰ることになった。
なんだかんだ、ここまでわらじカツとかき氷しか食べてない。
あとはひたすら歩いて歩いて、走っている。お腹はいい感じにぺこぺこだ。
そんな我らの最後のご飯はコチラ。
料理の名前は忘れてしまった。
確か夏限定メニューで、夏らしく辛さを出した味噌ダレつけ麺ーーとかなんとか。
焼肉や豚丼もいいなあと思ったが、時間かかりそうというのと、豚丼といえば帯広じゃろ?という私の北海道人的プライド主張によって、友人もこれにした。
まあ、辛い、と書いてあったって、どうせ観光客向けの辛さだろ〜?? と笑いながら注文し、一口食べて。
無事死亡。
ボアアァァァーーーーーーーーーー!!!!!
口がなんか変だよ、お母さん!
僕、涙が出てきたよ、お父さん!
痛いよ、熱いよ、助けて、おばあちゃん!
キャベツとメンマがオアシスだよ、おじいちゃん!
駅構内のフード―コートを甘く見ていた。
辛さ大好き芸人が番組で食べてリアクション楽しむレベルの辛さ。
普段なら激辛好きの友人が咳込むあかんやつ。
水を飲んだらもっとつらくなるってわかっていても、
飲まないと涙がでちゃう、おとこのこだもん、
みたいな変なナレーションが脳内で流れ始める。
痛い。熱い。たちけて。
顔をあげた先では友人が般若みたいに顔をゆがめ、むせながら食べていて、
わ” か” る” !!!!!!
と、同じ顔をして食べていたと思う。
味玉がべらぼうに美味しかったです。
ありがとう、玉子。君は口腔内のヒーローだ。
最後の最後まで何が起こるかわからない旅の終焉。
そして、そんな本日の旅の最中、ちょいちょい友人が立ちどまっては風景を振り返り、
「こういうの、思い出になるね」
となんてことないように呟いていた。
それは観光名所という特別感のある景色や見栄えの良い風景ではなく、山道を歩いていてふと立ち止まった景色だったり、電車に乗り遅れそうだと言いながら走っているなんでもない時ばかりだった。
「あったよね、なんて思い出したりするなあ」
ああ、そういう風景の一部に私を置いてくれたんだなあ、としみじみ思いながら、私は「だねえ」なんて相槌を打ちつつ、そんな友人を見つめていた。
そういう一言を言葉にしてくれる友人が素敵だなとも感じながら。
なんてことない一日の、なんてことない遊びの、なんてことない瞬間は、
どれもこれも、全部二度とない一瞬一瞬だもんなあ。
朝起きてからおやすみまで、全部思い出になるんだよなあ。
そう思ったので、この旅記録!
あと友人が写真いっぱい送ってくれたのでここに残せるなと!
最後に駅舎にいっぱいいたツバメーズをどうぞ。
駅前交番のエンブレムの上にもいて、それを見た友人が、
「公権力に堂々と挑戦し、奪った力強さを感じる」
「愛らしさという自分の武器をわかってるよね」
と感心していました。
そういうつもりにしか見えなくなるからやめれ。笑