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書籍【パラコンシステント・ワールド~次世代通信IOWNと描く、生命とITの〈あいだ〉】読了

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◎タイトル:パラコンシステント・ワールド~次世代通信IOWNと描く、生命とITの〈あいだ〉 ◎著者:澤田 純
◎出版社:NTT出版


次世代通信については、今よりも全てが高速化していくことは間違いない。その時に社会がどう変化するのか。
まずは、その世界観を想像することが重要だと思う。
技術先行で進んだとしても、活用されなければ意味がない。
こういう社会にしたいという理想があって、それを実現するためにどういう技術が必要なのか。
さらに、その時代までに新技術は実装できるのか。
結局開発者は、新技術を研究開発するのが仕事であるから、社会の実装までは考えにくいだろう。
そこをどうやって文系人間が軌道修正させていくか。
このコンビネーションが今後は益々重要になる。
こういう文脈があるからこそ、本書内では技術寄りの話ではなく、意外にも哲学的な話がメインとなっていた。
「パラコンシステント(Paraconsistent)」というのも、全く聞き慣れない言葉だが、「同時並列」ということらしい。
時代を象徴するような言葉であるが、今後益々複雑化する社会の中で、二者択一を選択していくことは実際には無理がある。
目まぐるしく変化する社会の中で、唯一の正解を見つけること自体が的外れだ。
結局、その場その場で臨機応変に最適解を導き出せることが大切なのであるが、これこそが「言うは易し行うは難し」なのである。
朝令暮改は現場からするとたまったものではないが、明らかに軌道修正した方がいいのに、当初のやり方に固執して変更しない方が明らかに迷惑だ。
そういう意味で臨機応変さは重要であるし、ある程度の事態のバリエーションを想定して今後の開発を行っていなくのだから、まずは思考回路を切り替えることからだ。
より柔軟で、そして、同時並列であるパラコンシステントが前提になれるように。
対応力もさることながら、広い視野で物事を捉えることが必要だろう。
隅々まで状況を見て、ある程度の想定を思考しておく。
そして、機を見るに敏を実行していく。
簡単ではないが、これらを出来るようにならないと、これからの時代で生き残っていくのは相当に難しい。
もうすでに過去の延長線上の社会ではない。
人類の誰も体験したことがない未来社会がこれから始まるのだ。
そう考えれば、一つの視点だけしか追いかけていなければ、未曾有の変化に対応ができる訳がない。
NTTが狙っているのは、「アイオン(IOWN=Innovative Optical and Wireless Network)構想」だという。
CPUなどのチップや基板内も、そこからネットワークに至るまで全てにおいて、電気信号ではなく「光」の信号を使うことで、超高速大容量通信が可能になるという。
電気ではないから、電力消費も少なくて済む。
2030年の実現を目指しているというが、現実化すれば、大きなイノベーションになる。
それこそ分かりやすい例で言えば、完全自動運転や遠隔手術などは実現性が見えてくるということだ。
この技術革新を使って、どういう社会を作り上げるのか。
それはやはり文系人材の方が考えるのが得意そうだ。
新技術の開発と同時並列で、新しい社会の在り方や、実装した場合の利用者側のあるべき姿を描く必要がある。
さらにこれからの新技術は持続可能な社会にどれだけ貢献するかが重要となる。
とにかくいくつもの課題をクリアして、社会に実装されていく訳だから、たった一つの万能の答えなど、ある訳がない。
「彼方立てれば此方が立たぬ」というトレードオフではいけないのだ。
相反する物事を同時に解決する能力。
これは極めて高度な能力だ。
今あらゆる企業人がこの能力を求められている。
1人で全てを解決出来る訳はないから、結局チームで課題に対峙することになるのだが、より高次元のチームワーク、コミュニケーション力が必要だ。
「無知の知」とはソクラテスの言葉だった。
お互いに何が分かっていないかをさらけ出し、その上で目の前の問題に対し、どういうアプローチで攻めていくのか。
それらを極めて高度な建設的議論で積み上げていく。
こう考えると、結局求めるものはAIでもロボットでもなく、人間ではないか。
作業はドンドンとAIやロボットに任せればいい。
人間こそ、見えない課題に対峙して、皆で議論を戦わせればいい。
益々、古代ギリシャ時代の哲学者のようになっていく訳であるが、これからの人間に求められる生き方だ。
やはり哲学をもっと学んでおく必要がある。
問いを立て、思考し、その思考を種として仲間と議論を重ねていく。
今からその準備をしておくのは、早過ぎることではないと思うのだ。
(2023/11/25土)


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