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YouTubeアルゴリズムをハックした人気ユーチューバー ミスタービーストの解説

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働き、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、コンテンツクリエイター・ツールの話や最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。

はじめに

Jimmy Donaldsonさん 、通称 MrBeastはここ数年でかなり人気で急成長しているYouTuberのひとり。13歳からスタートしたMrBeastは、実は色んな試行錯誤をして、ようやく今に至った。

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引用:Business Insider

まだ21歳のMr. Beastのチャンネル購読者数は3,850万人以上(2020年7月13日時点)。彼のYouTube登録者数の成長を見ると、すごいことになっているのが分かる。

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引用:Blake Robbins Substack

MrBeastは過去2年間の数字を見ると、毎月150万人以上の新規登録者を獲得できている。単純計算すると1日5万人の新規登録者数が入ってくると言うことになる。動画の合計再生回数は50億回で、2018年9月以降の動画は全て1,000万再生回数以上

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引用:MrBeast YouTube

彼の動画だと認識してなくても、FacebookやYouTubeで見た可能性はある。

MrBeastのすごいのは彼の動画構成、事業への再投資、やクリエイティブなアイデアがYouTubeのアルゴリズムにピッタリ合っていて、それを活用してトップクリエイターと人気になっている。さらに、今後のMrBeastのスケール方法やインパクトが見え始めた状況となった。MrBeastはもしかしたら初めてのソーシャルメディアが生んだビリオネア(約1,000億円の個人資産)になるかもしれない。

今回の記事ではMrBeastとはそもそも誰なのか、何故彼の動画がYouTubeにピッタリなのか、そして今後の彼のビジョンやクリエイターがどう今後変わっていくのかについて解説します。

Mr. Beastとは何者か?

MrBeastはノース・カロライナ州に生まれて、今もそこに住んでいる。Business Insiderによると、2012年2月に13歳だったMrBeastさんが初めてYouTube動画をアップ。最初の数年は彼なりにYouTube上でバズるコンテンツを作ろうとするが、基本的に失敗していた。

当時はトレンドだったマインクラフトやCall of Dutyのゲーム実況、他のクリエイターへYouTuberになるためのティップスなどを紹介しており、初期の動画では、ほとんどMrBeast自身が動画出演はしなかった。

初期は全くマネタイズが出来ず、1日$1しかもらってなかったと言う。MrBeastがようやくフォロワーが増え始めたのは2015年〜2016年。彼が「Worst Intros(最低のオープニング)」というYouTuberの動画オープニングをバカにするシリーズを始めた。この「Worst Intros」シリーズをやり続けて、2016年半ばには3万人の登録者を達成。

MrBeastは子供の時からYouTuberになるのが夢で、大学に入った2週間後に中退。そして、2017年1月にMrBeastが公開した動画が彼の新しい動画フォーマットのきっかけとなった。それが"Junklord"コンテンツだった。

無駄を極めたコンテンツでさらにヒット

Junklordコンテンツとは、名前の通り「くず・無駄」なコンテンツのこと。ためになるコンテンツではなく、単純に無駄な実験などを行う動画がここ数年ですごく人気になっているので、Junklordコンテンツを作るYouTuber・TikTokerなどが増えている。

例えば、この動画「Pouring Liquid Nitrogen on Every iPhone(iPhoneに液体窒素をかけたらどうなる?)」。

動画のタイトルと映像通り、これをやる意味はない。ただ、面白く、バズりそうな動画と言うのは分かる。実際何が起こったのかを見たくなってしまう。もちろんこのようなただ時間の無駄の動画もあれば、最近コロナで少し批判を浴びた動画もある。

MrBeastのJunklordコンテンツ
このJunklordコンテンツを2017年1月からMrBeastは始めていた。彼が最初のバイラル化した動画は1から10万まで数える動画をアップした時。

24時間の動画だが、それはただAdobeでの最大編集可能時間が24時間だったから。実際は44時間かかったと言っている。

YouTubeが好むコンテンツが分かったMrBeastはそれ以外に一時期流行ったハンドスピナーを24時間回す動画や、Jake Paulさんの「It's Everyday Bro」のミュージックビデオを10時間連続で見続ける動画など、似たような長時間コンテンツを出し続け、2017年11月には100万人の登録者数を達成。辞書を全部読み切る動画まであげている。

