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2021年演劇&アート感想まとめ

2021年、なにげにひとりでプラリと美術館や劇場へ足を運んでいたのですが、緊急事態宣言もあり、あまり感想を言いづらかったので…年末にまとめました。まずは美術館編から。

第24回 岡本太郎芸術賞(岡本太郎美術館)

毎年楽しみにしてる!2022年は2月19日~5月15日を予定。行くべし!

毎年春になると川崎の岡本太郎美術館で「岡本太郎賞」の受賞作品が展示されます。こちらで賞を取った方々は、その後日本各地で開催される芸術祭に参加されることが多いので、まさに現代アートの登竜門というべき展示会です。これを観ないと今年が始まらない!
2021年度の大賞作品はなんと高校生が受賞!夢がある~。
熱量の多い作品や、笑える作品、視点がユニークな作品、いつも頭の中をかち割ってアートの花を咲かせてくれます。なんか見てると「自由に生きて自分を表現するすばらしさ」を感じさせてくれて、心を春にしてくれる!2022年は皆様もぜひ足を運ばれてみては?(2022年2月19日~5月15日開催予定)

パビリオントウキョウ2021&水の波紋展(ワタリウム美術館、その他)

ヤヨイちゃんと一緒に!水玉に埋もれる、そして消滅…

日本を代表する有名建築家の作品や、若手現代アーティストの作品を表参道&青山付近で展示する街巡り要素もある作品展。しかもオリンピックに合わせて日本のアーティストのお披露目の意味もあり無料!(結局コロナで外国の方々は少なかったとは思いますが…)
瀬戸内芸術祭で観た笹岡由梨子さんの作品が好きで、なにげに3回も渋谷に足を運んでしまいました。

笹岡さんの映像作品「私は粉雪~♪」の曲にうなされるw

週末には無料で素敵なカートに乗って次の会場へ移動できたり、会場へ到着すると無料でお水がもらえたりいたれりつくせり。

風に吹かれてVIP気分…!?

予約制でしたが、国立競技場を眺められるモダンジャパニーズ茶室「五庵」は贅沢な時間が過ごせて良い思い出です。

贅沢空間からオリンピック会場を眺める「絶景かな、絶景かな~」
これまた殿様気分にさせてくれました。


ライゾマティクス_マルティプレックス(東京都現代美術館)

長生きしていたら世の中に置いていかれた…

デジタルアート集団ライゾマティクスの大規模展示会。動く箱と連動してダンサーの映像をライブで合成する技術など、新しいアイディアと見せ方を常に研究している姿を見せつけられました。アートのデジタル資産のNFT、ソーシャルプラットフォーム、アーカイブでクリティカルで?もう新しい世界にはついていけないのかもしれない…。頭の悪い私は、もう生き残れないので、長生きしたくないなあと思ってしまった…よ。

マーク・マンダース マーク・マンダースの不在(東京都現代美術館)

幾度となく登場する黄色い板の秘密…

作者不在ながら、作品のビニールの裏にそっと作家さんの靴などが置いてあったり、壁に粘土のネズミがはられていたり、小さなメッセージを探し出す感じが面白かったです。床の下に3匹のカラスの死体がある(といわれる?)作品は、気が付かないと「?」なまま終わってしまうし、作家さんの小さなイタズラ心に存在を感じるところもあり。
顔にめりこむ黄色い板や、不吉なイラストからアーティストの苦悩を想像したり、学芸員さんに「どういう意味なんでしょう?」と話しかけてみたり、静かな空間で彫刻と語り合い、思考の遊びをするような展示でした。


GENKYO 横尾忠則「原郷から幻境へ、そして現況は?」(東京都現代美術館)

その生命力ください…と思ってしまった展示でした

作品数の多さと変貌、圧の強さたるや…、観ている人たちのパワーを吸い取ってしまう作品って!?ブラックホールのように周囲のパワーを吸い取ってアートに変換しているのだろうなと思いました。描きたくて、描きたくなくて、そういうことも考えてなくて、とにかく出てくるもんは出てくるんだろうな!
会場から出てくる人たちが、ちょっと圧倒されて疲れている感じが面白かったです。生まれつきそういう体質で生まれてきた天才。天才には天才の苦労がありそうだけど、吹けば飛ぶよな凡人の人生とどっちが良いのだろうと考えました。(中途半端で平凡な人生という選択は悪くないかもしれない!?と思いました…すんません)

アナザエナジー展(森美術館)

三島喜美子さんの作品。陶器で紙の質感を再現。壮大なことをやるエネルギー!

