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なぜアンケートで属性を尋ねるのか~重要になる理由と尋ね方を解説
属性とは、その人が持っている性質のことです。その性質によって初めてその事物が可能になるような性質、と説明されることもあります(*)。
ある人の属性とは、その人の性別、年齢、学歴、職業、住所、年収などのことです。
企業がマーケティングのなかでアンケート調査を実施するとき、回答者の属性を尋ねることがあります。
それは消費者や顧客の属性が、マーケティング上の重要情報になるからです。
この記事では、アンケートで属性を尋ねることが欠かせない理由と、アンケートでどのように属性を尋ねたらよいのかを解説します。
*:https://kotobank.jp/word/%E5%B1%9E%E6%80%A7-5362
そもそも属性とは
属している性質なので、属性といいます。
人には個性があり、最近では多様性が重要ワードになっていますが、それでもなお人々は社会的な生き物なので、必ず何かやどこかに属すことになります。
つまり、ある属性を特定すると、それに当てはまる人が複数人存在することになります。例えば「30代の独身男性」という属性を設定すると何人もの人がそれに該当します。
そしてある属性に属する人たちは一定の傾向を持つことがあります。「30代の独身男性」たちには共通点があり、「40代の既婚女性」とはまったく異なる傾向を持つことがあるわけです。
属性には性別、年齢・年代、最終学歴、職業、住所・居住地、年収などがあります。
また、犬を飼っている、持ち家に住んでいる、スポーツ系の部活をやっていた、といった特殊な性質も属性としてアンケートで尋ねることができます。
属性のなかの人たちは似ることが多く、マーケティングの参考になる
マーケティングにおける属性を解説します。
属性を設定すると人々のグループができるわけですが、不思議とその人たちは似てきます。例えば「渋谷区に住む30代独身男性、年収500万~700万円」という属性を設定すると、それに該当する人たちは、性質やライフスタイル、傾向が似てきます。
似た性質・ライフスタイル・傾向を持つグループがあれば、それはマーケティングの対象になります。なぜなら、その属性を持つ人をターゲットにした商品・サービスをつくれば、その人たちに購入してもらえるからです。
したがって、アンケートで属性を尋ねるのは、マーケティング業務で使えるデータが得られるからです。
似ないこともあるが、これもマーケティングの参考になる
属性に合致しながらも、そのグループの多くが持っている性質・ライフスタイル・傾向をまったく持たない人も出てきます。
つまり「渋谷区に住む30代独身男性、年収500万~700万円」に当てはまるものの、このなかの人たちとまったく異なる生活を送っている人もいます。
属性の特徴に該当しない人も、実はマーケティングの対象になります。
なぜなら属性の特徴に該当しない人は、まったく新しい価値観を持っている人かもしれないからです。その人たちを調べることで、これからの流行するものや、ビジネスの種がみつかるかもしれません。
なぜアンケートで属性が大切なのか
アンケートで回答者に属性を尋ねるのは、次のことが可能になるからです。
●属性別の傾向や特徴がわかる
●集計・分析に利用できる
●ターゲットをみつけることができる
1つずつ解説します。
属性別の傾向や特徴がわかるから(セグメンテーションができるから)
マーケティングでは、セグメンテーションをして、ターゲティングをして、ポジショニングをします。つまり、消費者を区分けして、狙う消費者を選定して、自社の商品・サービスの価値を定めます。
属性がわかると、セグメンテーションができるようになります(消費者を区分けすることができるようになります)。
新商品や新サービスを市場に投入するとき、闇雲に広告を出したり販売したりしても効果が出ないでしょう。そうではなく「この人たちに買ってもらいたい」「この人たちならこれを買うはずだ」といったように狙いを定めて広告を出したり販売したりすれば、売れるようになります。
狙いを定めるには、消費者を区分けしておかなければなりません。
ではどのように消費者を区分けするのかというと、属性でわけていけばよいのです。
「30代独身男性」は明らかに「孫がいる60代男性」とも「20代女性」とも異なります。そのため「30代独身男性」と消費者を区分けして彼らのことを分析すれば、新商品・サービスのターゲット層の性質がみえてきて、商品・サービスの開発に役立ちます。