そして、このJunklordコンテンツに大量のお金を加えることによって、新たな進化をもたらした。

大金を人にあげるリアクション動画とチャレンジ動画

2017年中旬にMrBeastはデジタルアイテム収集マーケットプレイスQuiddからのスポンサー金で$10K(約107万円)をもらった。普通のYouTuberであれば、スポンサー金は重要な収入源なので、一部自分のため、一部は面白い動画制作用に使うが、MrBeastは違った。その$10Kを全てホームレスの人にあげることにして、その動画を撮ってYouTubeにアップした。

一番最初のスポンサー動画で今現在830万再生回数あるのはすごいし、未だに見返す人たちがいる。一気にバズったMrBeastにQuiddがまたまた$10Kを渡して、$1,000ずつホームレスの人たちに渡した。バズり続けたので、今度はTwitch配信者に$10Kをあげたり、ピザ屋にチップとして$10Kを渡す動画も上げた。ピザ屋の動画はなんと2,000万再生回数を突破。

ここからMrBeastの急成長が始まる(2018年)。そこからスポンサーからの大金を一切に自分の収入として貰わず、そのまま使って色んな人にお金を出し始めた。そして、MrBeastはJunklordコンテンツと大金を使う動画を組み合わせて、色んなチャレンジ動画をやり始めた。

この組み合わせの最初の動画は世界で最も長距離のUberトリップだった。

それ以外に10万枚の紙は銃弾を止められるかを検証する動画、風船をいくら膨らませれば宙に浮かぶのかなどをアップロード。その中でも大量のペニー(いわゆる1円玉)だけを集めて車を買う動画は面白かった。

MrBeastはTwitch配信者にお金をあげる動画などをやり続けて、どんどん人気が上がった。ちょうど急成長していたFortniteプレーヤーで人気ストリーマーのNinjaにも$30K(約321万円)をあげていた。

そして、300万人目のYouTubeチャンネル登録者には、MrBeastらしく、1円玉を300万個集めてプレゼントした。MrBeastによると、銀行に電話しても大量の1円玉が本当に欲しかったのを信じてくれなくて、eBayなどで大量に買い、そして配送コストなどを含めると$45K(約482万円)使ったとのこと。

MrBeastのすごいところはスポンサーからのお金を自分に使わず、自分のチャンネルに再投資する形で面白い動画を作ってきたこと。ちなみに1月から6月末までの半年で$10M(約10.7億円)を動画で使っているとのこと。

MrBeastのツイートに記載してある通り、彼はもらったお金を全てコンテンツへ再投資するのが最も成長に繋がると理解している。短期的なお金儲けではなく、大きなビジョン・長期的なことを常に考えている。

友達も参加するチャレンジ動画へ進化

2018年10月にMrBeast史上でも人気トップに近い動画「Last to Leave Circle Wins $10,000 - Challenge」(円の中に最後まで残った人が100万円もらえるチャレンジ)をアップロードした。

6,000万再生回数を突破した一部の理由は、MrBeastが新しい要素を動画の中に取り組んだから。それは友達がコンテンツに参加したこと。友達が入ることによって、今までのチャレンジ動画をスケール出来るようになった。MrBeastはここから「最後まで残れば何かがもらえる」チャレンジ集をかなり作った。

ランボルギーニに最後まで触れている人がもらえるチャレンジ
スライムプールに最後まで残っている人が200万円もらえるチャレンジ
家に最後まで触れている人がもらえるチャレンジ
テスラに最後まで触れている人がもらえるチャレンジ
回転ドアの中に最後まで残っている人が500万円もらえるチャレンジ
ジェットコースターに最後まで残った人が200万円もらえるチャレンジ
キャッシュが入っているプールに最後まで残った人が200万円もらえるチャレンジ
ラーメンが入っているプールに最後まで残った人が200万円もらえるチャレンジ
船に最後まで触れている人がもらえるチャレンジ
最後までぶら下がった人が1億円もらえるチャレンジ
1億円のキャッシュに最後まで触れている人がもらえるチャレンジ
ランボルギーニのレースで勝った人がもらえるチャレンジ

同じ人たちが繰り返しで動画に出ることによって、彼らのバックストーリーを理解して、より親近感が湧くようになる。

そしてもちろん友達を使ったチャレンジ動画以外のコンテンツもアップロードしているが、上記に記載している動画の面白いところは似たコンセプトの動画が多いものの、毎回ちゃんとテーマを変えている。この動画フォーマットがYouTubeのアルゴリズムに最もフィットする「Jenga Formula」(ジェンガ方式)を使っていることが重要。

