【参加型保証システム(PGS)】【埼玉県小川町】ほ場見学会&試食会
有機農業の耕地面積が19%を占める「有機の里」埼玉県小川町。有機農家さんの育てる野菜の認証(保証)をめぐる取組が試行的に始まりました!有機JASに代わるシステムとしての参加型保証システム(PGS:Participatory Guarantee Systems)です。これがどんなシステムなのか、なぜ有機JASではないのかをまとめてみました。
PGSとは何か?
IFOAM(国際有機農業運動連盟)はPGSと次のように定義しています。
PGSの特徴は下記のとおりです。
PGSと有機JASの違い
有機農産物の認証といえば一番はじめに思い浮かぶのは、有機JASではないでしょうか。現在小川町には有機農業に取り組んでいる経営体が42経営体ありますが、有機JASの認証を受けている農家さんは一つもありません。それには、区画の狭い農地で少量多品目の農業を営む小川町の農業には、手間やコストが見合わないなどの理由があります。
下記の図は、岩手県雫石町のオーガニック雫石が発行していいるPGSの冊子で紹介されている、有機JASとPGSの比較表です。
なぜ小川町でPGSなのか?
中小規模農家にとってPGSは以下の利点が考えられます。
さらに霜里農場の金子宗郎さんにも、小川町でPGSの取組を行う意義をお伺いしました。
小川町とPGS ~検討のこれまで~
有機農産物の認証をめぐる検討の議論はここ最近始まったわけではありませんが、直近の流れをまとめました。
①2022年2月 小川町有機農業フォーラム2022 ~有機農業の証明~
JAS認証機関代表、PGS研究者、有機農家にしてJAS検査員、小川町の有機農家の3名で「認証」をテーマに、小川町・有機農業の辿ってきた半世紀の道を振り返ると同時に、未来の道標を探るイベントが開催されました。
②2022年12月 雫石町視察(オーガニック雫石)
役場職員と有機農家で、日本で唯一公式認定されたPGS団体への視察を行いました。この時から、協力隊として私も参加させて頂きPGSの取組に関わり始めました。
③2023年度 PGS認証をヒントにした参加型の有機農業の証明に関する試み
参加型保証システムの軸となる「圃場見学会等を通じた継続的な相互理解と勉強の場づくり」は提携を実践したり、地産地消を大事にしている小川町の農家さんに合う「有機農業の証明」の方法であり、また継続的な交流や勉強の場を拡大し、多様化した生産グループメンバー間の意識合わせの場になる可能性があるのではないかと検討が始まりました。
ほ場見学会
参加型保証システムの要は、農家や消費者、流通、食品加工業者、行政機関など様々な立場の方が参加する「ほ場見学会」。有機栽培原則に基づくチェックシートでの確認や、試食会を通した交流を行います。
参加者
1日の行程
当日の様子を写真で振り返ります!写真は同じく地域おこし協力隊として活動中の平岩寿之さん(instagram: @whereisogawatown)です。
参加者からのコメント(抜粋)
あとがき(個人的なこと、考えていること)
令和3年に策定された「みどりの食料システム戦略」の中で、耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%、100万haに拡大する目標が掲げられました。ただ、2020年の農林水産省の調査によると、日本における有機農業の取組面積は2万5200haで、耕地面積に占める割合はなんと0.6%……かなり厳しい非現実な目標だなというのが第一印象でした。そんな中で小川町は、有機農業の取組面積が57ha、割合は19%を占めます。それは、霜里農場をはじめとする農家さん、酒蔵、豆腐屋などの先駆者のみなさまが築いてきた努力の賜物で、それ故「有機の里」と言われる今があります。当初は現在と真逆で有機農業が世間からも地域からも受け入れられず、社会運動的な性格を持っていたと話に聞いています。そんなところから始まった有機農業の取組が、国、世界的に推進されるようになった状況の中で、私は小川町の地域おこし協力隊として、町民として関わりはじめました。今までとこれからも続く歴史の中で、自分はどんな動きができるのだろう?歴史の重みと無力さ、そしてとびきりのわくわくを感じながらそんなことを考える日々です。
「様々な背景を持った人同士が集まり、自らの暮らしのことについて考え、対話する。そして自らが意思を持って選択できる喜びを享受する!」そんなことがしたいと漠然と思っていた私にとって、PGSはぴったりな取組でした。私の好きな言葉で "You are what you eat." がありますが、PGSはまさに自分をつくる食べ物とそれを取り巻く環境について、あらゆる人が当事者意識を持って考え対話し、自らが選択するための知識を得る機会をつくるもので、自分を、地域を、社会を幸せにする手段だと考えています(おおげさでしょうか^^;)。「有機農業」という言葉には必ずしもとらわれる必要はまったくないと思いますが(言葉が先行して「有機最高!」と思考が止まってしまうのは良くない)、自分はどんなものを食べたい?どんな地域にしたい?そんなことを耕作する当事者(農家)以外の人たちが考え、意見を交わせる場があることがとても大切なのではないでしょうか。協力隊として農家さんも非農家の方々にも、日常的にコミュニケーションを取る機会が多いからこそできることも多いのではと感じています。農家さんにとってのメリットとほ場見学会への準備の負担のバランス、継続的で健全な運営など、様々な課題点がありつつ、これからも長期的に関われたらいいなと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?