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あした せかいは めつぼうするの?


これはある日の、よるのこと。

「おい、かぼちゃ、あした せかいは めつぼつするんだよ。」


おにいちゃんの おおかぼちゃ が、かぼちゃくんに みみうちしました。

「せかいが めつぼうって なんだよ!」


かぼちゃくんは、おにいちゃんに、ききかえしました。


「なんだもなにも、おれが めつぼうするっていったら、めつぼうするんだ。なにもかもぜーんぶ、なくなっちゃうんだよ。そうやって、テレビで いってたんだから。」


「あしたってあした?ほんとうにあした?」


「あしたは あした だろ。そんなこと わかんねえよ。あしたかもしれないし、あしたじゃないかもしれないけど、とにかく せかいは めつぼうするんだ!」



かぼちゃくんはこわくなって、おかあさんに なきつきました。


「おかあさん、ねえおかあさん、あした せかいは めつぼうするの?」


おかあさんは、うまれたばかりの こかぼちゃ のおせわで、てんてこまい。
さいきん ずっと、かぼちゃくんのはなしをきいてくれません。


「なに いってるの、かぼちゃ。そんなわけのわからないこと いってないで、ちょっとそこのタオルをとってちょうだい。」


「だって おにいちゃんが いったんだ。あした せかいは めつぼうするって。テレビで いってたんだって。あしたかもしれないし、あさってかもしれないし、わかんないけど、でも…」


そんなかぼちゃくんのこえをさえぎって、おかあさんは、おこります。


「いいから、かぼちゃ。はやくおふろに はいりなさい。おてつだいしてくれないなら、はやくおふろに はいって!おにいちゃんといっしょに、なかよくおふろにはいってよ!」


こうなってしまうと、かぼちゃくんはもうなにも、いえません。

こころがとってもさみしかったけれど、おかあさんをこれいじょうおこらせないように、かぼちゃくんは、しぶしぶ、おにいちゃんとおふろにはいったのでした。




つぎのひの、あさ。

さいきん、かぼちゃくんは、イライラします。
おかあさんは はなしをきいてくれないし、ちいさい こかぼちゃ は、ぎゃーぎゃーうるさいし、おにいちゃんは、こわいこと や えらそうなこと ばかりいって、いばっています。
そのくせ、うまれたばかりの こかぼちゃ には、ニコニコしちゃって、かぼちゃくんのことなんて、あいてにしません。


(なんだよ、なんだよ、みんなして、おれを ばかにして!なんにもおしえてくれないで、こわがらせてよろこんで、おれのことなんて ちっとも かんがえて ない!)


そんなとき、ふと、ほいくえんのブランコで、のんびりあそんでいるオニオンぼうやが、めにとびこんできました。


(いつものんびりしているあいつを、ちょっとおどろかせてやろう。)
(だって おれだけ こわいきもちなんて あんまりだ。)


かぼちゃくんは、これはとってもよいことをおもいついたぞ、とおもいました。



すなばに おおきなおやまをつくると、そのうえにしっかりたって、かぼちゃくんは、おおきなこえで いいました。

「せかいが めつぼうするぞ!」
「あした せかいが めつぼうする!」
「あした せかいが めつぼうするんだぞ!」


ブランコにのっているオニオンぼうやは、きょとん としています。


かぼちゃくんは、もっとイライラして、すなばのおやまをふんづけて、オニオンぼうやのもとに ちかづきました。


「あした!」

「せかいが!」

「めつぼうするんだぞ!」


びっくりしたオニオンぼうやはブランコをとびおりて、かぼちゃくんに、こうききます。


「せかいが めつぼうするって なあに?」


かぼちゃくんは、しめしめ、とおもいました。
これでこいつも、きっとこわいきもちになったに ちがいない。


かぼちゃくんは、ふんっ とおおきく はなをならして、


「おまえみたいな チビには おしえてやらない!」


といってやりました。


オニオンぼうやの、かなしそうなかおをみた かぼちゃくんは、むねがすかっとしました。
でも すかっとしたむねのどこかが、ずきっと いたみました。



ほいくえんからかえると、かぼちゃくんは、きょうのことをおもいだしていました。


(オニオンぼうや、ないてたな。)
(でも おれだけ こわくてしかたないなんて ずるいだろ。)
(だからこれでよかったんだ。あいつも こわいきもちに なればいい!)