ジェンガ方式とYouTubeの相性

ジェンガ方式とはあるストーリーテリングの方法で、ゲームの「ジェンガ」と似ているためこの名前を付けられている。ジェンガは結果(タワーがバランスを崩して倒れる)が分かっているのに、プレーし始めるとだんだん緊張感が高まるゲーム。パーツを一つずつ抜き取ると、タワーのバランスが弱くなり、「いつ崩れる」のが見たくなる。ジェンガ方式の動画も同じく、結果が知っていても、最後まで見たくなるコンテンツ。

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引用:Turbo Squid

MrBeastはこのジェンガ方式を完璧に使えているYouTuber。例えば先ほど紹介した「ランボルギーニに最後まで触れている人がもらえるチャレンジ」。

誰かが絶対ランボルギーニをもらえると言う結果はもう分かっているが、それまでの肯定を見たくなる。このように、時間がすぎると動画の見る価値が上がる。

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引用:Blake Robbins Substack

有名YouTuberのLogan Paulさんも、このジェンガ方式について語っている

「YouTubeでジェンガ方式を上手く活用できた人が勝つ。圧倒的に勝つだろう。」Logan Paul

これが何故重要で、YouTubeとの相性が良いのかと言うと、YouTubeのアルゴリズムを理解しなければいけない。初期YouTubeは再生回数が最も重要なKPIだったので、動画タイトル名とサムネイル画像が非常に重要だった。2012年にYouTubeがアルゴリズムを変更して、動画の再生時間に比重を高めた。そして、2016年のアルゴリズム変更ではこの再生時間がより重要視された。何が起きたかと言うと、一本のYouTube動画が毎回スタートから終わりまで見られた場合、その動画がよりレコメンド・オススメ動画として上がりやすくなった。

それを考えると、MrBeastの動画、いわゆるジェンガ方式の動画はまさにYouTubeのアルゴリズムに合う。

同じようなフォーマットを色んなYouTuberやセレブがコピーし始めている。例えば、YouTube番組「Hot Ones」はセレブに辛いものを食べさせながらインタビューして、徐々に辛さレベルを上げるコンテンツ。MrBeastと同じく、辛いものを食べると知っているが、セレブのリアクションを見たくなるのがポイント。

それ以外にコメディアンで深夜トークショーのホストであるJames Cordenさんが番組のライターに人気番組のGame of Thronesを一気に見るように命じて、それを動画コンテンツとしてアップロード。

今後も、このようなジェンガ式コンテンツフォーマットが増えていくようになりそう。

動画フォーマットだけではなく、サムネイルもタイトルもちゃんと考えている

MrBeastの動画の素晴らしいところはクリックベイト的なコンテンツに見えるだけではなく、実際に動画のタイトル通りのことをやっていること!結果をストレートに語る動画はジェンガ方式だから出来ること。他の動画であればタイトルでネタバレしているのと同じこと。

そしてサムネイルの使い方が素晴らしい。そもそもYouTubeトラフィックの半分以上はスマホから来ていると言われている中、小さいサムネイルで明確に動画の内容を伝えなければいけない。さらに他のYouTuberとは比較してそこまで編集されてない画像を使っているのも、よりリアルな動画と言うことを見せたいため。

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引用:MrBeast YouTube

そしてMrBeastは毎週2〜3回しか投稿していないのも戦略的な判断。大体新しくリリースした動画は、2〜3日前に公開した動画より見られるので、頻繁に投稿してしまうと、過去に投稿した動画が見られなくなる可能性がある。CTRを気にしているMrBeastからすると2〜3日のペースが最も効果的のが分かった。

YouTuberで最も大きな慈善家

YouTube上だと、炎上しそうなコンテンツやネガティブなコンテンツの方がクリックを取りやすいが、MrBeastはその逆でポジティブなコンテンツを出し続けることによってバズっている。MrBeastの多くのインタビューを見た結果、彼はこのYouTubeチャンネルを使って過去になかった慈善家になりたいと考えていることが明らか。

例えば、MrBeastなりに考えた慈善的コンテンツはこちら:

動画では2,000万本の木を植えるプロジェクト。これがまさにMrBeast式の慈善的動画。これはMrBeastが2,000万人のYouTube登録者を記念して初めて、2,000万本の木を集めると同時に、$20M(約21.4億円)の寄附金を集めたいと発表した。2019年10月に初めて、寄附金は2020年1月までに集めたいと発表して、MrBeast自身が最初の$100Kを寄付した。プロジェクトを始めた数週間後には、Elon Musk、Tobi Lutke、Marc Benioff、Jack Dorseyなどの著名人も寄付してくれて、期日前に無事$20M集められた。

