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楽団の新たな演奏会のパート分けは人事のそれとよく似てる

次の演奏会。新しい楽曲。
乗り番の全員が気持ちを新たに楽譜を購入したり印刷製本したり…
今度の演奏会はどうなるかなという期待と不安は毎度堪らんですね。

しかし、一番最初に演奏責任者が頭を悩ますのがパートの割り振り。
トリオやカルテットのように奏者の役割分担が基本固定でない限り、
恐らくはこの悩みからは開放されないのでしょう…

きっと中学高校の部活動(吹奏楽・管弦楽)でも、大学のバンドやオーケストラでも同じ悩みの種で溢れていることでしょう。

今回はこの楽団の演奏会におけるパート分けを音楽とキャリアの視点で私がほんと勝手に、起こり得る問題と解決策を考察してみました。
(音楽の専門的考察ではなく個人的な見解です。ご容赦願います。)

パートでメンバーの振り分けする人、振り分けされる人、双方にとって気づきや学びがあれば嬉しいです。

前提:演奏における「パート分け」とは

そもそも演奏においてパートを振り分けるとは一体何を指しているのでしょうか。

困ったときはとりあえずWikipediaも含めてネットで検索してみる。

「演奏 パート分けとは」
調べる…

求めている情報になかなかヒットしない。。。
全くこの言葉を耳にしたことがない人のために、少し枝葉の事象から見ていきます。

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概要:演奏で配付されるパート(譜)とは

皆さん!新しい楽譜ですよ!


今度の曲の1stヴァイオリンは特に難しい…
コントラバスは○楽章だと比較的云々…

新しい楽曲の練習が始まる前、楽団はこんな話題で持ち切りでしょう。
あの人はこの楽器だから簡単そうで羨ましいなーとかなんとか・・・

でも、皆さんの手元に届いたパート譜(個人に割り当てられる一楽器の楽譜)は、全体の僅か一部に過ぎないんですけど、
それら個々に配当された全ての譜面が揃って初めて楽曲になるのです。
(経験者にとっては今更…ですが、ここが今回のテーマにおいて重要です)

目的:演奏で配付される総譜・パート(譜)とは

Wikipediaからの参照が以下の内容です。

パート譜(パートふ)は、総譜から特定のパートを抜き出した楽譜のことである。

総譜(別名:full score)とは当該の楽曲で編成された全ての楽譜を一つの楽譜に収めたもので、指揮者が合奏全体を見渡したり、作曲者や編曲者が合奏用の楽譜を起こすときに用います。

以下、今度はパート譜の抜粋が続きます。

一般に総譜は演奏時に用いることが考慮されていない。オーケストラ曲の場合、2,3小節で1ページを消費してしまうことも全く珍しくなく、総譜をめくりながら演奏を継続することは困難かつ非合理なため、必要な楽譜だけを抜き出してもっぱら演奏に供することを目的にパート譜が製作される。

つまり、学校で言えば校内の委員会やその役職。
職場で言えば職種や肩書等の役職がこれにあたります。

整理:パート譜は非効率を回避する目的形式、振り分けは手段

当たり前ですが1人の人間ではできることに限りがあります。
どんなマルチタスクで複数のことをテキパキとこなせる人間でも、幾重に重なる音を一人で担い「演奏」にするには必ず無理が生じます。

理想では、全員が同時に複数の楽器で素晴らしい音色を奏でられれば良いのですが、現実そんなことは到底できません。

整理:演奏におけるパートは全体を発展させる、あくまで「分業」

これは学校でも職場でも、もとより家族でも同じことです。
目的をともにする運命共同体が、少しでも生産性や幸福感が得られるようにと工夫し追求する。そのために分業があります。

ここで冒頭で出した今回のポイントである、
個々に配当された全ての譜面が揃って初めて楽曲になる」が重要、かつ問題提起、悩みの種になってきます。

どんな問題、そこに関係者の齟齬が発生するのでしょう。
以下で列挙しています。

問題1:団員各人が全体を俯瞰した上の、パートの役割を理解できていない

・今回の曲はメロディーがかっこいいからゼッタイ1stにして!!あ、でもトップサイドは怖いから、あの席だけは勘弁してね!!
・私は練習にあまり参加できそうにないから2ndでお願いします…

実はこういった個々人の一方的な主張が指揮者を始め、演奏の取りまとめを行うパートリーダー(当該のパートの長)たちを苦しめます。
(指揮者は当然それが醍醐味・お仕事ではあると思いますが…)

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リーダーたちは企業で言うマネージャーです。
ですので、団員を取りまとめるのが「上長」の責務なのかも知れません。

しかし、学生や社会人のアマチュアの団体におけるリーダーは、
果たして企業における「上長」に当たるのでしょうか。

問題2:パートの長は単なる善意でその役目を担っている場合がある

企業にはじまり利益追求団体における上長は、より高いレベルの結果と、そのための責任を背負わされても仕方ありません。

理由はシンプル。一般のレイヤーに比較して、リーダーはそれだけ高い報酬を得ています。
そして、遂行する業務の対価としての報酬が契約として交わされ、これらを保証されているのが一般的なのだから。

どれだけ叱咤激励し、自分の所属するメンバーに恨まれ妬まれようとも、それが結果の伴うベストの選択であれば容認されてしまいがちです。
(当然、叱咤激励にもモラル・限度はあります)

