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事業は「急成長」させるべきなのか? 【声の履歴書 Vol.87】

こんにちは。Voicy代表の緒方です。

この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。

さて、スタートアップをやっていると、「すごいスピードで成長する会社=イケている」みたいな考え方が一般的に感じられます。なんというか、やっぱり、スピード感みたいなものはすごく重要視されますよね。

速いほうがかっこいい、ゆっくりやるのは何かダサい、みたいな。そういうところがあるんですよ。

でも本当にそうなのか。必ずしもそんなことないんじゃないか、という話を今日は書いていこうと思います。

急成長を焦ると、それはそれで大変

スピード=正義と思われがちですが、ほとんどの場合、経営者とチームで「どれくらいの速度でこの会社を大きくしていこうか」と綿密に考えたうえでそのスピード感が設定されます。

もちろん、最近すごく急成長して大きくなった会社としては、メルカリなどがその代名詞になると思うんですけれど、急成長するに足るビジネスかどうか、組織かどうかということは、すごく大事だと思っています。

そこを見極めることはすごく難しいんですけれ、周りの投資家やいろいろな人からの「急成長するんだよね?」というプレッシャーに負けて、とにかく人を採ろう、とにかく何かしよう、と焦りだす会社もたくさんあると思っています。

特に今年は大きな不況がくるんじゃないかと言われていました。このタイミングでとにかく急成長を焦ると、それはそれで大変だろうなと思います。急成長のために採った人をリストラする必要があったり、成長が鈍化すると一気に勢いがなくなってしまったり。

Voicyも「どれくらい急成長するんですか?」「音声はどれくらいで“来る”んですか?」というふうに、妙に急成長を求められる日々を過ごすわけですが、やはりそのときに“気持ちだけ焦らない”ことが大切だと思ってます。

そもそもですが、「なぜ急成長するのか」「どうあれば急成長できるのか」ということをよく考えるようにしています。そして急成長したあとは安定して下落しないのか。例えば、すでにマーケットがあって、ユーザーを獲得する意味があることがわかっている場合は取りに行っていいと思います。

すでに先行企業がいたら、その先行企業がいる規模までの急成長は当然のようにできると思っています。ただ、先行企業がいなくて、規模もないのに急成長をさせるということは、すごく難しいわけです。

市場の成熟度をしっかり見極めること

ですから、まずは1つ。「市場の成熟さや先行企業があるかどうか」を考える必要があると思っています。もしもそれらがない場合は、しっかりと市場の成長度合いをノックしながら、「今はどれくらいの規模が適正?」と問いかけながら歩みを進める必要があるだろうと思っています。

それからもう1つ。「成長するスパイラルがあるかどうか」も大事です。お客さんたちが「儲かる」「それじゃあ今のうちに入っておかなきゃ」「急げ、急げ」みたいな熱狂が起きたときの、「初めに入った人のほうが儲かる」「それじゃあどんどんやろう」という系統のサービスは、すごく速く進むと思います。

最近のWeb3.0やNFT関連のサービスはこれに近いと思います。あとはSNS関連のサービスも、先行者が有利と思われているので、初期に一気に参加者が増えます。

逆に、信頼が増してくると、ようやくお客さんが入ってくるというサービスもあります。

自分たちの事業は、どんどん人が人を呼ぶモデルなのか、もしくは、じっくりと信頼を築く必要があるのか、ということも考えておいたほうがいいでしょう。

自社に適した成長スピードを把握する

僕は、ただ「急成長しよう」「大きくしよう」と焦って成長を目指して、潰れていくサービスを見ると、「すごくもったいないな」と思ってしまうんです。

一方で、急成長できる可能性があるのに、「うちは無借金経営で」とか、「投資を受けずにやっていきます」とじっくり進んでいる会社を見ても、やっぱり「もったいないな」と思います。

自社に適した成長スピードや成長度合いというものは、経営者がしっかりと考えていくことです。Voicyを経営するなかでも、そこはすごく課題だと常に思っていますし、常に「今は急成長させるべきなのか」「今は様子を見るべきなのか」ということはすごく重視してきました。

例えばメルカリは、アプリを使う人が増えれば増えるほど出品されるし、そうすると商品が買われる、というループに入っているわけです。そういう会社は急成長したほうがいい。会社が急成長のエンジンをかけても、その分しっかり返ってきますから。

でも、マネタイズの土壌が整っていないVoicyがやたらと会員数を増やすと、サーバー代金だけが重く乗っかってくるんです。僕らはまだ売上が常に一定で追いついてくるわけではないのです。

ビジネスモデルがないままユーザー数を無限に増やして、「誰でも配信できますよ」と謳うと、コストだけがかかってしまうということです。さらに、コンテンツがまんべんなく充実してるわけではないのでお目当てのコンテンツがない人がたくさん来ても満足度低く使わなくなってしまいます。

だから急成長するべきか、ゆっくりとやるべきか、みたいなことを見極める必要がある。本当に急成長だけを目指すのであれば、パーソナリティの審査制はやらないですよね。

急成長を重視したおかげで無法地帯みたいになってしまうサービスも多いので、やっぱり、そういうことは避けたかったところがあります。

10年後や20年後にもずっと残っている文化をつくるためには、社会の中で「喋っている人がイケている」という認知を着実につくっていく必要があります。

投資を受ける=急成長が必須?

あと誤解されがちですが、必ずしも、「投資を受けること=急成長を求められる」ではないです。

投資をした後にきちんとリターンが出ればいいですし、投資家はそのリターンに対してお金を払っているので、それ以上に急成長する必要はないんです。ただ、その期待値が合っていないと良くないですけどね。

Voicyの場合、投資家やVCに対して「これだけの時間がかかりますよ」みたいなことは言ってあります。それでも「急成長をします」という感じの雰囲気は出していますけど(笑)。

やっぱり、成長速度のはやさは大事です。短い期間で軌道に乗ればその分回転率がいいので、投資の効果としては高いわけです。とはいえ、身の丈に合わない急成長を続けても仕方がない。これはけっこう他の社長とも話すことです。

よく、「社長は孤独だ」と言われます。こう言うことを自分で考えて、投資家にも社員にも説明していく必要があります。きちんと成長のスピードについて話せる経営チームを持っていたり、社員のみんなにも全部共有できるといいですが、自分だけで考えている社長もかなり多いと思います。

Voicyの場合、僕はリーダー陣になんでもしゃべっています。「どういう成長速度にしようか」みたいな相談もよくしていますね。そういう仲間がいることはすごく恵まれた環境だと思っています。

ーー最後まで読んでいただきありがとうございました。

声の編集後記

記事の執筆後に、これまでのことを振り返って音声でも話しています。よかったらこちらもお聞きください。

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