残雪

 ある冬の真夜中、俺は不思議な光に包まれ“全て”を理解した。その光は、宇宙の秘密や人生の意味、自分の存在や運命、そして愛する人の心まで、すべてを明らかにしてくれた。俺は、この世界に感謝し、自分の選択に満足し、幸せに満ちた涙を流した。しかし次の瞬間には、その光は消えてしまった。そして、俺はその“全て”を忘れてしまっていた。頭の中は真っ白になり、何が起こったのか、何を知ったのか、何を感じたのか、一切思い出せなかった。ただ一つ覚えているのは、全てを解ったとき俺は「生きよう」と思ったということ。それだけしか分からないけど、それだけで十分だ。何も分からないけど、俺は生きていく。

 俺は、目を覚ました。ベッドの横には、愛する人が眠っていた。彼女は、俺が見た光と同じ色の髪をしていた。俺は、彼女にそっとキスをして、起こさないように身を起こした。窓の外には、朝日が昇っていた。新しい一日が始まろうとしていた。俺は、昨夜のことを思い出そうとしたが、何も浮かばなかった。でも、それは構わなかった。俺は、自分の胸にある温かいものを感じた。それは、生きる意志だった。俺はため息をついた。そして、部屋を出て、新しい一日に向かって歩き出した。

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