コール・オブ・デューティー:ノスタルジック・ウォーフェア
年末、ウィーンに行った。英語の発音はヴィエナである。おれがよくヴェネチアと間違えるヴィエナ。
ケルンとかウィーンとか広州とか、日本語と英語で全然都市名の呼び方が違うのは本当にカンベンしてほしいぞ!
正直、ウィーンと聞いて俺は何もイメージが浮かばなかったし、特に行きたいところもなかったので、ウィーンにある軍事博物館に行った(普通はシャレオツカフェとか交響楽団とか宮廷らしいのだが)。
オーストリアの軍隊と言われて、「ほほう!」とコーフンで眼鏡を白く曇らせて語るのは、ミリオタと歴史オタと宮崎駿ぐらいで、ほとんどの人はよくわからないと思うし、俺もうっすらと世界史で習った「普墺戦争」「サラエボ事件」というあたりで終わっているのだが、まあとにかく「竜騎兵」がメタクソかっこいいのである。
竜騎兵とは、Dragoonなのだが、今回の話はこっちではない。
簡単に言うと、竜騎兵=馬に乗って小銃持って戦う兵士である。軍装もけっこうきらびやかで、軍服と言うよりも”高貴”という言葉が似あうシロモノである。見てるとファンファーレが流れそうなの。これはモテる。
実際当時のオーストリアの軍装はセンスが良く、けっこう他国の軍隊がお手本とした上に、竜騎兵は当時のハクいナオンたちの憧れの的だったそうである。よく調べてないが、おそらく華やかな貴族文化とかの流れを汲んだんだろう。「ウィーンの伝統職人たちが1つ1つを丹念に仕上げました」とか、お茶の伊右衛門のCMのナレーションが流れてくる感じだぞ。
そんな姿で当時の最高スピードの乗り物に乗って突撃していく様は、きっとトップガンのトム・クルーズみたいな感じだったんだろうと思う。
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そんで、オーストリアは第二次大戦前ころにナチスドイツの統治下にはいるわけであり、結局このあたりに”いや、僕ら違います!”と嘘ついてもしゃあないわけで、ナチスドイツの展示をせにゃならんのである。
で、オーストリアも日本みたいに「いやーさっきの大戦は反省しますわ…」みたいなイメージを持っていたのだが、あんまりそんなことは無く、淡々と、本当に淡々していた。
軍事博物館はだいたい戦勝国がウェーイで展示している場合が多い。英国のウォータールーの戦いの展示のウキウキ具合は引くぞ!
そこには、当時の兵器とか服装とかが並んでいるのだが、さっきいった竜騎兵かっけえとか、そういう流れから見てくると、ナチスドイツの服装とか兵器というのは、えらい機能的で洗練されているのである。馬とか塹壕とかのWW1感はガチで過去になってる感はある。
もう俺は、昔っからハリウッド映画とかで「ナチスドイツは悪の軍団!」と叩きこまれているし、実際英国に住んで、いかにナチスドイツがタブーな存在なのかはわかっているつもりである。
よって、ナチス時代のドイツ軍には、正直言って俺には「過去の悪者アイコン」という印象しかなかったのだが、この博物館に来ると、歴史の流れ上でのドイツ軍装備というのがわかる。
過去からすると、めちゃくちゃ「最先端テクノロジーを駆使した軍隊」である。ザ・機動!とか、マシーン★スーパーパワー!みたいな。
だって、それまで甲冑とか三銃士みたいなのみて、竜騎兵めっちゃモダンだなー、うわWW1の塹壕ドロドロやん!と思ってからの突然のバージョンアップだぞ。
多分だが、当時の人から見たドイツ軍の恰好というのは、今だとこんな感じだったと思う。
それで思ったのは、日独伊三国同盟とか、そのへんの「枢軸国」というカテゴリーのせいで、俺はそれまで「悪は悪で組んじゃうZE」みたいな関係で日本が寄ってったと思ってたわけである。まあ教科書で習ったやつをメチャクチャに脳内翻訳しただけだが。
でも、たぶんそれとは別に、当時の日本人には「めっちゃドイツのテクノロジー、イケてね?」みたいな憧れがあったんじゃないのか。例えは悪いが、今のGoogleとかApple的な、ちょい意識高い系テクノロジーの感じで。
絶対今のSNSとかでの面倒くさい奴らは、当時の日本に居たら「ナチスドイツで学んだ10の成功法」とか「ここ帝都ベルリンから見ると、日本がいかに野蛮な国か…」とか変な記事を雑誌に書いてると思うぞ!
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そんなことを考えながら、第2次世界大戦コーナーを眺めてた中で、俺が一番展示で衝撃を受けたのはコレである。
Uボートとか88mm高射砲とか、プラモや映画で見たものの実際のやつをみてコーフンはしたのだが、正直いってこのクッションにはインパクトは負ける。
ナチスドイツの支持者というと、”なんかハンチング被った若いアンちゃんとかオッサンの群衆”というイメージだったのだが
「お、オカンアート...!オカンが!ナチスを!支持してたんか!」
と、これはすさまじい衝撃であった。
いや、頭ではわかっているつもりだったのだし、実際は映像で女性たちの支持しているのも何度か見ているはずなのだが、俺はわかっていなかった。たぶん脳内の”歴史過去ファンタジー”枠に入れてしまっていたのだろう。
俺はウェールズのオカンや、上海の路上のオカンたちを想像し、「オカンに国境は無いと思うのだが、そんなオカンすら魅了したナチス党とはなんやったんや」と考えるきっかけになった。
なにも戦争や軍事を考えるきっかけは、悲惨な死体の写真や、兵器だけではないんだなーとつくづく思ったシロモノである。
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俺はその博物館を出たあと、シャレオツな本場のウィーン式カフェ(実はカーディフにもあるんだよ!)でコーヒーをシバいた。
きっと軍事と言う言葉は、各国で印象も意味も色々違うのだろう。もろにその国の歴史のわけだから、英国とオーストリアもきっと違うし、日本と中国もずいぶん違うんだと思うぜ?
...とガラにもなく浅いながらも真剣に考えてしまい、脳への糖分が足りなくなった。でもデザートのメニューが全然読めなくて泣けた。
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