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消極的にオススメする | 「自殺帳」(著:春日武彦)

こんにちは
イデアレコードの左川です。

X(twitter)のタイムラインで見かけて気になっていた「自殺帳」を本屋で見かけて、思わず買ってしまいました。読みだしたら、独特の世界観に惹きこまれて一気に読んでしまった。

人はなぜ自殺するのか? 人はなぜ自殺しないのか?
そのあわいをみつめつづけてきた精神科医、春日武彦による
不穏で不謹慎な自殺論考。


自殺は私たちに特別な感情をいだかせる。もちろん、近親者が死を選んだならば、なぜ止められなかったのかと、深い後悔に苛まれ、悲しむことだろう。だが一方、どこかで覗き見的な欲求があることも否定できない。「自殺はよろしくない」「でも自殺せざるを得なかった人の辛さに思い巡らせるのも大切」「あなたの命は決してあなただけのものではない」など、さまざまな意見を持つ人に読んでもらいたい、自殺についての深掘りエッセイ。自殺されたクライアントとの体験や、さまざまな文学作品、遺書、新聞報道記事などを下敷きにした、自らも自殺に近い位置にいる精神科医による、自殺をめぐる集大成。

「強引に言い切ってしまうなら、人間そのものに対する「分からなさ」が身も蓋もない突飛な形で現出しているのがすなわち自殺ということになろう。その突飛さを前にして、動揺した我々は、(情けないことに)つい「ゲスの勘ぐり」やら下品な好奇心至上主義を全開にせねばいられなくことが稀ではない。悼んだり悲しむと同時に、無意識のうちにそんな方向に走ってしまう。だから「その不可解さがもはや珍味と化している事案」と表現してみても、あながち的外れではあるまい。
そんな次第で自殺に関して思うこと、感じること、精神科医としての意見、文学的関心などをだらだらと書き連ねていきたい。もっとも、それが正鵠を射た内容であるのか否かは、自殺を遂げた当人ですらはっきりとはしないであろうけれど。」
(「はじめに」別バージョンより)

amazon公式より抜粋

小さいときには親戚の一人が自殺した。小学生のとき住んでいた14階建てのマンションから若い女性が飛び降りた。学生のときには同級生が何人か亡くなっている。中央線沿線ではしばしば人身事故によって電車が止まるが、その多くは「自殺」である。「自殺」というのは遠い世界の出来事ではなく、自分の近いところでもしばしば起きているということに改めて気が付かされる。

「自殺帳」は精神科医が「自殺」について語ったものであるが、帯にも書かれているようにきわめて「不謹慎」なものである。真面目に語ってはいるもののその言葉の端々には毒舌や皮肉がたっぷりとなっている。世間では亡くなったことについては悪くは言わない、まして「自殺」した人に対して何かを語るときは非常に慎重になることが多い。が、本書では滅多切りになっていて、怖いものなしの著者の無双状態の書きっぷりはある種の爽快感すら漂ってくる。もちろん精神科医として「自殺」をするときの心理状態や要因となるようなものについての考察も語られてはいるものの、他の言葉にかき消されてしまって記憶にはほとんど残っていない。

そのため身近な人を「自殺」で亡くしていたり、本気で考えている「真面目」な方は読まない方が良いと思う。が、そういう方の気持ちを理解できるなどと思いあがったことを言えるわけではないので、もしかしたら考えや気持ちに変化が生じるきっかけになるかもしれないと思ったりもする。

そんなわけで消極的にオススメします。

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