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実録:お店づくり(3)お金のない個人事業主の出店戦略-中編-

あっという間に一週間。火曜日です。「実録:お店づくりマガジン」の時間がやってまいりました。

ニッチなニーズで地味に役立つコンテンツなのですが、それでも楽しみにしているとお声がけいただいたり、タイムリーに新規出店のご依頼いただいたのもありまして、今回は家賃交渉のコツを書きます。


自分が貸す側だったらどう思うか?

まず、交渉の基本は「落とし所」を見定めて条件提示の綱引きをすることです。

この時に大事なのは、もしも自分が逆に貸す側だったらどう思うか?という点です。

単純な話、誰でもいいから高く借りて欲しいと思っている場合と、いい人にちゃんと使って欲しい場合と、よくわからないから不動産屋さんに丸投げしている場合では考え方って違ってきますよね。

駅前一等地でほっておいても引き合いがたくさん、高く貸してビジネスとして回したい人を相手に値引きはまず通りません。

じゃあお金のない僕ら個人事業主はどうすればいいのか?

正解は、相手のメリットも考えながらお互いが嬉しい状態に持って行く(という方向で自分にもメリットのある方向に誘導する)です。


イニシャルコストとランニングコスト

最初にガツンとお金がかかるのをイニシャルコスト=初期投資。毎月ちょいちょいお金がかかるのをランニングコスト=維持費・運用費って言いますね。

物件の場合は、エアコンとかトイレとかの設備周りはイニシャルコスト。家賃はランニングコストです。

で、まずお願いしてみるべきなのはイニシャルコストの部分。これらの設備の更新なんかは大家さん側も納得してくれやすいです。

例えば上記のエアコン、トイレ、水周り、ガス容量なんかは改修しておけば次のテナントさんでも使える、いわゆるオーナー側の資産。でも、内装工事費で金額がかさむのもこの設備関係です。

例えばエアコンとトイレで120万円分の工事をオーナーさんにやってもらえれば、2年なら月5万円分の家賃減額と同じ効果!

逆に家賃の値下げ交渉は下げれて元値の1割がいいところだと思います。ここを切り崩すのは不動産屋さんの取り分(手数料)も一緒に減るので、まず不動産屋さんがあまり味方してくれません。

裏技としては家賃1年分とかまとめて前納するなどで減額を交渉する手はありますが、キャッシュを持っておくのはとても大事なのであまりオススメしません。


オーナーさんにメリットのある提案をする

それでも家賃を下げたい!という場合はどうするか?

答えは、家賃以外のかかる費用でオーナーさんに協力してもらえそうな部分を探す!という方法があります。

ポイントは〝自分が出て行っても使える&物件の付加価値になる〟ことです。

例をあげておきますね。

【 退店後も付加価値になるもの 】
・エアコン
・トイレ
・設備の拡張(ガス、水道、電気)
・200V動力電源の引込と動力盤の設置
・防災設備(消化器、火災報知器、煙感知器など)
・避難誘導灯
・非常照明
・入口ファサード周りの大幅な改修
・シャッターの設置
・自動ドアの設置
・車椅子対応の設備など
・照明器具の更新(※状況にもよります)

店舗系の賃借の基本はゲンプクと呼ばれる現状復帰契約です。つまり、ほぼほぼスケルトンにして戻す、もしくは大家さん側と交渉の上で退店時に残置して退去します。

でも、内容によっては退店後の次のテナントさんを誘致する際に必要になるものもあるんですよね。

ここら辺は設計者がいないと知識不足でいつの間にか自腹でやっている事になりかねない部分なのですが、例えば法定設備である防災設備=非常照明や避難誘導灯や火災報知器なんかは基準数量は大家さんに設置をお願いしてもいい部分です。

もちろん、店舗の設計内容的に追加や移設・増設が必要ならば、それは出店者都合なので出店者が負担するべきです。

しかし、店舗として貸し出す最低限の必要なものに関しては大家さんにお願いしてみるのも手です。本来は入居前の段階で揃っているはずのものだからです。


とはいえ、あんまり露骨にあれもこれもオーナー負担で!って頼みすぎると関係が悪化してしまうので、適度ないい落とし所で抑えてください。


家賃交渉はトータルコストで考えよう

つまり、まとめて言うと家賃交渉は出店投資のトータルコストから考えましょう、という事です。

家賃を下げてもらわない代わりに、大幅なイニシャルコストの必要な設備工事を負担してもらう。

これは、本来は最初に必要な頭金をローンで支払うのに似ています。家賃を下げるよりも、最初に100万単位の工事をしてもらう方がトータルではお得な場合もあります。

また、今は経済状況的にデフレをやや脱却してインフレ傾向に振れつつあります。つまり物価全体の底上げの傾向があるので、人気エリアなら家賃はほっておいても上がるでしょう。(つまり次の契約更新時に値上交渉される可能性があります)

こういう状況の時は、目先のいくらかの家賃交渉をするよりも、むしろ予算よりハミ出るプラスアルファの部分をどうにか他の方法で稼ぎ出せないかを考える方が有効な場合も多いです。


例えばSHOPCOUNTERなどでギャラリー貸しをしたり、キッチハイクなどでアイドルタイムに場所貸しをするのはすぐ思いつきますね。

おもしろい物販などを誘致できるなら、自分の商売と相性のいいお店を誘致してポップアップストアを展開したり、クリエーターとコラボしてイベントを打ったり、空間をカッコよく作り込んで定休日にメディアに貸し出したりするのも考えられます。

ビジネスなんですから、攻め方は色々あります。〇〇の店だからこうしなきゃ、というステレオタイプな思考では変化の多い時代では生き残れません。

ここら辺のアイデア出しは僕の得意とするところなので、どんどんアイデア使ってください。一緒にワルダクミしたい人はこちらへどうぞ〜。


今回も長くなりましたが、参考になりましたか?

次回は後編。地元のいい不動産屋さんの探し方をお伝えします。


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