EC改善ディレクターとして最低限必要な7つのマーケティング観点
まとめようと思った背景
当方、ECサイト改善ディレクターである。
中規模以上の企業であれば、マーケは専門の部署や担当として、ディレクターと別れている企業が多い。
しかし、マーケ知識はサイト改善に大いに役立つため、最低限のマーケティング観点をとりまとめようと思った。
1.「Web」と「Web以外」の違い
リアル(店舗等)、テレビ、新聞等、媒体の1つとしてWebが存在する。
まずは、以下のように違いを理解する必要がある。
Webは世界中の商品と比較検討されるので「ひと目でわかる」ように端的に表現する必要がある
紙やテレビと違い、縦スクロールができるので、最初の1文が大切である
Webは、ユーザのセグメントが可能。それを理解したうえでペルソナ設定が必要。
2.クリエイティブ作成の基本
クリエイティブ作成の気をつけるポイントを紹介する。
■「誰に」伝えるか
デモグラフィック(性別、年齢、居住地域)だけではなく、サイコグラフィック(ライフスタイル、行動、価値観、購買動機)も考慮する。
ユーザの状態(問題の自覚がある・ない、手を打った・打っていない、比較検討中、等)も考慮する。
ずばり、ターゲットは「お金がある人」ではなく「お金を使う人」である
■「何を」伝えるか
ターゲットユーザ、競合商品、USP(Unique Selling Proposition)があるか、等によって変える。
USPからメッセージを導き出してみる
性別ごとの価値観を誤解しない。
オシャレの例)男性は勝ち負けやモテを目的とし、女性は同性間での共感や純粋な楽しみを目的とする。
■「どう」伝えるか
優先順位としては、比較的低い
仮に効果のある方法が見つかってもパクられたり、一時的だったりする。
また、クリエイティブが良くてクリックされたも購入に結びつかない場合もある。「ネカマバレ」しないようにする
女性向け化粧品のクリエイティブを、経験が浅い男性が作成した場合、女性の消費者は一瞬で見抜くと言われる。(男性と女性では色の分類数が違う)
仮にネカマバレした場合、商品だけではなく会社の評価も下がる。
3.商品に対する事前リサーチの徹底
PDCAやABテストが魔法の杖のように捉える方も一部いるが、基本的には事前リサーチを徹底することが目標達成の最短ルートである。
ゴールは、考えたキャッチコピーで、他人が買ってくれるレベルまで磨き上げる
化粧品やケーキの販売員と同じように、自分で納得するまで商品を理解する
「◯◯という原料を使っている」だけで思考停止せず、採用した背景も理解する
ユーザインタビューは、アンケート形式ではなく対面が理想。
「インサイト(購買意欲の核心やツボ)」を理解しながら、ユーザが使う「キーワード」を確認できる。専門家に聞く場合、複数人に聞くなど、客観的に妥当かを自分で調べる。
商品に付随する情報(例:オリゴ糖)を起点とするだけではなく、ユーザの状態(例:便秘)を起点とする切り口でもキーワード選定する。
買わない選択肢を潰す方法を考える。
メリットを最大化してシーンを伝える(例:「スマホを買うと、お孫さんと毎日会えますよ」等)
4.「広告」に対する認識を改める
広告出稿やLP作成時の、注意点を以下にまとめた。
「伝える」ではなく、「伝わる」を意識する
広告は情報伝達手段ではなく、コミュニケーションの手段であることを理解する
広告・商品を見る場所(ニュースサイトなのか、美容系サイトなのか)で表現を変える
「エモーションリレー(感情のリレー)」を意識する。広告→LP→商品ページと遷移するタイミングで、訴求内容や表現を統一させる必要がある。
伝える順番を間違えない。「自分が対象である」とわかるキーワードを先頭に入れる。
最新技術を使うだけでは、誤ったマーケティングを行う場合がある。
例)サンプリングの購入者が偏っていた場合や、ざっくりしたデモグラフィックを元にした、旧メディアによるマーケティング等最新技術と、知識/経験を組み合わせることで効果が最大化する
そもそも広告はウザいものではない。本来は、適切にターゲティングすることで有用な情報を提供する仕組みなのである。
例)求人サイトやお部屋探しはすべて広告であるが、これら情報をウザいと考えるユーザは存在しないWeb広告は、「有用な情報(コンテンツ)」×「広告(コマーシャル)」=「コンテンツコマーシャル」という認識で作るべき
5.「着眼法」を取り入れる
「着眼法」とは、他社でうまくいった方法を取り入れる方法である。
着眼法の第一歩は、他社の成功例を要素分解して形式知にすることである。それには客観的な視点が必要である。自分が広告をクリックした際、「なぜ目にとまったのか」「なぜ読んだのか」「なぜクリックしたのか」を分析することが大切である。そして、それを自社に取り入れられるのか、考えるべきである。
要素分解したあとの分析も重要である。「化粧品を塗るシーン」を広告にした場合、クリック率が上がったが、要因は「シズル感がある」「全体の色使いやアクセサリーがトレンドにあっている」等あり、どれが正解かはテストすべきである。
成功した要因・背景を把握したうえで取り組まないと、単なるパクった劣化版のB級映画になってしまうので注意する。
市場が成長していれば、他社の真似でも効果は期待できるが、成熟している場合、ユーザは大手を選んでしまうので、差別化すべきである
