見出し画像

書籍【SDGsブランディングの教科書】読了


https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/4883355314

◎タイトル:SDGsブランディングの教科書
◎著者:三科公孝
◎出版社:宣伝会議


「SDGs」の捉え方は、経営者の考え方や企業文化がダイレクトに影響する。だからこそ、誤魔化せない。
企業として、積極的に関与するのか、それとも消極的なままやり過ごすのか。
しかし、時代の流れを考えれば、この状況を活かしてビジネスとして成立する方向を模索する方が正しいだろう。
そういう意味で、今までの資本主義の純粋な拡大路線からは、大きく一線を画している。
古い体制の企業にとっては、これから厳しい状況になっていくだろう。
自社の利益を大事だと考え、SDGsの取り組みも、あくまでもコストとしてしか考えられない場合がまだまだ多いと思う。
そこの発想を劇的に変えていかなければならないのだ。
短期的な企業の利益を二の次として、長期的な社会的意義を優先して考えられるのかどうか。
企業として大上段に「全社員で取り組みます」と宣言しても、なかなか厳しいの現実だろうと思う。
社員一人一人をどうやって巻き込んで、全社取り組みにまで拡大していくのか。
いずれにしても、耳聞こえがいい言葉を並べるのは簡単だが、具体的に実施する方法が難しいのがSDGsなのだ。
これは「やる・やらない」という単純選択の話ではない。
SDGsの取り組みというそれぞれ両極端な思考の中で、片方だけに偏るのではなく、自社にとって、どの辺を一旦の着地点とするのか。
その点はグラデーションになっている状況だと思うのだ。
だからこそこれらが複雑に絡み合って、SDGsにどう取り組むのかを探り探り行っているというのが現実なのではないだろうか。
私が所属する会社としてもSDGsの取り組みを行おうという機運もあり、組織なども作ったりしている。
しかしながら、まだまだ具体的に何を行えばよいかまでは決めきれていないという状況だ。
正直言えば、今会社の中で売上利益を稼ぎ出している部署は、SDGsとは距離がある状況だ。
この部署からSGDsを取り組めばよい訳であるが、それは現在の利益を犠牲にする話にも繋がってしまう。
だからこそ、「出来るところからやる」という状況になるのであるが、この判断が難しいということなのだ。
ビジネスの現場は常に予算や収益に追われ、なかなかSDGsまで気が回らないという状況もある。
現時点での現実的な着地点をどこにするかだけでも、意見は分かれているところだ。
そんな状況もありながら、SDGsを意識していく方向は、社会的にも益々加速している。
企業として「取り組まない」という選択肢はあり得ないだろう。
まずは調べるところから始めているが、そういう意味でも「教科書」と謳っている本書は参考になる。
「SDGsとはブランディングでありマーケティングである」はまさしくその通りで、非常に分かりやすい例えであった。
SDGsでなくても「企業ブランディング」は、今後の経営戦略上で重要なのは間違いない。
日本企業はこの「ブランディング」を確立することがそもそも苦手で、どうしても今でも「良いものを作れば売れるはずだ」という品質第一主義のバイアスから脱することができていない。
それが今までを支えてきた企業文化なのだから、なかなか脱却できないことは理解できるが、品質を捨てずにそこにプラスアルファを追加することはできるはずなのだ。
それが戦略的なブランディングであり、結果マーケティング活動に繋がるということを本書では説いている。
「不の解消法」という言葉を使っているが、要は「社会課題の解決」なのかと思う。
SDGsを意識するかどうかは別として、これだけ豊かになった今現在の世の中でも、課題はまだまだ沢山ある。
これらを解決することこそ、世のため人のためになると考えられないか。
それらの取り組みを愚直に行うことこそ、「三方よし」の精神に繋がると思う。
本書内での事例では、取り組みが結果メディアに取り上げられて、収益的にも広がっているというものもあった。
まさに善い行いが利益につながったという好例であるが、これらをどうやって継続し循環させていくのかまでを整えることが成功の道筋と言えるだろう。
事例での「おむすび権兵衛」は、街中で店舗は見ていたが、起業の背景までは知らなかった。
確かに日本の「おむすび」という食文化は、よくよく考えると非常に面白い。
世界的にも珍しい食べ方であるし、具材の豊富さもあって、それだけで様々な味を楽しめる。
外国人が来日して、コンビニのおにぎりの味に感動するという話はよく聞くが、これらを考えただけでも事業として充分に成り立つ気がする。
そこに、米農家の課題なども表面化しているのであれば、よい循環の形を組み込めるのではないかという発想だ。
別企業の取り組みであるが、震災後、地域復興のために行ったクラフトビール醸造の話も素晴らしいと思う。
各企業が最初からSDGsを意識しているかどうかは別としても、結果的に社会課題の解決になるのであれば、それはSDGs的と言えるだろう。
収益を上げることで継続性が確保できるからこそ、マーケティングの視点を持つことは非常に重要だ。
ロックストローム博士が提唱したとされる、SDGsウェディングケーキモデルも本当にその通りだと思う。
まずは「環境」という自然資本がベース。その上に「社会」が成り立ち「経済」が成り立つ。
「環境」を整えることがまず第一なのだ。
この順番を間違えてはいけない。
我々にはまだまだやれることがある。社会の課題もまだまだ沢山ある。
社会がSDGsを意識することは本当に良いことだと思う。
自分でも何ができるか、何が社会課題の解決につながるか、考えて実行していきたいと思う。
(2023/7/16日)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?