針なし注射器はどこに?

新型コロナのワクチン関連のニュース映像でワクチン注射の場面が繰り返し流れている。それを見ていて自分が子どもの頃の集団接種を思い出した。

学校の体育館などで、クラスごとに並んで順番に予防接種を受ける。今は基本的に個別接種なので、若い世代の人にはなかなかイメージがしにくいだろうと思う。

注射自体にはそれほど恐怖心はなかったが、順番待ちをしているときはさすがに緊張した。すでに注射を終えた級友に「どうだった?」と聞くと必ず、顔をしかめながら「すごく痛かった」という答えが返ってくる。こちらもますます緊張感が高まる。

実際の注射はあっという間に終わるし、少しチクリとするもののそれほど痛くはなかった。終わった後はアルコールを染ませた脱脂綿を注射跡に当ててしっかりともむ。まだ順番待ちをしている級友には、大げさにいかに痛かったかをアピールして怖がらせる。先に終えた側のちょっとした優越感を覚えながら。

当時は、年に一、二回このような場面が繰り返されていたように思う。あるとき、担任の先生からの知らせだったか、別のクラスからの情報だったか、「針のない注射器」という話が伝わり、クラス中が沸き立った。針がないのならきっと痛くないはずだ。

期待に胸を膨らませていつものように列に並ぶ。じっと観察していると、拳銃を少し大きくしたような機械を持った医師が生徒の肩にその機械を押し付けて注射をしている。確かに針はないように見える。

自分の番が来て、アルコール消毒を受ける。今の時代のように「アルコールでかぶれたことはないか?」などという親切な質問を受けることもない。流れ作業で注射を受ける。チクリとする。期待と違って、針の注射器と痛さは変わらない。

ぼんやりとした記憶だが、あの針のない注射器が使われた時期はごく短く、すぐにまたは針付きの注射器が復活したように思う。

いったいあの針なし注射器はどこに行ったのだろう?

その後の時代も針付きの注射器しか見なくなってしまったから、おそらく何か消えるべき理由があったのだろう。誰か教えてくれないかな?

針付き注射器は一回ごとの使い捨てのはずなので、その都度廃棄物として処分される。

今後、新型コロナのワクチンの接種数は国内だけで億単位になるだろう。そうなると医療廃棄物で処分される注射器も相当な量になるはずだが、それに関するニュースはまだ目にしたことがない。ちょっと気になる。

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