IT系は「形式知」のナレッジ化が得意だが、それが全てだと思いこみ、「暗黙知」があることを理解していない場合が多いため注意する。
職人気質な業界は、暗黙知のみで勝負する会社が多く、当たり外れが大きい。大ヒットは、暗黙知から生まれることが多い。暗黙知はファンダメンタルの観点から生まれ、形式知はテクニカルの観点から生まれる。
女性は長文を読まないという認識が広まっているが、それを鵜呑みにせず、面白ければ読むという観点も取り入れるべきである。
文字が多いLPは、最後まで読まれる可能性は低いが、購入される可能性は高いことを理解する。
6.「苦情法」を取り入れる
苦情法とは、お客様からの苦情に対応し、改善する方法である。
効果が出やすいが、現状のプロダクト・コンテンツに対しての意見になるため、それ以上の効果は見込めないことを理解する。
改善を実施する場合、ABテストをするのが主流である。
ABテストをする場合、「何を言うか」「どう言うか」を区別してテストしばければ、テスト結果を正確に分析することは難しい。なぜなら、「コンセプトは悪いが表現は良いのでBが良い」のような結果になってしまうためである。
ABテストは、雑に考えたパターンでテストすれば良いものではなく、100個考えた中から3~5個で最高を決めるための手法である。
ABテスト用クリエイティブ作成時の仮説は、低次元(画像は◯◯が良い、メッセージは短文が良い等)ではなく、高次元(ユーザは◯◯を求めている等)であるべきである。
ABテストで目標をすでに大幅に下回っている場合、良い方を採用し改善しても微々たる効果しか上がらない。よって、全く別の観点Xを含めた、AB-Xテストをする方法もある。
ビジネスは「10本やれば1つは当たるだろう」は絶対に当たらず、「本気の1本だけが実を結ぶ」と考えるべきである。
現状の計測結果的に、300%アップ等の高いレベルで改善しなければ見合わない場合、一度「この広告×LP」の組み合わせを捨て、新しく作るべきである。重要なのは、「頑張ってチューニングする」のではなく、「成果を出す」ことである
数値を見る場合は、クリエイティブそのものに加え、前ページのクリエイティブも見るべきである、それをしない場合、ヒートマップやCVR等の数値分析は意味がない。
例1)ヒートマップが赤い:文字が小さく見えにくいだけであった
例2)この広告と中間LPと商品LPの組み合わせはCVR等が高い:実は商品LPのクオリティが高かっただけであった
例3)新しい中間LPにしたら遷移率が上がった:単に広告と中間LPの整合性が高かっただけかもしれない改善の正しい手順は「1.クリエイティブを見る」「2.仮説を立てる」「3.データを元に答え合わせする」「4.仮説に出てこなかった課題をデータから見つける」である。
7.KPIに対する認識を改める
■ECとしてのKPI
ECサイトとして目指すは「利益拡大」である。よって以下指標が重要である。
CV
1UUあたりの利益(LTV -獲得単価)
つまり、継続率や単価といった指標は、優先度として低い。
■利益を増やす方法1
1UUあたりの利益をそのままに、CVを増やす方法である。
広告出稿を増やす
効率を上げる(クリック率を上げる、CVRを上げる)
■利益を増やす方法2
1UUあたりの利益を増やす方法である。
LTVを上げる
1回購入の単価を上げる
クロスセルを増やす
継続率を上げる
解約率を下げる
獲得単価を下げる
入札単価を下げる
クリック率を上げる
CVRを上げる
■正確なLTVを測定する
多くの施策では、「リピーターが発生するので広告費を多くかける」という判断をしてしまい、赤字が回収できずとなっている。そういったことが発生しないように以下に気をつける。
1年間の売上を、顧客数で割るような単純な計算にしないこと。仮に12/31に購入した場合、算出期間が1日となってしまう。
「平均リピート率」「平均客単価」「平均解約率」等から算出する方法もNG。初回割引等の計算が必要になり複雑になってしまう。また、定期購入しないがリピート注文する方や、クロスセル分を反映できない。
初回注文時の広告媒体・LP・キャンペーンは保持しておく。なぜならユーザ層が違うから。また、広告媒体ごとに赤字になる媒体もあるはずであるため、それを把握することが重要である。
新商品等、LTVがわからない場合は既存のLTVを参考にする
■売上は最小に、利益は最大に
赤字の広告は止める。広告媒体(とにかく広告出稿してもらうと利益が出る)と、広告主(顧客獲得単価とLTVで利益が出る)とは利益相反となっている状況を理解する。
広告費の増加に対して、利益が最大化する部分で寸止めする。それ以上でもそれ以下でもダメ。
■ROAS(ロアス)に付いて理解する
ROASの式は以下である。
広告経由売上÷広告費×100(%)
例)売上3000円÷広告費300円=1000%
注意点もある。
他の広告と比較する用途に使う
ROASだけで利益は測ることができない
最適数値というものは無い(仮にサブスク商品ならば、100%未満でも良い)
広告投資が適正かどうかは、別の指標が必要である
おわりに
以下書籍を参考にさせていただきました。感謝申し上げます。
「ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法」
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