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サクッと読める戦略コンサルティングファームの業界研究

戦略系コンサルティングファームは、大企業のクライアントを中心に経営戦略や成長戦略を考案します。

特に欧米に本社を置く外資系が多く、大企業や外資系の顧客を中心にグローバルに展開しています。
「どのような企業になればいいだろうか」や「どの事業を中核事業として行えばよいか。」など、クライアントの経営のトップレベルに関わることが出来る仕事と言えます。


今でこそコンサル業界と言えば華々しいイメージですが、戦略コンサルティングの始まりは非常に素朴なビジネスでした。
というのも、昔のコンサルタントといえば、おじいちゃんのコンサルタントしかいなかったのです。

実は、コンサルタントという職業はある分野で長く勤めたビジネスマンが、困難な会社の為に様々なアドバイスをし始めたのがこの事業の始まりでした。

動かない10トン程度の機械を10分で動くようにするとか、使われなくなったプログラムのコードを代わりに書いたりとか、そういったサービスを提供して大きな報酬を取るビジネスだったのです。
その個々のコンサルタントがだんだんと組織化していき、グローバルな規模でコンサルティングを始めるように発展したのがコンサルティングファームです。


戦略コンサルティングファームが高い報酬を企業から得られるのは、この「グローバルに展開している」という点が重要です。
グローバルでオフィスを出す事によってグローバルベストプラクティスを様々な業界で展開できるようになったのです。

例えば、日本のゴム企業が米国に進出を計らっているとします。その際に、日本の企業は米国の事情が分かりません。

米国にゴム製品を輸出した方がよいのか?
米国で工場を建てれば良いのか?
そもそも、進出すべき程のマーケットはあるのか?販売ルートはどのように探すのか?

などなど、経営判断を下す決定的な情報が今ひとつ足りないわけです。
そこで、コンサルティングファームは自社の米国オフィスと連携して、米国のゴム会社のコンサルティング経て得たノウハウや情報を転用して、日本支店のファームに連携することで、お客様のニーズにこたえる訳です。

つまり、ユーザーとコンサルタントの間の、極度の情報格差を利用したビジネスが戦略コンサルティングの収益の根源です。



ただ、戦略コンサルティングファームにもライバルは多いです。
例えば、人材業界が展開しているスポットコンサルティングサービスの出現です。

これによ、企業はコンサルティングファームではなく、人材会社から派遣された、特定の分野に強い知見を持つ人材と契約し、貴重なノウハウを短期間で吸い上げることができるようになりました。

これにより、戦略コンサル業界は一時は苦境に追い込まれたこともあります。わざわざ莫大な金を払ってコンサル会社と契約するより、元コンサルの人間を一人雇えば良いわけですから。

これに対抗して、コンサルティングファームはハンズオンサービス・最新技術提供で差別化を図るようになりました。
つまり、コンサルタントが培った文章作成能力を利用して、素早く経営層に経営判断に必要な資料を提供したり、事業会社に対してSaaSの導入や新規の業務システムパッケージの導入を提案するサービスです。

つまり、現在のコンサルティングファームは、「グローバルに蓄積されていくコンサルティングノウハウ」と、「スポット作業員の提供能力」と「最新技術サービスの提案」を武器に戦うようになりました。


ちなみに、一口にコンサルティングファームと言っても実は種類がありまして、上で話した戦略コンサルティングファーム以外に、「総合コンサルティングファーム」というのが世界には存在します。

戦略コンサルティングファームは大企業の経営戦略を考案する、まさに「コンサルらしいコンサル」です。
経営戦略や成長戦略の立案など、企業の根幹に関わる業務に対するコンサルティングを行います。

一方で、総合コンサルは戦略から実行フェーズまで担当して、企業を支えます。
例えばさっきのゴム会社の例で言うのであれば、総合コンサル会社は、「米国にゴム工場を建てましょう!」と経営層に提案した後は、必要な人材を確保する為のタイムラインを提示します。

また、どの人材紹介会社から人材を調達するか、どんな組織図を描くのかを提示します。また、必要な資金を計算して、資金確保の方法として日本から調達するのか?それとも米国で調達するのか?などまで提案します。
また、工場を建てるより、既存の会社を買収するのが良いのであらば、おいくらで買うか?どのように買うか?まで提案します。

戦略コンサルの提案力と、スポットコンサルティングサービスの実行力を併せ持つのが総合コンサルの魅力です。

戦略ファームの未来は、この総合コンサルティング会社との戦いになります。
実行まで実施する総合コンサルティングファームが常に戦略ファームの立ち位置を狙っている一方、顧客のニーズも戦略提案だけでなく、実行フェーズも担当して欲しいという方に傾いてます。
また、スポットコンサルティング・資料作成・最新技術提供を得意とするITサービスが相次いて登場したのも、戦略コンサルティングファームにとっては逆風です。

例えば、皆さんが知らないCapital IQというサービスがあります。
https://www.spglobal.com/marketintelligence/jp/solutions/sp-capital-iq-pro

これは、過去に行われたM&Aの理由(M&Aが規模拡大が理由か?それとも販売網も確保か?新規技術の確保か?)やその成否など、高度なレベルの情報を提供しているサービスで、世界レベルのマーケット情報を提供しています。
また、資料作成もさまざまなツールが出てきて、高品質な資料を安価に作成できるようになりました。

では、どのように今後戦略コンサルティングファームは生き残っていくのでしょうか?
一つのトレンドは、「最新技術の取り込み」「専門性の特化」です。
最近ではBCGが経営戦略の提案からデザインまで担当するコンサルティング会社を子会社として立ち上げました。

また、他のコンサルティングファームではIoTに特化したファームや、ビッグデータの分析、AIソリューションの導入に特化したファームなど、特定の分野への専門性を強調することで、総合コンサルティングファームとはまた違ったメリットを提示しています。

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