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海外旅行2023その12 旅行者殺しのパキスタン<後編 ペシャワール殺人未遂事件>

8.ホテルのトラブルその2

ラホールからペシャワールに移動した。
中編の記事で記した通り私は2019年に
ペシャワールを訪れていたのだが
その時は寒かったことと滞在期間が短すぎたこともあり、
こうして2023年9月、暑い時期に再訪することにしたのだ。

ペシャワール再訪に際しホテルを事前予約しようと思ったのだが
OTA(Online Travel Agent つまりagodaやbooking.comなど)は
なぜか知らないがかなり掲載ホテルが少なく、
料金高めのホテルが数軒ある程度だった。
(パキスタンビザの申請書類としてホテルの予約確認書が必要)

私が2019年に泊まったFort Continental Hotelも
OTAには掲載されていたものの
1泊1万円弱というパキスタンにしては強気の価格なので
今回は事前予約しなかった。予算オーバーなので。

代替案として、Fort Continentalの割と近くにあり、
とある日本人のブログでも泊まってよかったとの
記述があるAmin Hotelに狙いを定めることにした。
OTAには掲載がなかったが、Amin Hotel公式サイトによると
1泊3000円程度で泊まれそう。これなら予算内。

ラホールを午前9時に出発した大宇Daewooの高速バスが
ペシャワールに到着したのが午後3時半。
ペシャワールの大宇バスターミナルの目の前にある
BRT(路面電車のバス版)の駅Lahore Addaから
Amin Hotel目の前のHashtnagri駅まで移動。
運賃50ルピー(25円)。そこまでは完璧だった。

「外国人は泊まれないYO」
Amin Hotelのレセプションであっさり言われた。
いやいや、日本人のブログで泊まったって書いてあったぞ。
「今はもう無理だYO」
全然泊めてくれる気配はない。

しょうがない、割高だけど2019年に泊まった
Fort Continentalに移動しよう。
BRTで1駅分の距離だったのだが、
炎天下の中とぼとぼと10分ほど歩く。

「外国人は泊まれないYO」とFort Continentalの受付。
「いやいや、2019年にここ泊まったから」
「2か月前に制度が変わったんだYO」
「えっ、、、たった2か月前、、、」

レセプショニスト曰く、ペシャワールのある
Khyber Pakhtunkhwa州(略してKPK)において
なんでも中国人が事件に巻き込まれまくっているので
中国政府が超怒って、今後中国人が死んだら
巨額の賠償金を払えという取り決めになったらしい。
KPK州はそんな金はないから、いっそのこと
外国人の宿泊を制限する手段に出たとのこと。

それが2か月前のこと。マジか。
そもそも私、本来はパキスタンに5月に行く予定でしたが
お宅の政府がビザ申請を承認しないために結局5月に行けず、
こうしてビザを取り直して9月に再訪したわけなんですが
5月だったらペシャワールに泊まれたんですよね???

なるほど、だから予約サイトはやたらと掲載ホテルが
少ないのか。この説明を聞いて合点。
ついでにレセプショニストに尋ねる。
この近くに外国人が泊まれるホテルはあるか?

「Pearl City Hotelなら泊まれるYO」
あ、そのホテル知ってる。最初のバスターミナルの割と近くだ。
ということで再びBRTに乗り、振り出しに戻る。
汗でベトベトなのでさっさとシャワーを浴びたい。

「外国人は泊まれないYO」
まさかの3連続で拒否られた@Pearl City Hotel。
時刻はすでに午後4時半。
暗くなる前にホテルを決めたい。だが決まらない。

「どうすればいいのさ」と私はここでも相手に丸投げ。
3連敗と暑さのせいで完全に思考停止していた。
「Shelton AccomodatorがあるYO。
あのあたりのホテルは外国人OKだYO」

そこ、OTAに載っていたから知っている。
ただ、場所が遠い上に値段が高いから却下していた。
でも今はそんなことは言っていられない。
今夜の野宿は御免だ。

Uberを呼ぼうと思ったが、ペシャワールではUberは役立たず。
inDriveという配車アプリならドライバーが見つかるらしいのだが
それをここでインストールするためには
私の電話番号に送られてくるSMSでの認証が必要。

私はモバイルWi-Fiを使用していたため、ネットは使えるものの
日本の電話番号はもちろんパキスタンでは圏外。
配車アプリのインストールはこの場ではできない。

ホテルの人が交渉してくれて、Shelton Accomodatorまで
オートリクシャー(3輪自動車)で400ルピー(200円)。
高いな。それだけ遠いってことだ。

今まで大宇Daewoo社のバスターミナル(新宿)→
Amin Hotel(阿佐ヶ谷)→
Fort Continental Hotel(荻窪)→
Pearl City Hotel(大久保)と移動してきて
次の目的地はまさかの町田。
距離感(と絶望感)がおわかりでしょうか。

「今日は満室だYO」
4軒目のShelton Accomodatorも安定の撃沈。
でもさっきのホテルで、このあたりのホテルは
外国人OKだとの情報をもらっていた。
なので隣のShelton Rezidor Houseにその足で突撃。

「今日は満室だYO」
5軒目も撃沈が決まったときにようやくひらめいた。
今ここでbooking.comを開いて
空室があるホテルに行けばいいじゃん。
そして現在地近くのCrown Castleに
本日まだ空室があることが判明。

