早合点は危険

このところ、ニュースの見出しとその詳細内容でずいぶんと受ける印象が違うという経験をした。

一つは、ある受験者がマスクから鼻を出していたことで失格になったというニュース。当初の報道では、マスクから鼻を出していただけで人生の行方を左右する受験の機会から締め出されるなんて、と読者を誘導させるかのような見出しがあふれていた。初期の段階で現場での状況をきちんと伝えていたのは、ごく一部の新聞社だけだった。その後、警察に逮捕されるまでに至った経緯は既報の通りだ。当初の報道の見出ししか見ていなかった人と、後追い記事で詳細な内容を知った人では、おそらくずいぶんと違う感想を抱いたことと思う。

他の例は、ドイツの首相が米大統領のSNSでの発信を遮断したSNS運営会社を批判したというもの。元々、考え方や政治姿勢の違いから両首脳は対立していたという前提がある。それなのに米大統領の側に立ってSNS運営会社を批判するとは、というのが見出しの趣旨だった。しかし同首相の詳細な発言を追ってみると、その発言の意図は全く逆ではないかとすら思えてしまう。発言の趣旨は、一企業が恣意的に発言を規制をするのはよくない。法にのっとって規制すべきということだ。これも、見出しだけで受ける印象と、元の発言に沿った報道を読んだ場合の印象は間違いなく大きく変わる。

こういった例は、他にもたくさんあるはずだ。記事の見出しに「〇〇が激怒」と書かれていても、記事をよく読んでみると、別の見方を論理的・理性的に○○が紹介しているだけということがある。新聞のテレビ欄で「△△が激白」とあっても、実際の番組では質問されたことに△△が淡々と答えているだけということもある。

見出しを作る人は何らかの意図をもって、場合によっては悪意をもって読む人を誘導しようとする。そこでこちらがわっかったつもりになって止まってしまえば、その手にまんまとはまったことになっててしまう。

これは非常に危険なことだと思う。

ワンクリックで即座に大量の情報にアクセスできる環境は便利な反面、かなり危ない場所に立っていると改めて思った。ネット記事の見出しだけを見てわかったような気になってしまうことで、自分の思い込みや決めつけを強化してしまう。これはやはり危険だ。

手間を惜しんではならない。"早合点" してはならない。自戒を込めて思う。

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