見出し画像

【 ボール持ってる時の考え方、師匠とは全然違うじゃないですか!! 】 ~ ドイツ在住指導者に、ナーゲルスマンについて聞いてみた ~

━━━━━━ 140字じゃ語れないことがある

そんな思いを持っている方々の、それでも140字に詰め込んだ思いや感情、価値観を深掘る企画「140字じゃ語れないことがある」。

ドイツ2部『TSG WIESECK』のU19のアシスタントコーチとしてご活躍されている大島 正寛(オオシマ マサヒロ)さんをお招きし、前回は「ラングニックの哲学」について触り部分をお話しいただきました。

▼前編↓↓

後編は、ラングニックの話から繋がり「ナーゲルスマン」についてもお話しいただき、「哲学の違い」について興味深い学びを得ることができました!


それではどうぞ!!

スクリーンショット 2021-09-02 18.49.20

※インタビュアー:大矢 峻(オオヤ タカシ) / OFF THE PITCH Staff
※インタビュー日:2021年8月7日(土)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 ラングニックとナーゲルスマンの明確な “違い”  】


◎大矢:
前編ではラングニックについてお話しいただきました。
僕自身気になるのが、ラングニックを師匠としているユリアン・ナーゲルスマン(以下:ナーゲルスマン)についてです。
ナーゲルスマンは、ここ最近ボールを持って主体的に攻撃をしていく試合が多い印象です。これは、ラングニックが率いたチームとは異なり、チームが抱える選手が十分にタレントのある選手になっていったからなのでしょうか?


◉大島さん:
これはですね、ナーゲルスマンになるとまた違いまして……(頭ポリポリ)


◎大矢:
おおっ?違うんですか!?

スクリーンショット 2021-09-02 18.51.47

◉大島さん:
これが違うんですよ・・・

◎大矢:
笑笑

※両者:
(気を取り直しましょう。笑


◉大島さん:

サッカーの局面は、「ボールを持っているとき(保持)」「ボールを持っていないとき(非保持)」の大きく二つに分けることができます。


◎大矢:
様々な分け方ができる中で、その二つに分けることもありますね。


◉大島さん:
そして、どんなサッカーのスタイルであれ「ボールを持っているとき(保持)」というのは存在しますよね。
「ボールを持っているとき(保持)」に、以下のように違いがあります。

ラングニックは、少しボールを動かしつつ、奪われた時にリスクのない形で攻撃しようと考えました。
また、ボール保持時に、ボール非保持に行った強度あるプレッシングからの回復の要素もあります。

それに対してナーゲルスマンは「幅を広くとって効果的に攻撃を行おう」と考えたんです。


◎大矢:
ボールを保持している時の考え方に違いがあるんですね。
もう少し詳しく教えてもらえますか?


◉大島さん:
ラングニックは、ボールを持っているときに「相手の選手間のギャップを通す(ラインを突破する)パス」を一つの目標にしています。
そのために、ボールをサイドに少し動かして相手をずらすということを行うのです。
一方でナーゲルスマンは、「ワンサイドに相手を“ロックオン“し、狭いスペースをコンビネーションで突破していく、またはそこからの逆サイド展開で1 vs 1、または数的優位を生み出すこと」を考えています。


◎大矢:
そういう違いがあるんですね。


◉大島さん:
ナーゲルスマンの掲げるサッカーでは「攻撃時に幅を目一杯取る必要がある」のに対して、ラングニックは幅を取って攻撃はしません。

「幅を取る」
ということは、ボールを失った際に相手に広大なスペースを与えることになり、カウンターアタックを喰らう可能性が高まります。

逆に「幅を取らない」ということは、比較的中央に人が密集している状態のためボールを失ってもすぐにボールを奪い返すことができ、相手のゴールに近い位置で攻撃を始めることができるのです。


◎大矢:
師弟であるものの、考え方には大きな違いがあるんですね。
めちゃくちゃおもしろいです!


【 “ボールを奪う力” の弱い日本の選手たち 】


◎大矢:
そもそも大島さんは、今回どうしてこのようなツイートをしようと思ったのでしょうか?
ここからは、あのツイートをした想いについてお聞きしたいです。

▼ツイート↓↓


◉大島さん:
ドイツで3シーズンの間、TSGWieseck U17のアシスタントコーチをしていました。
当時のそのチームの監督のサッカーが、ラングニックのサッカーに非常に近いものだったんですね。(本人はそうは言っていませんでしたが…笑)

彼のチームで多くを学ぶ中で、動画内でラングニックも言っていた「過度なプレッシング」「コンパクトさ」「数的優位での守備」というものが非常に重要だと、僕自身も考えるようになりました。

そんな中で、一時帰国中にサッカースクールをやる機会があり、日本の子どもたちが「ボールを奪う」ということに対して大きな弱みがあると感じました。
プレッシングにはいくけどボールの前で止まってしまうことや、数的優位でボールホルダーに襲い掛かればボールを奪える場面でもマンツーマンで守備をし続けるためにボールを奪えない、といったことが多々あったんです。


