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女とか男

「女の子のことが好きなんじゃないの?」

私はスキンシップの多いバイト仲間にそう言ってしまったことがある。女性は男性を好きになるのが当たり前だと思っていた私は、3歳年下の友達と買い物に出かけた時ふとそう口にしていた。

その時のことはよく覚えている。

付き合いもそれ程長くない彼女が、私に対して過剰なまでに優しく少し”暑苦しい存在”だと感じていた私は、春先の高円寺でアーケードをくぐりながらそう言った。歩き疲れて少し苛々していた。


彼女とはバイト先のファーストフード店の同期で、店の中で一番仲の良い存在だった。私は当時かなり青く不愛想でとがった性格だったが、そんな塩対応の私にバレンタインには熱い想いのこもった手作りチョコ(手紙付き)をもくれたり、誕生日に高価な財布をもらったりするうちに、なんとなくこれはちょっと友達以上…??と感じている部分もあったのだと思う。


「女の子のことが好きなんじゃないの?」


何気なく聞いてしまったが、振り返るとおしゃべりな彼女が言葉を失い、気まずそうな顔をしていた。見たことのない表情だった。その表情から彼女の感情をうかがい知ることは出来なかったが、おそらく図星というリアクションだったのではと今では思う。


一瞬気まずい空気は流れたものの、その後の日々は何一つ変わらなかった。やがてバイト先を卒業する頃同じ店の男の子と彼女は交際を始めた。私はなんだ、ノンケだったんじゃん!と心の中で思ってしまった。

そんな彼女とは社会人になってからというもの、ごくたまに連絡をとる程度でお互いそれぞれの道を進んでいた。互いの恋愛についてもほとんど話すことはなく、連絡と言えば誕生日にラインを送り合うくらいになっていた。


しかし久々に連絡を取ってみると(私の離婚報告を機にw)、卒業から8年経った彼女は9歳年上の女性と都内で同棲をしてるということだった。彼女は女性が好きな女性だった。その事実を理解すると同時に、あの日私が何気なくかけてしまった一言に対する罪悪感がこみ上げてきた。



近頃はメジャーになってきたLGBTQ、ジェンダーフリーという言葉。そして男女平等、女性の活躍推進、すべての人が生きやすい世の中に、という風潮がある中で私は最近疑問を抱いていることが一つある。


性別とは。


進学のための提出書類、就職の為の書類、市役所に提出する書類、そこには「性別 男・女」という欄が当たり前のようにあり、指示されなくとも自然に「女」に〇をつけてきた私。

しかしこれは何だったのだろう。

何をもって女とするのか、男とするのか。最近よくわからない。むしろ、何を問うているのか全く分からなくなってきてしまった。


この欄で知りたいことって何なんだ?性的指向?それとも性器の形?いずれにせよ進学にも就職にも全く関係のない話だと思う。おそらく英訳するとしたらこの欄は性別(sex)となるので性器の形を聞いているのだと思う。失礼な話にも思える。ちなみに社会的な性別はgenderと訳される。


都立高校入試の男女別定員制にも無論反対である。合格したのがAさんでした、Bさんでした。それが女性か男性かなんて結果の話だし、入学後に更衣室や制服の問題があるとしても(それはそれで解決してほしいが)入学前の段階では全く必要のない情報である。


すべての人が生きやすい世の中を目指すうえで大切なのは、人間として対等であること。性別だけじゃなく、年齢差、国籍、肌の色でジャッジすることはすべて間違っていると私は思う。


女性だから、若いから、だから優しくされる、優遇されている、と言われるのも心外だし。


私は私だから素晴らしいのであって、小笠原だから優しくしてもらえるのである。悔しいなら魂を磨いて出直しな。

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