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マーケティング・リサーチの役割とレポート作成までの手順


マーケティングは「顧客に向けて価値を創造し、伝達し、届けるための、そして組織とその利害関係者に対して利益を与えるやり方で顧客との関係を管理するための組織的機能および一連の過程」と定義されます(*1)。

これを平易な言葉を使って翻訳すると「顧客のことを調べたり、商品やサービスの価値を高めたりして、商品やサービスをもっと売る取り組み」となるでしょう。


この記事ではマーケティングのうち「顧客のことを調べて」に注目します。


マーケティングでは調べることが、つまりリサーチがとても重要になります。正しい方法でリサーチしたデータや情報はビジネス上のエビデンス(科学的根拠)になるので、したがってエビデンスがあるマーケティングを展開することができます。

そしてエビデンスのあるマーケティングは成功する確率が高くなります。


マーケティング・リサーチの役割と、リサーチ結果をまとめるレポートの書き方を解説します。


*1:https://kotobank.jp/word/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0-8890


マーケティング・リサーチとは、役割とは


「マーケティング・リサーチ」という言葉に違和感を持つ人もいると思います。なぜなら、すべてのビジネス上の業務は、調べることから始まるからです。

コンビニの店員は作業マニュアルを調べますし、タクシー運転手は道路地図を調べますし、証券会社の営業担当者は株価と顧客の収入を調べ、自動車メーカーの開発者は関連論文を調べます。

つまり調べることやリサーチは、ビジネスパーソンにとって当然の行為といえます。


ではなぜマーケティングの領域では、わざわざマーケティング・リサーチという言葉を用意して、これを重視しているのでしょうか。

それは、リサーチによる結果がマーケティングを成功に導くカギになっているからです。マーケティングは「リサーチ命」といってもよいでしょう。


課題から始まるからすぐにリサーチに取りかからないとならない


マーケティングでは、ビジネス課題を解決するための解を探します。課題には例えば次のようなものがあります。


■マーケティング課題の例

●顧客は何を求めているのか

●何歳ぐらいの人が、どれくらいの年収の人が、どこに住んでいる人が、当社の商品を買っているのか

●ブランド・イメージを高めるにはどうしたらよいか

●見込み客に訴求できるキャンペーンはどのようにつくっていったらよいだろうか


これらの課題を解決する解は簡単にはみつかりません。

確かに、経験と勘のベースがあれば、あてずっぽうで解がみつかるかもしれません。しかしそれは長続きしないはずです。もしくは、状況が変化したらその解がすぐに通用しなくなるはずです。


マーケティング課題の解をみつけるには、リサーチするしかありません。上記の課題に対するリサーチはこのようになります。


■マーケティングにおけるリサーチ

●顧客は何を求めているのかリサーチする

●何歳ぐらいの人が、どれくらいの年収の人が、どこに住んでいる人が、当社の商品を買っているのかリサーチする

●ブランド・イメージを高めるにはどうしたらよいか調べる

●見込み客を調べて、訴求できるキャンペーンを探る


つまり、わからないならリサーチすればよいわけです。

マーケティングの仕事は課題から出発するので、リサーチはかなり最初のほうに行います。

これらがマーケティングにおけるリサーチの役割です。


マーケティング・リサーチの種類


マーケティング課題は星の数ほどあるので、マーケティング・リサーチの数もかなり多く存在します。例えば、パネル調査、継続調査、定点観測、アドボックス調査、カスタム調査、単発調査などです。

ただこの記事では、基本的なマーケティング・リサーチを押さえておきます。それは定量調査と定性調査です。

定量とは数値で表せるもの、定性とは感情や行動など数値化できないもの、です。


定量調査


定量調査と定性調査がマーケティング・リサーチの「基本」なら、定量調査は「基本中の基本」になるでしょう。

定量調査では、数値化できる情報やデータを集めて次々数値化していきます。


例えば、顧客が求めているものを知りたいとき、顧客に「製品Aと製品Bのどちらを支持するか」と尋ねれば、「製品Aの支持率70%、製品Bの支持率30%」といった答えが出ます。

定量調査を行うメリットは、エビデンスが明白なところです。

「製品Aの支持率70%、製品Bの支持率30%」という結果が出たら、マーケターも経営者も工場長も、製品Aを増産すべきだと考えるでしょう。もしくは、製品Aをリニューアルしてより価値を高めようとするでしょう。


定量調査がマーケティング・リサーチの基本中の基本になるのは、数値の力を使えるからです。数値には、説得力や正しさや間違いを証明する力、揺るがない確実さがあり、これはマーケティングの力になります。


定性調査


定量調査はとても重要なマーケティング・リサーチですが、しかし万能なわけではありません。定量調査をしっかり行っても、それを元に始めたマーケティングが失敗することがあります。