しかし、仕事ではなく娯楽や趣味の一環で音楽活動に取り組んでいる場合はこの限りではありません。

パートリーダーと呼ばれる彼ら彼女らは、少し他の奏者よりも演奏技術はあるかもしれませんが、メンバーを取りまとめマネジメントをする能力はプレイヤーに求められるそれとは全く異なる能力です。

また、そのパート(部署)で責任のある立場になればなるほど、他のポジションへの配置転換希望は出しづらくなります。
(出してもチーム全体の馬力を損なうため、団員に認めてもらえません)

「リーダーはその役割をやりたくてやっている」と言われてしまったらそれまでなのですが、少なくとも金銭的報酬を得るために働くこととは異質の葛藤に苛む可能性が高いのです。

問題3:当該パートを希望する団員のWill・Can・Mustが明確に定まっていない

今回の記事で皆さん一人ひとりに最も考えていただきたいのがこの部分になります。

Will(ウィル)・Can(キャン)・Must(マスト)とはビジネスでは就職・転職活動の考え方の枠組み、フレームにあたるもの。

それぞれ抽出すると下記の通り。

Will…「実現したいと思っていること
Can…「何ができるか
Must…「何をすべきか

この3つの要素が強固に重なり合うと、自分が活動する目的や、そのために必要な目標の透明度・解像度が増していきます。

反対に、先のパート希望のように
「なんとなくかっこいいから、このパートがいいな」が行動理由であると、少しでも嫌なことが発生した場合、逃避傾向は強くなってしまう。

演奏における楽曲にも、仕事や委員会における任務にも、そこでしか身につけることのできないものがあります。それが技巧、すなわちスキルです。

加えて、繰り返しになりますが、パートはあくまでも全体の一部です。
組織は(この楽曲)全体の目的を遂行するための手段でしかありません。

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大切なのは、貴方がこの全体の中で、


○ 演奏者としてこの先「何を実現したいと思っているのか
○ ではそのために自分は「何ができるのか
○ 今この瞬間に「何をすべきか
上記にどれだけ向き合えるのか。これが最も大切な観点なのです。

解法1:適所適材|ポジションの役割について語り合い、深く理解し受け入れる

私個人の話ですが、ヴァイオリンの1stと2nd のどちらが好きかを聞かれると、気持ち7割強で2ndヴァイオリンが好きです。

内声のハーモニーでビオラと重なることや、時々主旋律のおこぼれで嵐のように前に出ることを要求される点など、個人的に結構ドラマがあると思っています。

仕事でも、自分からグイグイというより、ちゃっかり二番手…でも「ナンバーツーだからね!!」くらいのポジションに憧れちゃいます。

きっと創業者(楽曲で言う作曲者)はこんな想いだったのかなと思いを馳せながら自分の楽譜をみるのがとても好きです。
きっとその役割が持つ個性を愛するのがポイントなのでしょう。

解法2:適所適材|組織全体の目的や目標、その上の理念に対し意識を張り巡らせる

楽典も詳しくはないですし、専門的なことは正直不勉強なことが私の場合たくさんありますが…

それでも(創始者である)作曲者その人をとても尊敬しています

私のパート、、、地味なことばかりやらせるなー…
と時には与えられた役目を面倒に感じたり、飽きたりすることも。。。

ですが、ふと全体に着目すると同じ時間軸で他の楽器がとんでもなく難しいことを要求されていたり。作った人は、もう死ぬほど考えているんですね。

創始者の理念全体に立ち返ると、自分の悩みなど小さなことと思える。
この感覚はこの先も大切にしたいと考えています。

解法3:適所適材|それぞれのポジションにいる人に対し謙虚であり、意思を発し、互いに尊敬し合える関係を目指す

究極、結論これ。自己主張と思いやりのバランス。

自分の解釈でそれぞれが自由に弾き、行動する。
これは創始者やその代理人、団体の理念に背くかもしれません。

自分の想いを殺し、全体のコマに徹する。
これはソルジャーであり血が通ってません。

音楽も仕事も頭は冷静に、心は熱くが大切。そう私は教わりました。
決してまだまだ上手くはない私の演奏力でも誰かを感動させられたら嬉しいな!という想いで演奏のために仕事、仕事のために演奏と向き合っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

オーケストラにはじまり演奏団体は学校や会社のように社会の縮図そのものだと感じた方も多いのでは?

団体だから面倒くさい、でも団体だからこそ楽しい。
コロナで人々が集合すること、それを訝しまれる今だからこそ、改めて考えていただきたい視点・観点をまとめてみました。

今後もたくさんの方に日々の気づきを発信して参ります。
ぜひ応援宜しくお願いいたします。

宣伝:団員募集中

私の所属している弦合奏団が絶賛団員募集中です。
これまでアンサンブルの経験がなくても大歓迎です。
(最初の一歩を踏み出す、その気持ちを大切にする楽団であることを常に願っています)

体験入団も順次受け付けてますので、興味持たれた方は遠慮なくご連絡ください。ちなみに私と同じヴァイオリンの方大歓迎です!

記事が面白かった方は私と合奏団のTwitterのフォローもお願いいたします!

https://twitter.com/artestrings

ここまでお読みいただきありがとうございました!!!

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