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4つのアプローチ:空気を良くする①

 写真は高島平駅から徒歩数分の珍来というお店のつけ麺焼肉定食。もの凄いボリュームですが、焼肉もつけ麺も美味しいのであっという間に食べられます。このお店はラーメンもチャーハンも大概のものが美味しいので、重宝しております。

 さて、前回までは「手ごたえのある取り組みをする」ことについて書きました。今回は最後の4つ目のアプローチとして「空気を良くする」ということについて書いていきたいと思います。

 面接でもそうですが、グループや講座、あるいは施設や組織といった場面で「場の雰囲気」というのが気になるという方もいるのではないでしょうか?というか僕はとても気になり、本当は当事者や支援者に問題がないのに「場の空気が悪い」せいで問題になっていることがあります。例えば初対面同士の集まりでなかなか話し出すきっかけがつかめずに沈黙が続いたり、長い歴史のある施設で経験年数の多い人ばかりの意見が通って、若手が何を言っても聞いてもらえなかったり、ある人が熱心に訴えても他の人が全く反応せずに場がしらけているなど、集団の雰囲気全体が問題になっている場合です。

 以前書いたように、僕はこころの健康は個人と環境の相互作用で成り立っていると思っているので、環境面の影響が大きい場合にはその環境にアプローチすることにしています。その際、目標とするのは①お互いに発言しやすい雰囲気を作る②集団や組織への出入りが保障される という2点が大事かなと考えています。この目標を達成するために直接的ないし間接的に関わっていくのですが、案外これが難しくてこのアプローチに慣れるのに僕は時間がかかりました。

 扱いが難しいと感じたひとつは、何にどうアプローチしたらよいかがはじめはわからなかったからです。集団を観察していると集団の雰囲気を左右している人がなんとなくわかってくるので、その人にアプローチしようとはじめは思いました。でも、その人にアプローチしたとしても自分がその人と仲良くなるばかりで全体には波及されないし、時にはその人の「派閥」みたいなものに入ったとみなされて、その人の取り巻き以外の人と口がきけなくなるようなこともありました。

 これだと集団の雰囲気をするどころではないので、今度はなるべく均等に関わるようにしました。僕自身がいろいろな人と関わってはじめに仲良くなり、その後で「ハブ」的な役割を担って今までつながっていなかった人たちをつなごうと思ったのです。

 これは一定の効果がありましたが、難点としては「自分がいないと集団が維持できない」というようなことがありました。なので、やっぱり僕が間に入らずとも集団が良い雰囲気になるように持っていく必要があると思いました。

 そこでやるようになったのが、はじめのきっかけは自分がつくり、その後はそれぞれの人たちが話し合えるようにしていくということです。

 これも具体例をあげてみます。例えばいろいろな相談機関が集まってある当事者の支援について考える事例検討会のようなものがあるとします。司会は別にいるのですが、緊張していて、自信がなさそうです。そんな中、経験年数がたくさんある厳しそうな支援者から「こんな会議やる必要があるのか?」と言われてしまった時のような場面です。みなさんだったらどうするでしょうか?僕だったら、なんか空気が悪いなと思って空気をどう変えるかと考えます。はじめは司会の方の話を受けながら「こういうことが伝えたかったという理解でいいですか?」「今日はどこまで話し合えればいいですか?」など言いながら目標を確認していきます。そして経験年数の多い人には「さすが○○さんですね!もっと教えてください」と聴きながらみんなで情報を共有していきます。その後は他の方にもいろいろと振りながら話をしていくのですが、最終的には僕が発言しなくてもみんなが自発的に意見を言えるような雰囲気まで作ることが目標となります。

 こういった流れを作る上で大切なのが「ユーモア」と「無知の知」というアプローチだと感じています。ユーモアは場の雰囲気を和ませて相手が話しやすい雰囲気を作りますし、無知の知のアプローチはそれぞれの人たちが何を考え、どういった思いをもっているかを知り、それをその場にいるみんなで共有することができます。またその方が個人の立場として言っているのか、所属する機関を代表して言っているのかはということもわかるので、何を大事にして話し合いを進めていければよいのかが明確になります。こういったアプローチは家族同士の話し合いに同席する場合にも有効で、いろいろと家族の「あたり前」を「無知の知」のアプローチで教えてもらうことによって、改めてなぜそういったことがこの家族に必要なのかを確認していけることにもつながります。

 次回に続きます。

#臨床心理学 #心理療法 #対人支援

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