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引用:Blake Robbins Substack

そもそも、彼がホームレスの人に$10Kを渡してバズったのもあって、MrBeastはこの慈善活動をやり続けている。MrBeastのスポンサー金を再投資して魅力的なコンテンツを作る仕組みと慈善活動を組み合わせると、MrBeastのモデルが出来る。

MrBeastモデルでは、スポンサーからお金を集めて、それを使ってジェンガ式のコンテンツ(最後まで見る動画)を考え、それに慈善的な要素を組み込むモデル。結果として、バズるコンテンツを作ると同時に、慈善活動をしているため、ブランド側もかなりよく見えて、それを見た他のブランドがまたMrBeastとコラボをしたくなる。エンゲージメントと再生回数が多いため、YouTubeのAdSenseからも結局マネタイズは出来るし、登録者数が3,850万人もいるので、グッズ販売だけでもかなり儲かるはず。

SNS解析サービスのSocial Bladesによると、MrBeastはAdSenseだけで毎月1,000万円〜1.5億円以上もらっていると予測している。

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引用:Social Blades

グッズ販売も自社のオンラインサイトAmazonなどで売っている。さらに、コミュニティードリブンで「YouTuber用のFunko」と呼ばれている、急成長中のカスタムフィギュアスタートアップのYouToozとコラボ商品も作っている。

MrBeastは自分自身のプラットフォームを使って、もっと慈善活動をしたいと語っている。彼の目標は多くのホームレス用のシェルターやフードバンクを作りたいとのこと。実は、もうすぐに一つ目のフードバンクをローンチするところで、ホームレスのシェルターのローンチも既に検討し始めている。しかし、彼はそれ以上のことを思っている。いつかはスポンサーなどを集めて、アフリカで飢餓問題を一気に解決したいと、膨大なプロジェクトも考えている。

チャリティー、家族、そして友達にお金を渡して面白いコンテンツを作りながら世界をより良いところにしようとしているのは、素晴らしいクリエイターとしか言えない。

高いクオリティーの動画を保つ長期的考え

クリエイターとしては動画制作に使うお金はコストなので、少し微妙なコンテンツでも投稿をして多少儲かるようにしてもおかしくない。MrBeastは完全にコンテンツの良いものしか出さないことを徹底している。2020年4月に過去に公開しなかった動画のリアクション動画をアップ。

この動画で明かしたのは、動画内で見せた公開しなかったコンテンツの制作費用は4,000万円以上かかったこと。それを投稿しなかった理由は、コンテンツのクオリティー担保のためだと。常にオーディエンス側の立場として「面白いか?面白くないか?」を考えていて、今動画を投稿して多少儲かっても、長期的には悪影響になると理解しているからこそ、4,000万と言う多大なるコストを自己負担出来る。

実際にMrBeastは毎日12時間〜15時間ぐらい仕事をしている。

「普通のYouTuberが1時間かけて動画のアイデアを考えて、5時間の撮影時間かけたら、私は10時間かけて動画のアイデアを考えて、数日かけて撮影をしたい。」MrBeast

この高いクオリティーのコンテンツを作り続けたからこそオーディエンスがついて、そして直近にはMrBeastは自分のプラットフォームを圧倒的にスケールさせる方法を試し始めている。そのひとつが「Finger on the App」。

リリースから2日で140万DL 「Finger on the App」

Finger on the Appとは、MrBeastがMSCHFと言う特殊なコラボに特化しているスタートアップと共同開発したゲーム。MSCHF自体も面白い会社なので、また別途記事で解説しますが、ゲームを簡単に説明すると、アプリに表示される画面を長く触り続けた人に最大$20K(約215万円)をもらえるという、シンプルでMrBeastらしいコンセプトのゲーム。

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引用:Apple App Store

不正(指をスマホにテープで固めるなど)を防ぐために、途中でプレーヤーが指を動き回さないといけないようにアプリを設定していた。

リリースしてから48時間以内には140万ダウンロード、6月30日にゲームがスタートしたときには100万人以上が同時アクセスした。アプリ画面に常に指を付けなければいけないので、アプリの通知や電話がかかった人はアウトとなる。多くの人は自分たちの様子をTwitchなどでライブ配信してたおかげで、「Z Ree」と言うユーザー名の方が自分の名前が「Siri」に似ていることを利用して、色んなプレーヤーを負けさせていた。

