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著書「ボイステック革命」のプロローグ全文と、平野文さん・DJ Nobyyさんによるボイスドラマを公開します

この度、僕の初めての著書になる『ボイステック革命〜GAFAも狙う新市場争奪戦』(日本経済新聞出版社)が6月19日に出版されました。

先日「はじめに」を公開しましたが、今日は「プロローグ」の全文と音声を公開します。このプロローグは、ボイステックで私たちの生活は何が変わるのかを想像していただくために、未来の「ある一日」をストーリー仕立てで書いてみました。

こちらの音声は声優 平野文さんとVoicyパーソナリティ DJ Nobbyが2人で読んだボイスドラマになっています。

このボイスドラマを聴いていただければ、「ボイステックの未来」にワクワクしていただけるんじゃないかと思ってます。ぜひ音声と書籍が連動した新しい形をお楽しみください。

音声発信者の方へ

音声の未来のストーリーを多くの人に知っていただきたいので、このプロローグは「音声の朗読」を、権利フリーにします!Voicyだけじゃなく、Podcastなど他の音声プラットフォームでも自由に朗読いただいて構いません。ぜひ一緒にこんな素敵な未来をつくっていきましょう。


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プロローグ -ボイステックの未来-


朝6時すぎ。

ベッドサイドに組み込まれたスピーカーから、
音声アシスタントが「目覚めの音楽」をテーマに選んでくれた曲が
低音量で流れ始めた。

今日はバイオリンとピアノのクラシック音楽だ。
いきなりアラーム音で起こされるのは嫌なのだ。

音楽が少しずつ大きくなり、アラーム音が鳴る。

「おはよう、今何時?」

6時半です。

音声アシスタントが答えてくれる。

「さっきの音楽は何?」

ベートーベンのバイオリンソナタ第5番です。
いい曲ですよね。今の季節に合わせて選んでみました。


目覚めにぴったりの曲だ。

しかし6時半起床とは普段より早い。
今日は在宅勤務じゃないんだっけ?

「今日の予定は?」

今日は出勤する日です。9時から企画会議があります。
午後は1時半に来客です。
ABC株式会社の佐藤さんがいらっしゃいます。

そうか、じゃあ早く準備をしないと。

ベッドを出て洗面所に向かう。

来客があるなら、久しぶりにネクタイを締めていかないと。

「30分後に、ネクタイとジャケットが必要だとリマインドして」

はい。

このマンションは、ベッドサイド、廊下、
洗面所や風呂場、トイレ、台所、リビングなど、
あちこちに目立たないようスピーカーが設置されている。


それから高感度のマイクも取り付けられていて、
すべてがネットワークで同じ音声アシスタントにつながっている。


人感センサーで、僕がどこにいるのかを検知するので、
音声は自分の近くのスピーカーからしか出ない。


マイクも、一番近くにあるものがオンになる。


僕の声だけを認識するようになっているので、
テレビの音に反応したりすることはない。


何をするにもまずリモコンを探していたという時代が
懐かしく感じられる。

「リビングのカーテンを開けて」


カーテンが自動的に開く。
今は快晴だけど、昨日は夕方にわか雨が降ったんだった。


「今日の天気は?」

晴れのち曇りです。最高気温は25度、最低気温は11度。
降水確率は0パーセントです。


雨は降らないようだが、朝晩は冷えそうだ。
どのジャケットにしようかな。

「今の気温は?」

19度です。

朝から既に暑くなり始めているようだ。
薄手のジャケットにしよう。

今日は仕事が早く終わるはずだから、
夜冷え込むまでに帰れるだろうし。


いつもは朝食を食べながら、
好きなお笑い芸人の番組を聴くんだけど、
今日は企画会議や来客があるから、
話題のネタのためにもニュースを聞いておこう。


「ニュースを聞かせて。ビジネスニュースがいいな」

トップニュースをお届けします。
ニュースを聞きながら軽い朝食。

後片付けをしながら、食器用洗剤が残り少ないことに気付いた。
そういえば、牛乳もきらしている。


「牛乳2本と、いつも買っている食器用洗剤を
 ネット通販で頼んでおいて」

いつものA社の洗剤ではなく、
B社の洗剤なら今セールをやっていて、
2本買ったら15%オフになります。

どうしますか?