かぼちゃくんは、じぶんのむねの、ずきっ に、きがつかないふりをしました。


そうしてまた、つぎのひの、あさ。

あいかわらず、せかいは めつぼう していません。
かぼちゃくんは、いったい いつ せかいが めつぼうするのか、きになってきになって、しかたありません。


「ねえおかあさん、せかいは めつぼうするの?」
「ねえおにいちゃん、せかいは めつぼうするの?」


ふたりになんども きいてみましたが、かえってくるのはいつもおなじ。


「そんなこといってないで、はやくしなさい!」
「そんなこと おれは しらねえよ。テレビでいってた、って いっただろ。」


かぼちゃくんはますますイライラして、ほいくえんのすなばのおやまを なんこもつくっては、こわして、またつくっては、こわして、を くりかえしていました。


するとそこに、オニオンぼうやが、やってきました。
かぼちゃくんのもとに、そっとちかづくと、オニオンぼうやは、こういいました。


「あのね、かぼちゃくん。」
「なんだよ!おれはいま いそがしいんだ!」
「あした せかいは めつぼうしないって。」


すなばのおやまをふんづけていた かぼちゃくんは、オニオンぼうやをにらみつけて、こう いいます。


「そんなの だれが しんじるか!おれのおにいちゃんが いったんだ。あした せかいは めつぼうするんだぞ!あしたかもしれないし、あさってかもしれないし、それはわからないけど、でも、とにかく、せかいは めつぼうするんだぞ!テレビでそうやって、いってたんだからな!」


オニオンぼうやは、かぼちゃくんを じぃっと みつめて、こういいました。


「うん。でもね、もし あした せかいが めつぼうするとしても、ぼくは、かぼちゃくんを、ぎゅーっとするよ。ぼくのおとうさんが、ぼくのことをずーっとぎゅーっとしてくれるって、いってくれたから、だから、ぼくは、かぼちゃくんのことを、ぎゅーっとするよ。」
「あした せかいは めつぼうしないけど、もし めつぼうしたとしても、ぼくのことを ぼくのおとうさんが さいごまでぎゅーってしてくれて、それで、おとうさんにぎゅーってされているぼくが、かぼちゃくんのことをぎゅーっとしたら、そうしたらきっと、こわくないでしょう?」



そういって、オニオンぼうやは、かぼちゃくんにむかって、てをさしだしました。


「だから もう こわくないよ。だいじょうぶ。」
「もう ひとりで こわいおもいしなくて、 だいじょうぶ。」



きがつくと、かぼちゃくんのむねは、ずきっ、ずきっといたみだしていました。
そのずきっ、ずきっ、は、もう むし できないくらい、おおきなおとになっていました。


「・・・・・きのうは、あんなふうにこわいこといって、ごめんね。」


かぼちゃくんは、オニオンぼうやに、あやまりました。
オニオンぼうやは、ニコッとわらって、


「うん。いいよ。」


と、ひとこと いいました。


そうしてそのあと、ちいさなオニオンぼうやは、おおきなかぼちゃくんのからだを、ぎゅーっと、だきしめました。



「ほら、こうすれば、もうだいじょうぶ。こうやってすれば、もうだいじょうぶなんだよ。」



かぼちゃくんは、オニオンぼうやにぎゅーっとされながら、ちいさなこえで、なきました。





着ぐるみさん、ありがとう!


投げ銭?みたいなことなのかな? お金をこの池になげると、わたしがちょっとおいしい牛乳を飲めます。ありがたーい