疑問に思いながらも受け入れていることと人口減少社会

 居酒屋に行って飲み物や料理を注文すると "突き出し" が出てくる。普通は、料理の前に出てくる、小鉢に入ったつまみなどの小料理だ。地方によっては、"お通し" や "先付け" ということもあるらしい。

 ほとんどの場合、要るか要らないか聞かれることはない。しかし明細を見ると、しっかりとお金は取られている。

 理屈の上から言えば、注文したわけでもない別の料理が出てきて、しかも代金を請求されるのだから "押し売り" と同じことだと思う。でも習慣として受け入れている。

 この習慣に馴染んでいない人、例えば外国から来たお客さんだったら苦情を言うかもしれない。実際、「こんなものは頼んでいない」といって "突き出し" を断る人もたまにいるようだ。

 別に文句を言いたいわけではない。たいていは料理の前に飲み物と同じぐらいのタイミングで出てくるから、ちょうど良い "おつまみ" になるし、それほど高いものでもない。だから、いつものこと、という感じで受け入れている。

 もちろん、サービスが悪すぎたり、値段と料理が釣り合わないような店だったら、二度とその店にはいかないのだけれど。

 ちょっと似たしくみで、"テーブルチャージ" というのがある。ちょっと格式のあるレストランやホテルのバーなどで代金の明細に入っていることがある。床に座って食べたり飲んだりするわけにはいかないものの、テーブルを使うだけでお金を取られるというのはどうなんだろう?と思いながらも、習慣として受け入れている。

 ライブハウスやある種のコンサートなどで "ドリンク券" を買わされることがある。これも厳密には "押し売り" に近いものと言えるかもしれない。安い店に行けば1缶200円ほどで買えるビールを500円のドリンク券を買ってそれと交換しているのだから。でも "入場料" みたいな感覚で受け入れている。

 考えてみれば、NHKの受信料もそれに近い仕組みなのかもしれない。「NHKは観ないから払わない」と強硬に主張して払わない人も一定数いるらしい。でも、自分としては "ただ観" はイヤなので、受け入れてお金を払っている。

 どれもこれも、論理的に突き詰めていけばおかしなことなのかもしれない。でも、何となくそういうものかな、と思って受け入れている。

 これからは、人口減少社会になり、異なる文化背景を持った人たちに支えてもらわなければ成り立たない時代になりつつある。仮に、みなが当たり前と思っていた習慣に馴染まない人から疑問を突きつけられたら、お金を払ってもらう側は、少なくとも誠意をもって答えられるように覚悟しておくべくだと思う。

 といったことを久しぶりに外食した際にぼんやりと考えた。

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