アートの世界でも女性が活躍するのは大変らしい。作品が良くとも多くの目に触れられてナンボというところもあり、お金の投資取引の対象として見られるところも大きい。教師をしたり子育てしたりしながらもアートを作り続けていて、それでも形作ろうとする情熱こそがアートなんだなと感じました。三島喜美代さんの作品が壮大に遊んでいて楽しそうで、こういう気持ちで作品と対峙できたらいいな。誰かに評価されようと思わない、子供のときに工作していたときのままの気持ちで作品と遊べたら、なんて素敵な人生でしょう!

和田誠展(東京オペラシティアートギャラリー)

シンプルな線なのに「あの人のイラスト!」とわかるところが個性。

「ねこにバイオリン、雌牛が月を飛び越えた」中学生のときの読んでいたマザーグースのやさしい挿絵が和田誠さんのイラストでした。ポスターから挿絵、有名所では週間文春の表紙イラストなど、線と色を見ただけで誰の作品か分かってしまう個性が素晴らしい唯一無二のイラストレーターさんでした。原画が見れて感激です。
映画や作詞などにも挑戦しているところが意外でした。(予算豊富な夢のある時代だった!?)その他、企業マークや劇団四季のポスターデザインもされていました。
料理研究家の平野レミさんの旦那さまでもあり「毎日楽しそうに絵を描いていた。通帳なんか見たことなかったんじゃないかしら?」ということで、楽しい仕事とおいしい食べ物に囲まれたうらやましい人生だったのではないかと思いました。ええな。

黒坂麻衣展(スパイラルホール)

2019年に若くして亡くなった未来が期待されていたアーティスト黒坂麻衣さんの作品展。淡い色の人物がや風景画が繊細な光を見せてくれます。絵を見ていると心に静けさがスーッと入ってくるようです。遠い記憶をたぐる途中、どこかで作者と記憶をレイヤーで重ねてみたら、ぼんやり絵になったような、そんな不思議な絵。
作品は販売されていましたが、ほぼ完売。雑誌Casaでも紹介されていたので、注目度が上がっている作家さんです。

WHAT「解き放たれたコレクション展」(寺田倉庫)

奈良美智氏の珍しい浮世絵風のイラスト

美術コレクターの作品を預かりつつ、展示して一般市民にも観せてくれる寺田倉庫のコレクション展。先見の目があるっていいな(楽しみつつアートに投資できるって夢があっていいな。バンクシーの絵も20年ほど前に原宿で数万円で買えたらしいし…タイムマシン欲しい)。お金持ちにやっかむ心を押さえつつ、絵を觀るという不思議な体験。奈良氏の浮世絵タッチの絵は初めて観たので、コレクターさんすごい審美眼!と思いました。ええな。


アタミアートグラント「四肢の向かう先」(ホテルニューアカオ)

今となってはカッチョイイ!昭和建築はダイナミックな未来を夢見ている感じ。
ディズニーのトゥモローランドっぽい。

2020年11月に突然閉館してしまったホテルニューアカオ全体を使って、渡された司令書をもとに館内を回り、アートを見て歩く展示。昭和レトロなニューアカオ自体がもう作品なので、廃墟・レトロ・建築デザインなどが好きな人たちがカメラ片手にたくさん来てました。Twitterなどで館内写真が紹介されるにつれて、人が集まるようになり会期も延長されました。その頃には入場まで1~2時間待ちの大盛況。最後の方では駐車場も有料になり、最初から入場料をとっても良いレベルの作品展でした。

かつての賑わいを思い出させるお食事会場。ゴージャス!
ダンスホールでは社交ダンスが楽しまれたのだろうな。
想像をかき立たせる景色と、ダイナミックな装飾に時代の夢を感じました。