定量調査を元にしたマーケティングが失敗するのは、定量調査では拾いきれない情報やデータが存在するからです。

定量調査の限界を補うものが、定性調査です。


例えば「製品Aの支持率70%、製品Bの支持率30%」というリサーチ結果が出たので、製品Aをリニューアルして大量生産して売り出したものの全然売れなかった、ということは多くの企業が経験しているところだと思います。


なぜこのような結果に陥るのかというと、定量調査では調べきれない要素があるからです。

例えば、定量調査で「製品Aを支持する」と答えた人に、「自分で製品Aを買いますか」と尋ねると、何人かは「自分では買わない」と答えるはずです。

こうなると「なぜ製品Aを支持するのに、自分では買わないのか」という疑問が湧くと思います。この課題を解決する解をみつけるために定性調査を行います。


定性調査では、「製品Aを支持するが自分では買わない」と答えた人に「なぜですか」と聞く必要があります。

すると、「製品Aは機能的だから製品としては支持するが、ボディが赤いから自分では買わない」「製品Aは他人が持っていればうらやましいと思うかもしれないが、自分では所有したくない」「製品Aはすごくよいと思うが、私は製品Cで満足しているので買わない」といった答えが続々出てくるはずです。


これが定性調査になります。


マーケティング・リサーチの具体的なやり方


続いて、定量調査と定性調査の具体的なやり方を紹介します。


定量調査ではアンケートが人気


定量調査ではアンケート調査が人気です。アンケートは、知りたいことを聞くことができ、知りたいことが数値で出てくるので数値の力を存分に発揮できます。

企業が自社のブランド・イメージを知りたかったらアンケートで「当社のブランドについて、最も近いイメージを次の選択肢のなかから選んでください」と尋ねることができます。そして結果は例えば「ポップ35%、堅実35%、チープ25%、高級感5%」といったように明確に出ます。


アンケートは今はインターネットを使って気軽に実施できるので、コストも手間もかけずに何回でも消費者に尋ねることができます。


定性調査は手間がかかってもインタビューがよい


定性調査を行うには、消費者1人ひとりに聞き取ったほうがよいでしょう。インタビュー形式が有効です。


例えば消費者や顧客にモニターになってもらい、一定期間、自社製品を使ってもらい、その使い心地を尋ねます。

また、複数の顧客を集めて自社製品について議論してもらってもよいでしょう。議論することで顧客は、自分自身で気づいていなかった自分の要望を発見するかもしれません。それをマーケターが聞き取ることができれば、さまざまな気づきが得られるはずです。


マーケティング・リサーチのレポートの書き方

 

マーケティング・リサーチを行ったら、レポートにまとめる必要があります。レポートを作成することでマーケティング・リサーチで得た知見を社内で共有化できるわけです。

 

定量調査のレポートの書き方:数値を全面に出しながら、マーケティング課題と照らし合わせる

 

定量調査のレポートでは、数値を全面に出します。「数値が命」なので「数値に語らせる」必要があるからです。

しかし数値を羅列しただけでは、社内で理解できない人が出てきてしまうので、数値の意味も記載します。

マーケティング課題とマーケティング・リサーチの数値を並べれば、課題に対する解がみえやすくなります。

 

定性調査のレポートの書き方:顧客の意見を紹介しながら意味づけする

 

定性調査のレポートでは、調査対象になった顧客や消費者の言葉を並べます。ただこちらも、単に言葉の羅列になっては、ビジネス課題とのつながりがみえてきません。

レポートを作成するマーケターは、顧客の言葉がどのような意味を持ち、それが何を示唆していて、どのように解に結びつくのかを記述しなければなりません。

 

定量調査の数値は数値それ自体に意味がありますが、定性調査で集めた顧客の声はそれ単体では意味を持たないことが多いでしょう。それに意味を持たせることが、レポートをつくるマーケターの「腕」の見せ所になります。

 

まとめ~あてずっぽうリサーチを回避するにはプロのリサーチャーが頼りになる

 

マーケティング理論が進化しているように、マーケティングで重要な意味を持つリサーチも進化しています。

それでマーケティング・リサーチを専門に行うリサーチ会社やリサーチャーがいるわけです。

 

リサーチ会社は、定量調査や定性調査、顧客アンケートや消費者インタビューを駆使して、クライアント企業の顧客や消費者の「深層」に迫ります。

そのため、企業経営者やマーケターが「消費者を知りたい」「顧客の本音を聞きたい」と思ったら、リサーチ会社やリサーチャーが頼りになるはずです。

 

スキルがなかったり、適切な手法を使わなかったりしたまま定量調査、定性調査、顧客アンケート、消費者インタビューを行っても、あてずっぽうのリサーチになってしまいます。

プロのリサーチャーに相談すれば、自社のマーケティング課題が明確になるかもしれません。課題が明確になったうえで、適切な方法でマーケティングリサーチを実行すれば、有益な知見が得られ、そこから導き出した解は自社製品や自社サービスの売上向上に貢献するはずです。

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