そして3日間続いたタイミングでMrBeastが動き始めた。11人残っているタイミングで、Twitchでライブ配信していてまだ残っていた人に「今指を離したら$5,000あげる」と言って、その人はリタイアした。

ただ意外にも人が残ったため、7月3日に残っていた4人の体力に諦めて、MrBeastは全員を勝者として名付け、全員に$20Kを支払うことを決めた。

6月22日にリリースされてからゲームが終わった7月3日の13日間のアプリ実績を見ると、そのうち7日間はアメリカでのゲーム部門では1位、そしてアメリカ全体でも5日間1位の座を獲得できている。

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引用:App Annie

そして、MrBeastはインタビューで次のFinger on the Appコンテストは数ヶ月後にやると宣言しているが、その前に不正防止機能を一から考えたいと言っている。

Finger on the Appのスケールとマネタイズ
MrBeastは今回のFinger on the Appコンテストでは、全くマネタイズをしていない。そのため、アプリ開発費用などを含めて、数千万円の赤字となっている。ただ、このアプリのポテンシャルを考えると、今後もっと伸びてMrBeastとしては新しいマネタイズモデルをもたらす可能性がある。

まずはスケールの話。今回のアプリはiOSのみでアメリカ限定のアプリだった。MrBeastが言うには、アメリカユーザーは彼のオーディエンスの25%でしかないため、次にアンドロイドで全世界に広げると500万人から1,000万人がプレーする可能性があるかもしれない。人気のトリビアゲームショーのHQ Triviaでさえ最大同時アクセス人数は240万人しか至らなかったので、Finger on the Appはその2倍から4倍の数字にすぐにいくかもしれない。

今後どう言う形でFinger on the Appをマネタイズするかは気になるが、幾つか方法はあると思われる。まず簡単なのは参加するためにお金を取ること。MrBeastの今までの動きを見るとやらなそうだが、やってもみんな$1を入れて、最後まで残った人がその合計額をもらえるようにしてもおかしくない。次に分かりやすいマネタイズ方法はライフ。初回では一回でも指を離すとアウトだが、例えばお金を払えば3回まで生き残れるオプションをつけるのも想像はできる(実際にHQ Triviaもそう言った機能は存在する)。Finger on the Appはその機能を準備しているのか、リリース時点で既に「Extra Lives」と言う表示がある。

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引用:Apple App Store

次のマネタイズポイントは不正防止のために不定期に出てくる丸に指を動かすのをスポンサー企業のロゴやメッセージに変えること。ただ、MrBeastが不正防止機能を考え直しているため、実際に広告として使えるのかは不明。

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引用:YouTube

最後のマネタイズポイントは途中で動画広告を入れること。ユーザーにとって休憩が出来て、ブランドからすると多くのユーザーから広告が見られる。

この中で一つでも行うとMrBeastの数千万円の初期投資分の売上は戻ってくる。そして、MrBeastからするとFinger on the AppはYouTube以外のtop of the funnel、いわゆる認知獲得チャネルになる。Finger on the AppはバズってWashington Post、Forbes、The Verge、TechCrunch、Mashable、Gizmodo、Hollywood Reporterなど著名なメディアが取り上げている。MrBeastが知らない人にリーチ出来ていて、このアプリからMrBeastのコンテンツへ誘導できれば、YouTube登録者を増やす新たなツールになるかもしれない。

さらに今後はFinger on the App以外のアプリもリリースすることも考えられる。高い賞金を設定して他のゲームフォーマットを試すことも出来る。MrBeastがアプリ開発して彼なりのコンテンツを一般化させられたのは、今後MrBeastのスケールの可能性を感じさせられる。その可能性を感じて、複数人も仰っているが、私自身も言えるのは、今現在どのYouTuberが億万長者(Billionaire)に最も近いかと聞かれると、MrBeastを選ぶと思う。

本当にMrBeastは億万長者になれるのか?

