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いつお店をたたむのか?撤退判断の難しさ

NOZYコーヒーさんが破産したという話を聞いて、そんなまさか!と僕は慌ててスマホで検索した。

本当だった。負債総額1億1000万円。

2014年に新店舗として出した木更津のカフェが苦戦して2017年に撤退...サードウェーブコーヒーの走りとして名を馳せた名店であり、カフェ×コーヒーロースターという業態の立役者でもあった。

友人が仲良くしていたのでオーナーさんのことも知っていたから、なおさらショックだ。

ライバルも多いカフェ業界の中ではポジションをちゃんととれていたし、ロースターとしての売上はある程度安定していたはずだ。

となると、やはり木更津の新店舗がうまくいかなくて融資が返せなくなったパターンだろうか...ほんとうのところの原因はわからないけれど、いずれにしても残念だ。


撤退戦のむずかしさ

お店を出した人なら誰もが、遅かれ早かれ最後は閉店処理をすることになる。それは、人間が最後は葬式をするようなものだ。

葬式にも良い葬式と悪い葬式があるように、お店の閉店処理も良い悪いがある。

売り上げが悪い時に耐えたら良くなるのか?それとも、はやめにたたんで傷がひろがらないようにするべきなのか?

この判断は...非常に難しい。


お店のライフはキャッシュフロー

店舗運営において、キャッシュフローはHPだ。つまり手元の現金が残りライフである。

これは毎ターンお客さんが買い物をしてくれたら回復するが、回復量より消耗が早いといずれは倒れる。

HPを減らす要因はたくさんあって、仕入れや人件費や家賃はもちろん、融資の返済や不定期で発生するメンテナンスなんかもある。

これらに対して、HP回復の手段が「お客さんがお店にくる」しかないのが飲食店のビジネス的にきついところだ。

だから1つ手が打てるとしたら、HP回復手段を複数持って同時に走らせることだろう。


致命傷と猛毒を避ける

もう一つは、どこで「逃げる」のかを判断する基準を持つことだろう。

お店をたたむのは恥ではない。1号店がバカ売れして近隣に2号店を出すも半年で撤退判断をし、結果的にそれがうまくいき移転再開した2号店を当てる、という事例は割とある。

この時、撤退のタイミングをはかるのは「致命傷を避ける」こと、あとは「猛毒状態」なら深手を負う前に逃げたほうがよい。

致命傷とは、端的に言えば「高い初期投資と高額な融資(借金)」だ。これは1撃で残りHPが減りまくった赤ゲージで進むことになるので、即死率があがる。危険が危ない。

猛毒状態とは「高い家賃、高い仕入れコストや人件費、高いリース料など」のランニングコストの高止まりだ。これは毎ターンHPをゴリゴリ削ってくるので、お客さんがついてるのに潰れたりする。

これらは、出店時点でちゃんと計画することでだいぶ避けられる。だから物件が決まる前に店舗設計の相談が欲しいし、決まった物件でスタートする場合はリスク次第ではお断りすることもある。


冷静に逃げるために

出店の時は思い切っていけても、閉店を決断するのは出店の数倍難しい。

なにせ閉店は敗戦処理であり、撤退戦だ。撤退戦は難易度が高く、しかもうまくやっても生み出すものが少なくダメージの軽減効果しかだせない。ノウハウも少なく、再現性も薄い。

だからこそ、感情に支配されないように、ある程度のルールを決めておくべきなんだろう。

たとえば1年で売上目標と利益率、リピーター率や満席率の目標に対して70%に達しないなら撤退する、など。数値管理してルール化し、ドライに決断する。それくらいしないと、たぶん決断できない。

それだって、65%を半年続けて、1年目に69%とかでジワジワと伸びていたらどうだろう?たった1%の未達をドライに切れるのか?切るべきなのか?その判断は、経営者次第だろう。



飲食店の撤退判断は、ほんとうに難しい。自分が創業者であり愛着と決裁権を両方持ってしまっているならなおさらだ。

僕も今、実際に融資の返済をしながらお店を回していて感じることはたくさんある。

どれだけ良いお店でも、儲からなければ潰れる。儲けることは悪どいとか見られてしまいがちだが、利益が出ないと暮らしていけないのだから、儲けることは生きることでもある。

だから、やっぱり気に入っているお店があるなら、定期的にお店に顔をだしてお金を落とすのがいちばん応援になるんだろうなぁ。

なくなってしまったお店の数々を思い出しながら、そんなことを考えた。

閉店の決断って、ほんと難しい...
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