一夜漬けで理解するITコンサル業界の業界研究
ITコンサルティングファームは、文字通りITありきのコンサルティングサービスを提供するのが特徴の業界です。
まず、ITコンサルが求められる背景はそもそも何なのでしょうか。
これはひとえに、顧客が「どんなシステムを導入すれば良いか分からない」からです。
現在は昔と比べて会社員のITリテラシーも大きく上がっていますが、昔はシステムにできることはなんなのか、どこまでシステム開発で便利になるのか、まだそこまで世間には浸透していませんでした。
そこで、各企業はシステム開発を提案してもらう役割として、ITコンサルティングを頼るようになりました。
ただ近年は、総合コンサルティングや、戦略コンサルティング会社もIT関連の提案をするようになったことや、システム開発ベンダーが増えたこともあり、ITコンサル業界は戦略から実行まで、一気通貫で企業の経営課題を解決できるファームにビジネスモデルを転換している印象です。
守備範を増やすために、ITとは無関係な戦略立案・組織改編、オペレーション改善案件にも手を伸ばしているのがITコンサル業界の現状です。
上記のようなITコンサルティングサービス業界ですが、いくつか種類があります:
①ITに専門家集団を構えるファーム(IBM, NTT系など)
②業務・セクターに専門性を構えるファーム(フューチャーアーキテクト, ISIDなど)
この種類によって、コンサルタントの性質も変わります。ちなみに、文系の学生がITコンサルを狙うなら②を目指すのがねらい目です。
では、そもそもITコンサルはどのようにして生まれたビジネスなのでしょうか。
ITコンサルティングの始まりは、実は電子機器メーカーからなのです。
自社の販売した電子機器に関して、操作方法などのサポートを行っていたサポート事業が発展して、ITソリューションについて提案する現在の形のITコンサルティングファームが生まれました。
例えば、とあるCAD(図面作成ツール)で設計を行う部品メーカーがあったとします。
1人のエンジニアが設計図をCAD化するのは問題がないですが、1000人のエンジニアがCADを各自のパソコンで使用始めたら問題になります。
1000人分のCAD料金を支払うのも勿体ないし、そもそも個人のPCに会社の設計図を預けてしまっては、情報漏洩の心配がある・・・・
困り果てたシステム担当者は、コンサルティング会社に相談すると、以下のような答えが返ってきます。
『CADソフトを共有PC上に配置して、共有PC上でエンジニアが作業するようにしましょう。皆さんはリモートデスクトップで共有PCにアクセスして、そこで作業をすれば、CADソフトの料金も一台分で済みますし、データを持ち逃げされることもありません!』
そうしてITコンサルが提案通りシステムを完成させると、今度は別の問題が出てきます。システムが故障したときに社内の人間で治すことができないのです。
そこで発注したメーカーは、システムの開発に加えて、システム保守・システム運用も継続的に行ってもらう契約をするようになります。
つまり、今日のITコンサルティングファームが行っているようなシステム開発とシステム運用を一気通貫で行うようなビジネスは、元をたどると開発したシステムを継続的に管理してもらいたい顧客側の需要から生まれたものなのです。
③ ITコンサルティングファームの未来
ITコンサルティングファームは変革期を迎えています。
近年はクラウドやSaaSの発展で、ITコンサルに需要がなくなりつつあるのです。
SalesforceをはじめとするSaaSの登場は、各企業がシステムを使うためのハードルを大きく下げました。
莫大な予算をかけてシステムを導入しなくても、出来合いのシステムを使って、それを少しカスタマイズする方がはるかに導入も楽で、お金をかからないからです。
多くの企業は複雑な自社システムの開発を行うより、すでに完成されたパッケージシステムを組み合わせて運用する方に、ニーズが流れつつあります。
そして、ITコンサルティングファームは、これに対抗する手段を持ち合わせていません。
なので、今あるITコンサルティングファームも、いずれは自社で開発したSaaSを売っていくような形にシフトすると思われます。
特定分野に特化した独自プロダクトを開発し、営業部隊を通してそれを企業に販売していくような業態に、どんどん変化していくことが予想されます。
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