集計・分析に利用できるから
アンケートを実施したら回答用紙を回収し、集計、分析します。アンケートで属性を聞いておけば、集計・分析を効果的かつ効率的に進めることができます。
例えば「自社製品をまた買いたい、80%」という結果が出たとします。するとマーケティング担当者は「男性なら何%なのか」「女性なら何%なのか」といったことを知りたくなるはずです。
アンケートで属性を尋ねていれば「男性の支持率90%、女性の支持率60%、計80%」といった情報を得ることができます。
そうすると「男性の支持率が高いから、男性にPRしていこう」とか、「女性の支持率が低いから、女性受けする広告を出していこう」といったマーケティング戦略を描くことができます。
また「自社製品をまた買いたい、20%」という結果が出た場合、これだけでは落胆して終わってしまいます。しかし、年収1,000万円以上の回答者に限定して「自社製品をまた買いたい」の回答を調べたら95%になっていたらいかがでしょうか。
この自社製品は、全回答者の支持率は低いものの、富裕層の支持率は異様に高い、ということがわかります。
ところがこの「年収1,000万円以上の人の『また買いたい』、95%」という結果は、アンケートで年収を尋ねていたからこそ抽出できた情報であり、年収を尋ねていなかったら表に出てこないデータでした。
属性のなかにターゲットをみつけることができるから
アンケートで属性を尋ねると、特定の属性を持つ人の回答傾向を分析することができます。
例えばアンケート結果で、東京23区在住の回答者が「この商品を支持する、10%」、大阪市在住の回答者が「この商品を支持する、60%」と出た場合、このアンケートを実施した企業は大阪市民をターゲットにすることができます。
もしくはアンケートで「中学、高校とスポーツ系の部活に入っていた人のほうが『アウトドアに興味がある』と回答する傾向が強い」ということがわかれば、マーケティングの戦略が立てやすくなるはずです。これは若いころにやっていたこと、という属性を尋ねたからこそ得られた情報です。
このように属性を尋ねると、属性のなかからマーケティングのターゲットを探すことができます。
属性に関する質問項目を考えるときの注意点
ここまで、アンケートというリサーチ手法において、回答者の属性情報がいかに重要であるかをみてきました。アンケート用紙に属性を尋ねる質問項目を多く載せるほど、質の高いデータが得られます。
ただし、属性に関する質問項目を考えるとき注意したほうがよいことがあります。
必要最小限にする
属性について多く尋ねることは、質問項目を増やすことにつながり、それは回答の離脱を誘発してしまいます。
アンケートには、質問項目が増えるほど、回答時間が長く引くほど非協力者が増えてしまう(離脱者が増えてしまう)という経験則があります。
そのため、属性に関する質問項目は必要最小限にとどめたほうがよい、といえます。
選択形式にする
回答者の回答ストレスを減らすため、属性の質問項目は選択形式にしたほうがよいでしょう。そして選択肢は複数の解釈ができないものを選びます。
選択肢に「会社員、経営者」とあったら、事業部長や執行役員はどちらを選んでよいのか迷います。回答者の役職を重視したい場合は、「会社員、管理職、経営に関わる会社員、役員などの経営陣、経営者(代表取締役)」と選択肢を増やしたほうがよいかもしれません。
テーマが決まっていれば詳しく尋ねる
これは、属性に関する質問項目を必要最小限にする、というアドバイスと逆のことになりますが、アンケートのテーマが決まっていたら、それに関しては詳しく尋ねたほうがよいでしょう。
例えばペットに関するアンケートをするのであれば、次のように属性を深掘りしていく必要があります。
■飼っている動物は
犬、猫、その他
■犬を飼っている人にお聞きします、犬種を教えてください(複数回答)
大型犬、中型犬、小型犬、血統書つき、雑種
■知人、友人、家族に犬を飼っている人はいますか
いる、いない
テーマに沿った属性の質問項目を増やしていくと、顧客像や見込み客象(ペルソナという)がみえてきます。
属性をアンケートでどう尋ねたらよいか
属性をアンケートで尋ねるとき、質問項目をどのように書いたらよいのか解説します。
ここでは次の属性を取り上げます。
●性別
●年齢・年代
●最終学歴
●職業
●住所・居住地
●年収
性別の尋ね方
