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時間を超えるヘリテージとリファレンスカルチャー【Off Topic Ep189】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するPodcast「Off Topic」。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。

今回は「#189 〇〇」から、時間を超えるヘリテージとリファレンスカルチャーについて。リテール業界のニュースレターを発信する「2PM」の創業者であり著者のウェブ・スミスが、かつてラルフ・ローレンと会話したときのこと。ブランドづくりの秘訣を訊くウェブ・スミスに彼が語ったのは、「時の流れを遅らせること」だったという。さて、ここにはどのような含意があるのか。宮武は、そんな疑問を抱いたことをきっかけに、ブランドを構築していくうえで重要な、会社やプロダクトの「時間」との関わり方について思いを馳せていく。


人類の歴史は退屈?

科学技術から社会問題、自己啓発まで、幅広いトピックについて取り扱う人気ブログ「WAIT BUT WHY」の著者で作家のティム・アーバンによる新著『​​What's Our Problem?: A Self-Help Book for Societies』。その冒頭で、ティムは人類の歴史と時間軸についての考えを、人類の歴史を1000ページにまとめた1冊の本に喩えて表現している。ホモ・サピエンスが誕生したとされる約20〜30万年前からはじまり、1ページ約250年程度とすると、農業革命が起こったとされるのが950ページあたりになる。現存する人類最古の記録が976ページから。キリスト教の誕生が記されるのは993ページで、1770年ごろからはじまったアメリカの歴史も、産業革命からの人類の歩みも、一番最後の1000ページ目におさまる程度。我々が知っている近現代は最後の1000ページの1ページ分にも満たないと記している。

What's Our Problem?: A Self-Help Book for Societies

また、仮にそれを地球外生命体が人類を学ぶために読んだとしたら、彼らにとって非常に退屈なものになるであろうとも。テクノロジーに関していえば、ホモサピエンス誕生からベッドが生まれるまでに10万年、弓矢が生まれるまでにそこからさらに4万年、楽器はさらに1.7万年、農業革命は加えて3.3万年もの時間を要する。技術的にも、人類の暮らし方としても、残りの数ページまでその変化は非常にゆるやかで、この本のように非常に大局的な見方によっては、世の中や社会というものがほとんど変わらないのだ。
そして最後の1ページ目でようやく、人類は急激な変化の時期を迎える。10億人程度であった世界の人口は約80億人にまで膨れ上がり、移動手段は徒歩や馬、ボートから車、飛行機、ロケットが生まれた。コミュニケーション方法も会話から手紙、電話、メール、ビデオ会議へと発達。メディアも本、新聞、ラジオ、テレビ、そしてYouTubeやSNSと、社会や生活のありようが異常な変化をみせている。

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