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Instagram創業者が作った新アプリ「Artifact」から見る、次世代SNSのあり方【Off Topic Ep168】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するPodcast『Off Topic』。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。

エピソード『#168』では「Instagram創業者が考えるAI時代のソーシャルアプリ」をテーマにトークが展開された。「久しぶりのソーシャルアプリ会」と草野も話していたが、2021年頃から“次世代SNSアプリ”が続々と表れている。そんな中で宮武が今、注目したいのがInstagramの共同創業者で、Metaに売却したケヴィン・シストロムとマイク・クリーガーが再び起業してリリースした『Artifact(アーティファクト)』だと言う。

Artifactはいかなる特徴を持ち、先行きを見据えているのだろうか?

「テキスト版TikTok」がやってきた

Artifactをこれまでのアプリの流れに置くならば、「ソーシャルニュースリーダー」といったところだろうか。The Vergeの解説によれば、Artifactを理解する最も簡単な方法は「テキスト版TikTok」であり、あるいは新たにモバイルアプリとして生まれ変わったGoogleリーダー、または「Twitterへの新たな挑戦者」と捉えることだと話している。

Artifactをダウンロードして開くと、ユーザー登録を求められることなく、興味のある10カテゴリーを選ぶ画面に移る。メンズファッションや政治などの様々な選択肢が提示され、すでに有料で購読しているニュースサイトがあれば、併せて登録できる。そうすると、選んだ興味範囲や購読サイトの内容が優先的に表示される仕組みだ。

INMA

Artifactの真骨頂はAIエンジンにある。このエンジンはユーザーが日々チェックするニュースを学習し、表示内容をカスタマイズする。ユーザーが関心を持つニュースが常に表示され、パーソナライズされたニュースフィードが提供される。また、今後はユーザーが友人との議論にもニュースを活用できるようにアップデートされていく予定だという。

大手メディアからニッチな話題まで、人気の記事がフィード形式で表示されていく。興味のある記事をタップすれば、Artifactのアルゴリズムが学習し、次なる記事やストーリーを提供する。このあたりが、「テキスト版TikTok」と表現される由縁だろう。

なぜ、Instagramの創業者がこのプロダクトを選択し、いかなる視点で制作を進めたのか。「二度目の起業」という経験がどのように思考を変え、期待値を変化させたのか。これらは「Artifactを作る上での重要な仮説だ」と宮武は言う。

まず、二度目の起業については、Metaへの売却金額をもとに、彼らは資金調達をせずにプロダクトをつくれたという「自由さ」を得たことが挙がる。さらに、初期のユーザー集めというのは、リリース初日に数十万人ともいわれる人がアプリを試用した事実からもわかるように、一般的に知名度のない起業家では困難なことだ。Artifactのプロダクト自体が、テック業界やビジネス業界の人々とも非常に相性が良かったのもプラスに働いただろう。

New York Times

そして、アプリの根幹にニュースを選んだ理由について、宮武は「ニュースが最も参入しやすいコンテンツだった」と話す。ニュースは日々、何かしらが作られるコンテンツである。Artifactのチームが生成しなくとも、基本的に毎日出てくる。また、ニュースは「テック」や「政治」などカテゴライズがしやすいため、マシンラーニングをさせる上でも「どのような顧客なのか」「どのようなものが好きなのか」といったことを判断するためのユーザープロフィールの作成が容易でもある。

TechCrunch

さらに、ニュース配信のパブリッシャーを適切に選べば、コンテンツについてはある程度の品質を保証することが可能であり、それがコンテンツモデレーションのリスクを削減する。

SNS業界における過去20年間の“最大の誤解”

ArtifactとInstagramには、初期の展開において類似点を見ることができる。すでにInstagramは一つのSNSとして認識されがちだが、その起源を振り返ると、初期のInstagramは「ユーザーが無料で使える写真フィルター」のアプリであり、ユーザーは加工した写真をカメラロールに保存せずに直接投稿できるというのが特異な機能の一つだった。

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