最近のアンケートでは性別を尋ねるとき、男性と女性のほかに、「答えたくない」を選択肢に加えることがあります。
「答えたくない」または「回答しない」を加えることで、回答者に、ジェンダー問題に配慮している企業であると認識してもらえます。
年齢・世代の尋ね方
年齢を尋ねると、回答者に数字を書いてもらったり、数字を入力してもらったりしないとならないので手間がかかります。年齢を尋ねる質問は選択肢にすることが難しいでしょう。
アンケートの実施者にとって、例えば「25歳」と「26歳」の違いに意味がなければ、年代を尋ねたほうがよいと思います。年代なら選択肢にすることができます。
年代の選択肢は10年ごとにすることも5年ごとにすることもできます。
■10年ごとの年代を尋ねる方法
どの年代に属しますか
10代以下、20代、30代、40代、50代、60代、70代以上
■5年ごとの年代を尋ねる方法
どの年代に属しますか
19歳以下、
20~24歳、
25~29歳、
30~34歳、
35~39歳、
40~44歳、
45~49歳、
50~54歳、
55~59歳、
60~64歳、
65~69歳、
70歳以上
最終学歴の尋ね方
最終学歴は、趣味や年収などと相関することがあるので、アンケートで尋ねたい項目の1つです。
最終学歴を尋ねるときの選択肢は以下のとおり。
■最終学歴を教えてください
中学校卒、高校卒、専門学校卒、短期大学卒、4年制大学卒、大学院修了、その他
博士課程や高等学校卒業程度認定試験(旧大検)などもあるので、「その他」は用意しておいたほうがよいでしょう。
職業の尋ね方
職業を尋ねるときの選択肢は以下のとおり。
■現在の職業を教えてください
会社員、自営業(フリーランス、個人事業主を含む)、経営者、役員、公務員、その他団体の職員、パートやアルバイトなど、専業主婦、専業主夫、学生、無職
労働組合やNPO法人などの職員は「その他団体の職員」になります。
アンケートによっては、医師や弁護士、税理士などを知りたい場合があると思います。そのときは資格を尋ねればよいでしょう。
■保有している資格を教えてください
医師、歯科医師、弁護士、公認会計士、税理士、その他
■保有している資格で業務やビジネスをしていますか
資格を使った業務・ビジネスをしている、資格を使った業務・ビジネスはしていない
住所・居住地の尋ね方
住所を尋ねると記載や入力が手間になるだけでなく、回答者に「住所を知られたくない」と思わせてしまうかもしれません。
そのため、アンケート後に回答者とコンタクトする予定があり、どうしても住所が必要になるとき以外は、住所ではなく居住地を尋ねたほうがよいでしょう。
また回答者とコンタクトを取る必要がある場合でも、メールアドレスなどで対応できる場合は住所は尋ねないほうがよいと思います。
居住地を尋ねる方法はいくつかあります。
居住地の質問1
■お住いの都道府県を教えてください
北海道、青森、岩手、…(47都道府県を選択肢に載せる)
居住地の質問2
■お住いの地域を教えてください
北海道、東北、関東、中部・北陸、近畿、中国・四国、九州・沖縄
居住地の質問3(東京都内でアンケートを行う場合)
■お住いの地域を教えてください
23区内、23区以外の都内、東京都以外の関東の県、関東以外の道府県
年収の尋ね方
年収を尋ねるときの選択肢は以下のとおり。
■年収を教えてください
300万円未満、
300万~400万円未満、
400万~500万円未満、
500万~600万円未満、
600万~700万円未満、
700万~800万円未満、
800万~900万円未満、
900万~1,000万円未満、
1,000万円以上
まとめ~本筋ではないが重要な質問
マーケティング担当者はアンケートで聞きたいことがたくさんあると思います。顧客や消費者が何を思って商品・サービスを購入し、どこに満足し、どこに不満を持っているのか知りたいはずです。
そのためアンケート用紙に多くの質問を盛り込みたくなりますが、そうすると離脱を招くため一定数に抑えなければなりません。
しかもアンケートでは属性も尋ねなければならず、そうなるとますます「本筋の」質問を減らすことになります。
それでもアンケートで回答者の属性情報はとても重要なので、必要な質問は削るわけにはいきません。
属性の質問と本筋の質問を整理してアンケート用紙を作成する必要があるでしょう。
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