「じゃあ、B社の洗剤にしようかな」

わかりました。では、牛乳2本と、
B社の食器用洗剤2本を注文します

「よろしく」

洗面所に行くと、台所のニュース音声がオフになり、
洗面所のスピーカーから聞こえてきた。

ニュースの合間に通知音が鳴る。

ネクタイとジャケットをお忘れなく。
それから、鈴木さんに渡すファイルをお持ちください

「そうだった。ありがとう」

チームリーダーの鈴木さんから借りていた資料を
今日返すことになっていたんだった。

昨日、思い出したときに
リマインダーをセットしておいてよかった。

身支度も終わり、そろそろ出かける時間だ。

今夜は、大学時代の友達と音声チャットの約束があるから、
会社帰りにジムに行くのはやめて、
家で軽くエクササイズをすることにしよう。


先月から音声エクササイズのサービスを使い始めたところだが、
なかなかいい。

トレーナーが音声で、
ダンベルを使ったトレーニングをサポートしてくれるというもの。

自分一人だとなかなか続かないけど、
トレーナーの音声の指示に従い
音楽に合わせて体を動かしていると、
時間があっという間に過ぎる。
大学時代の友達とは、
今度の週末、郊外にキャンプに行くことになっている。
今夜の音声チャットはその相談だ。

車4台に分乗していくが、
道中もずっと全員が音声チャットで話したり
歌ったりするので、行き帰りも盛り上がる。

「午後7時までに、洗濯と乾燥を終わらせておいて」

〈わかりました〉


ピッピッと電子音が鳴り、
洗濯機のタイマーがセットされたのがわかった。

これで、仕事から帰ったら、
ちょうど洗濯が終わっているはずだ。

あれ? 台所の電気を消したかな?

「リビングのカーテンを閉めて。
 あと、部屋全部の電気を消しておいて」

カーテンが閉まる音がして、玄関以外の電気がふっと消えた。

「いってきます」

いってらっしゃい


「いってきます」と言うと、
室内の音声アシスタントがオフになる設定になっている。
玄関を出て、耳にワイヤレスイヤホンをはめ込む。
オンにすると、
家の音声アシスタントがイヤホンに引き継がれる。

「通勤するよ。いつもの流して」

イヤホンからいつもの経済ニュースと昨日の野球の試合結果、
そして今日の運勢が流れてきた。

マンションのエレベーターが1階に着き、
駅に向かう道に出ようとしたとき、
ポーンとチャイム音がして、
音声アシスタントが話しかけてきた。


ABC株式会社の佐藤さんからメールが届きました

「読んで」

おはようございます。当日に申し訳ありません。

今日、午後1時半にお伺いする予定でしたが、
前の予定が30分ほどずれてしまい、
御社到着が午後2時になりそうです。

時間を変更させていただけますでしょうか。
よろしくお願い致します

「返信するよ」

はい

「佐藤さま、おはようございます。
 ご連絡ありがとうございました。
 時間変更ですが、私の方は問題ありません。
 午後2時にお待ちしております。気を付けてお越しください。送信」

送信しました


昔はメール受信の通知音がするたびに、
「危ないかも」と思いつつ
気になって歩きながらスマホの画面を確認してしまっていた。

歩きながらメールを打っていて、
前から来る自転車にぶつかりそうになったこともあったっけ。

最近は、うつむいてスマホ画面を見ながら歩く人は
ほとんどいなくなった。

「今何時?」

7時45分です

ちょっと家を出るのが遅くなったかな。
急がないと。

「急ぎの通勤中、何か音楽流して」

ビートの利いた、さっきよりアップテンポの曲になった。
つられて歩くスピードも速まる。
何とかいつもの電車に間に合いそうだ。
駅に到着した。

構内に入ってすぐのところに、
僕が好きなチェーン店のカフェがある。
店の前を通ると、
この店からの音声広告がイヤホンに届いた。


このチェーン店からの音声広告は
受け取るよう設定しているのだ。

おはようございます。
今日は暑くなりそうです。

そろそろアイスコーヒーがおいしい季節ですね。

当店では本日から、
冷たいコーヒーデザートもご用意しています。
では今朝のクーポンクイズです。

今日から提供が始まる当店自慢のコーヒーデザートは、
コーヒーゼリー、コーヒーアイス、どちらでしょうか?


「うーん、コーヒーゼリー?」

正解です!

では、コーヒーお代わり無料クーポンと、
コーヒーゼリーの割引クーポンを差し上げます。

今からメッセージクーポンをお届けします。
注文時スタッフに﹁○○﹂とお伝えください。
それでは良い一日を。

このクーポンが目当てで、会社に行くときは
必ずこの店の音声広告を受け取っている。

このチェーン店のカフェが会社のビルにも入っているので、
朝会社に着いたらコーヒーを一杯買ってオフィスに行く。

ランチの後にお代わりクーポンを使えるのでちょうどいい。
コーヒーゼリーも試してみようかな。

電車の中では、英語学習コンテンツを聴くことにしている。

いつも聞いている番組は、
乗車時間の45分でちょうど終わるので、
乗り過ごし防止にもなる。

以前は通勤中、ずっとスマホの画面を見ていたけど、
今はほとんど見なくなった。

僕の乗る電車は、前半は外を走るので、
だいたい外を眺めている。


途中、桜並木が見える場所があって、
満開の季節はそこを通るのが楽しみになる。

秋になると紅葉がきれいな場所もある。
車窓で季節を感じられるのが、結構楽しい。


電車が地下に入った。もうすぐ会社の最寄り駅だ。
いつものカフェでコーヒーを買って出社しよう。
今日も忙しくなりそうだ。






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