「今日は満室だYO」とCrown Castleの受付。
「いやいや、これ見て、booking.com。
ほら、空室あるでしょ?予約できるよ??」
「それ間違いだYO。もう部屋ないYO」

本当は部屋はあるのかもしれない。
ただ、頑なに外国人の宿泊を拒否しているのかも。
とにかく6軒連続で断られて夕方5時。心が折れた。
今夜どうしよう。ペシャワールの宿泊は絶望的。

暑さと精神的疲労で思考がまとまらない中
私は自分の今夜の身の振り方を必死に考えた。

現在地は割とペシャワールの空港に近い。
フライト情報を見ると、夕方6時にカラチ行きがある。
これが最終便でこれを逃すとどこへもフライトはない。
カラチに行けばパキスタン人の友人がいるので
いろいろと助けてくれるはずだ。どうにかなるだろう。

もしそのフライトに間に合うのならカラチ行き。
間に合わなかったら夜行バスで
ラホールかイスラマバードに戻ろう。
ラホールかイスラマなら、ネットでホテルは予約できる。

私が学生だったころ、友人たちとテレビドラマを見ていた。
主演の江角マキコが、海外へ旅立つ恋人を追いかけるため
道路に飛び出しタクシーを止め「成田まで!」と一言。
私たち一同はのけぞった。成田までいくら金がかかるんだよ!
貧乏学生たちにとってタクシー乗車などは夢のまた夢だった。

それがまさかのパキスタンで私が江角マキコになった。
道路に飛び出しリクシャーを止め「空港まで!」と一言。
一言しか言わなかったのはウルドゥー語だから。語学力の問題。
恋人を追いかけるのためじゃないが、とにかく急ぎたい。

6時の飛行機に乗りたい。金ならいくらでも・・・
私はもはや貧乏学生ではない。立派な社会人なのだ。
いやいや、冷静に。私の財布の紐は外国でも固い。
ここは江角マキコと違ってしっかり料金交渉。
250ルピー(125円)で話はまとまった。
後は「ジャルディ!」(急いで!)を連発。

フライトは6時、現在時刻は5時10分。
地図で見ると近いはずの空港なのだが、
現在地と滑走路を挟んで反対側にターミナルがあるため
その分、大回りをする必要があって私だけあせるあせる。

そしてパキスタン名物、検問の嵐。
はい止まって。パスポート見せて。おー日本人。
パキスタンへようこそ。どこ行くの?
同じ質問を3か所ぐらいで聞かれて気が狂いそう。
一刻も早く空港に行ってチケット買いたいんだけど。

最後の検問では
「ここから先、リクシャーは入れないYO」と
リクシャーを下ろされて呆然となる(約束の料金は払った)。
どうしろと言うのだ。空港ターミナルはまだ先だ。
そこへ1台の車がやってきて私と同様に検問で止められた。
「こいつを空港に乗せてってやれYO」と
お巡りさんから車の運転手への命令。相乗り?タダ乗り?

ということで、全然関係のない人の車に乗りこみ
ようやく空港ターミナルに着いたのが5時40分。
Fly Jinnahの発券カウンターまで猛ダッシュ。
「6時のカラチ行き。1人。いくら?」

「最後の1席だYO」といううそか本当かわからないが
18,750ルピー(9,350円)をカード払いで即購入。
そのままチェックインカウンターへ猛ダッシュすると
スタッフのパキ兄が「コンピューターに予約ないYO。
あ、もしかしてこれ今買ったばかり?
まだコンピューターに予約が反映されてないYO」

まさかのここでタイムロスが発生するものの、
まぁここまでくれば飛行機には乗せてもらえるだろう。
搭乗券の発券を待っている間に、カラチの友人に
事の顛末をメッセージで送り協力を仰ぐ。

無事飛行機に乗り、本当に最後の1席だったことが判明。
機内は満員。しかもLCCだったようで機内食は有料。
夜8時すぎにカラチに到着し空港で友人と合流。
友人が予約しておいてくれたホテルまで移動し
今夜の野宿は回避。大変な一日だった。


ということでペシャワールを訪れる旅行者に注意勧告。
2023年9月の段階で、外国人が宿泊できるホテルは
かなり限定されている模様。さらに
OTA(booking.comやagoda等)から予約をしても
それが本当に外国人が宿泊可能なのかどうかもグレー。

OTAで予約をしたのなら、その後ホテルに直電し
外国人だけど宿泊OKかを確認したほうが安全。
私のように予約なしで現地に行き、
なんとかならなくて野宿とかになって
武勇伝をSNSにアップできるのは20代の若者限定。

30代以降の旅行者は、常にパキスタンは旅行者を
殺しにかかってくる、ぐらいの臨戦態勢で
日々を過ごさねばならない心構えが必要。



ま、ペシャワールで精神的に殺されかけたという話です。
ペシャワールから国境を越えて隣国アフガニスタンに行くと
精神的ではなく物理的に殺される危険性が高まるので
私は全然お勧めしない、というかやめとけ。

そもそも6軒連続で宿泊を拒否されて心が折れる私は
ハードな旅行先(アフガンだけでなく中央アフリカや
西アフリカ、中米やベネズエラなども)は
今までもこれからも未踏。君子危うきにというか
身の程をわきまえているだけだ。



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