結論から言うと、なれると思うが、まだ道のりは長い気がする。彼はエンゲージメントの高い人間の心理・行動を試すようなコンテンツを出し続けながら、自分の事業に常に収益を再投資している。以前記事で解説したDavid Dobrikはグッズ販売だけで$9.6M(約10.2億円)の売上があると言われている。MrBeastはDavid Dobrik以上の登録者数がいて、Finger on the Appのスケールを考えると、ありえない話ではない。実際に計算すると、このような形になると思っている。

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ここで分からないのは、AdSenseで引用したSocial Bladeが果たして正しいのかと言うこと。こちらは月間の推定売上額を出してくれるが、AdSenseだけなのか記載がない。ただ、Finger on the Appの広告も無しで考えても、マックス$90M以上の年間売上が見えてくる。これでアプリが複数増えたり、自社のクリエイター学校などを作ると、より売上が上がる可能性がある。

今現在MrBeastは複数のオフィスを立てていて、色んなクリエイターを囲いたいと言っていて、最終的には数百YouTubeチャンネルを運営したとのこと。

YouTuberで億万長者になると数年前に言っても、笑われるだけだった。でもそれがようやく見え始めた時代に入ってきた。MrBeastのスキルセットとクリエイティビティーを持つと今までYouTuberやセレブではありえなかったことをやっている。まだ公開されてないが、今現在MrBeastは$10M使って島を買った。そしてそこに友達を連れて行って、その島、そして島にある10個の家を何かしらのチャレンジでプレゼントする予定。このようなことは大予算があるテレビ番組でも出来ないこと。

この記事を書いている時にMrBeastは$1Mかけて動画を作ったとも言っている。

このようにクリエイターが圧倒的に力を持つ時代に入り始めて、今ではクリエイターがブランドとなっている。インフルエンサーを使いたがっている会社としてはMrBeastを最大限活用して、自分の認知を広げるのが良い気がする。SeatGeekがDavid Dobrikとしたように、MrBeastを今からでもスポンサーするとかなり面白い結果が生まれる気がする。MrBeast自身もまだコラボ先を探している。

数億円の予算をクリエイターに渡して、何をやるか分からないと言うのは怖いかもしれないが、恐らくMrBeastのアイデアの方がどのクリエイティブスタジオや代理店よりも面白い自信はある。そしてどのマーケティングチャネルと同じように、まだ数億単位でパートナー出来るのであれば、今のうちに活用するのが良い。

MrBeastはそれだけの影響力を持っている存在。少なくとも、大量のアテンションを囲い込めているインフルエンサーではある。今後YouTuberとして、慈善家として、そして起業家としてどう言うコンテンツを作るのか、どう言うコラボをするのか、どう自分のブランドをスケールさせるのかが楽しみでしかない。

ポッドキャストもおすすめです

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Written by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikirepo)

引用

https://www.forbes.com/sites/masonsands/2020/01/23/waste-has-become-an-industry-on-youtube/#69a2360011dd
https://scalelab.com/en/blog/mrbeasts-secrets-to-success
https://www.businessinsider.com/mrbeast-youtube-jimmy-donaldson-net-worth-life-career-challenges-teamtrees-2019-11#mrbeast-also-puts-on-attention-grabbing-donation-and-charity-stunts-he-once-opened-up-a-car-dealership-where-he-gave-out-cars-for-free-and-is-known-to-dole-out-thousands-of-dollars-to-small-streamers-on-twitch-and-youtube-as-well-as-to-waitresses-and-uber-drivers-in-person-10
https://blake.substack.com/p/who-is-mrbeast
https://www.dexerto.com/entertainment/mrbeast-reveals-went-from-1-a-day-to-millions-casey-niestat-interview-497790
https://medium.com/better-marketing/viral-positivity-marketing-lessons-from-mr-beasts-meteoric-rise-to-fame-970936cacdce
https://www.tubefilter.com/2019/09/25/every-single-video-mrbeast-has-made-in-the-past-year-got-more-than-10-million-views/
https://www.theverge.com/2018/12/28/18157845/mrbeast-youtube-donations-adsense-brand-deals
https://youtu.be/9-HphHIJS9c
https://youtu.be/UE6UkF9sABU
https://socialnewsify.com/where-does-mrbeast-get-his-money-from/
https://www.youtube.com/watch?v=c5mAdStj52c
https://naibuzz.com/much-money-mrbeast-makes-youtube-net-worth/#:~:text=MrBeast%20is%20an%20American%20YouTuber,net%20worth%20of%20%2418%20million.
https://getnews.jp/archives/2621057
https://www.arilewis.com/aris-posts/want-25000-put-your-finger-on-your-phone-and-waitnbsp
https://www.theverge.com/2020/7/3/21312701/mrbeast-finger-app-competition-stream-winner-final-four-prize-youtube-mschf
https://www.youtube.com/watch?v=oopD9FX7a_c

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