当初エレベーターのボタンも階数がわからないような仕掛けになっていたようでしたが、会期途中から(たぶん混雑や混乱が原因で)階数ボタンが見えるようになっていました。
暗い階や、人気のないさびれた箇所もあり、人がいないとちょっとホラー。
バブルの時代、やりたいように予算も組めて、好きなデザインでものが作れて楽しかったんじゃないかなあ。夢があっていいなあと非現実的な世界を楽しませていただきました。

*その他、小さな美術展も行ってますが、このくらいにしておきます。

続きまして舞台編。

レ・ミゼラブル(帝国劇場)

帝劇にくると気品が上がったような気になる(数時間だけね)

3時間の長丁場のミュージカルで、しかも各所号泣ポイントがある(全部名曲だし)ので、なかなか体力的に見るのを遠慮していた作品です。10年ぶり(?)くらいに観たら演出がところどころ変わっていて、ガブロッシュの見せ場も縮小されていました。ジャベールの「スターズ」が好き。
こんなの作品の中の過去の話だと思いきや、現代につながることが多くて泣けた。迫害や差別、貧困など、人間は衣装と背景を変えているだけで根本的に変わらないところに心が痛みます。救いは誰かを想う心だけ。
「愛することは生きること」コロナ禍でも満席の劇場に、しばしの間現実を忘れました。

王家の紋章(帝国劇場)

夏休みはエジプトに気持ちだけ飛ばしていたよ。

高校生のときに友だちから借りて読んでいた「王家の紋章」。舞台を観つつ「ああこういう話だったなあ」と懐かしく思い出しました。ライアン兄さん~!イメージぴったりやんけ。たびたび「キャロルはまだ見つからないのか!」と怒りつつはける姿に笑ってしまった…。うぬぅ、これが2.5次元ミュージカルというものか!楽しみ方を知った瞬間。
新妻聖子さんの安定の歌唱力はさすがとしかいいようがない。

アナと雪の女王(ウォーターズ竹芝)

いつの間にやらきれいになっていた四季劇場

劇団四季のクラウドファウンディングでポイントが5000円分あったので、慌てて予約しました。すっかりディズニーミュージカルが鉄板となった劇団四季。昔はロイド・ウェバー作品が多かったんだけどな。
舞台の氷が刺さらないか美術さんや裏方さんも大変だろうなあと思いつつ観ました。あとは、アナを持ち上げるハンス王子の腰の心配をした。ギックリ腰の役者さんはいるのだろうか?
やはり「レリゴー」の氷の城と早替えのシーンは圧倒で、その後の休憩の時間も、しばらくお客さんのため息が聞こえるほど。フワァ…
プロジェクションマッピングも進化して、舞台装置や美術も進化したなあと現実の世界(の辛さ)を忘れさせてくれる舞台でした。

オリバー!(東急シアターオーブ)

子役多くて、このコロナ禍で現場は大変だったのではないかと、
裏方の大人の苦労を想像してしまいました…。子どもはワクチン打てない時期だったし。

「クリスマス・キャロル」(チャールズ・ディケンス作)のミュージカルが好きで、同じ原作者ということで「オリバー!」も観たいなあと思っていましたが、ロンドンでしか上演されていなかったんですよね。ようやく日本でも上演(再演)が決まったので観に行ったら、ちょうどその時期、市村正親氏の離婚と親子共演で注目もされる作品になっていました。
翻訳初演から30年くらい経っているはず。もう古典のような作品になっていて、ストーリーもナンシー最期のとこがキツく感じてしまいました。(CDで音楽を聞いていただけだったので、残虐なシーンだと知らなかった)。ビル・サイクスのような人、現実でもいるよね…。ナンシーのような人も。
それにしても子役偉いなあ。これだけのセリフや動きを覚えられるだけでも将来有望だなあと思う。観ている親も嬉しいだろうに。

コロナ禍ということで、結構控えめにしているつもりでしたが、辛いときにアートは心の癒やしでした。仕事の合間にガッとひとりで出かけて涙する日々。アートよ今日もありがとう。来年もどうぞよろしくお願いします!