◎大矢:
なるほど。


◉大島さん:
「“ボールを奪う力” を身につけてほしい。」
「“ボールを奪う力” を育まないと日本サッカーは変わらない。」
日本で子どもたちを指導する中で、このように思うようになりました。

「ドイツで学びを続けながらどうにかしてこれを伝えられないか?」と考えた時に、すごくいい教材(ラングニックが話をした特別番組)があったので、それを日本で活躍する指導者の方に広めることによって、日本の指導者が「ボールを奪う」ということに関して考えるキッカケを与えたかったという思いがあります。

スクリーンショット 2021-09-02 18.49.20


◎大矢:
そんな背景があったんですね。


◉大島さん:
日本では、「ゴールを守る守備」「抜かれない守備」というのはよくできる選手が多い印象ですが、「ボールを奪う守備」「カウンターに繋げられるようなアグレッシブな守備」というのはできる選手が少ないなという印象があります。
また、ドイツに来ている日本人選手のプレーを見ても、ヨーロッパの選手に比べて動きのインテンシティがなく、アグレッジブルさが足りないと思いますし、ドイツ人の監督も同じような意見を持っていました。

以前、酒井高徳選手のインタビューが話題になりましたよね。
「日本のやっているサッカーとヨーロッパでやっているサッカーが違う。」という趣旨のものでしたが、僕もこれには同意見です。
もちろん「どっちが良い/悪い」という話ではありませんが、「そもそもサッカーが違うよね」ということは、僕自身もドイツで過ごす中で強く感じています。


◎大矢:
その「そもそもサッカーが違う」ということが、大きな差を生んでいるのかもしれませんね・・・
大島さんは、今回のように日本の指導者に向けて発信されている中で、今後どのようなVisionがあるのでしょうか?


◉大島さん:
僕個人の想いとして、「母国である日本がW杯で優勝してほしい」というのが明確にあります。
しかし、それを達成するためにはどうしてもヨーロッパのサッカーに近づいていく必要があると思っています。世界と戦うとなった時には、やはり今日お話しさせてもらったプレッシングの強度やコンパクトさというのは必ず必要になります。
そのような想いから、今回このような動画を作りツイートをしました。


◎大矢:
大島さんのツイートの中に「このツイートが10万回再生された頃には〜」とあるように、高いレベルでプレーがしたいと願う選手を導くためには、指導者が積極的に新しいアイデアや基準を学んでいくことが大切だと思っています。
今回のツイートから、日本とドイツの基準の違いに気付かされた指導者の方々も多いのではないでしょうか?

大島さん、ありがとうございました!
引き続き、日本サッカーの強化や育成環境をより良くするべく、共に精進できればと思います!


◉大島さん:
こちらこそありがとうございました!
またよろしくお願いします!!

スクリーンショット 2021-09-02 18.57.01

※大島さん、ありがとうございました!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ラングニックとナーゲルスマンは、師弟といえど思想に違いが生まれていることが印象的でした。

サッカー指導者として「自分のサッカー観」を持つことは大事であると思います。
その中で、自由が上に解釈の余地が無限にあるサッカーというスポーツについて、どのような価値観で捉えるかが重要になるでしょう。

当記事を通じて自分がどのようにサッカー観を確立させていくのか、そのヒントやキッカケを掴めていただけたら幸いです。


また、少しでも日本の選手たちの「ボールを奪う力」が高まるために、我々 OFF THE PITCH としても大島さんが作成された動画を一人でも多くのサッカー指導者に広めたい思いです。

下記のツイート、ぜひご覧いただき「いいね/RT」をよろしくお願いいたします!


読んでいただき、ありがとうございました!!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<ゲスト紹介>

◉大島正寛(オオシマ マサヒロ) 氏
・Twitter↓↓
https://twitter.com/oshima7soccer?s=21
・YouTube↓↓
https://www.youtube.com/channel/UCyN3UFNock7C3e-p3kMQsuQ/featured

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<運営紹介>

◎ 一般社団法人FiC
「WORK WITH PRIDE 〜誇りと共に働く〜」をコンセプトに、日本サッカー界で起きている様々な問題を解決するべく、サッカー指導者が総合的に学べるコミュニティ事業を展開。10代〜40代まで幅広い年代の、サッカーや指導に想いを持つメンバーが所属する。
現在は、関東圏のみならず関西、そして全国に200名以上の会員を抱え、サッカー指導者が学べる機会や情報のほか、会員一人一人のキャリア支援や、講演会をはじめとしたイベントの企画/運営も実施している。
2021年7月に大阪支部がスタートし、2021年秋には第6期生を募集予定。

▼お問い合わせはこちら↓↓

◎インタビュー:大矢 峻
◎編集:佐々木 良央、八田 凌雅

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?