商品開発で重要なコンセプト~つくり方と注意点を解説
コンセプトは概念という意味です。概念にはさまざまな意味がありますが、ここでは「事物の本質」という意味がふさわしいと思います。
したがって商品コンセプトは、商品の本質ということができます。
企業が商品開発をするとき、まず商品コンセプトをつくるはずです。これは、商品の本質を決めてから開発を進めたほうが、顧客に喜ばれる商品を効率的につくることができるからでしょう。
この記事では、商品コンセプトづくりの重要性を解説したうえで、つくり方と作成時の注意点などを紹介します。
商品コンセプトとは
商品コンセプトは、1)ターゲット、2)ニーズ、3)つくる技術の3つの要素で構成されています。
これからつくる商品を売るためには買う人、つまりターゲットを定める必要があります。ターゲットを定めることで、そのターゲットに買ってもらえそうな商品を開発できるようになります。
ではターゲットはどのようなときに商品を買うのかというと、ニーズを満たしたいときです。
それで商品コンセプトには、ターゲットのニーズに合わせてつくっていくことが求められます。
しかし、そもそも企業が、ターゲットのニーズに合った商品をつくる技術を持っていなければそれを商品にすることはできません。
商品コンセプトは自社の技術の範囲内でつくっていくことになります。
以上のことをまとめると、商品コンセプトとは、自社の技術でつくることができる、ターゲットのニーズに合ったもの、となります。
なぜ商品開発でコンセプトが重要になるのか
商品開発でコンセプトづくりが重要になるのは、商品コンセプトを定めずに開発してしまうと失敗する確率が高くなってしまうからです。
商品コンセプトを定めないということは、1)ターゲット、2)ニーズ、3)つくる技術、のいずれかを、またはすべてを無視することになります。
ターゲットのニーズを考えずに商品をつくってしまうと、誰のための商品なのか、何のための商品なのか不明瞭になってしまうでしょう。
自社の技術では本来はつくれない商品を無理やりつくってしまうと、品質が低下したりターゲットが求める機能が搭載されていなかったりしてしまいます。
ターゲットとニーズとつくる技術の3つを勘案した商品コンセプトをつくることで、顧客が求めるものを、顧客が求めるとおりにつくって販売することができます。
商品コンセプトをつくる方法
商品コンセプトをどのようにつくっていくのか解説します。
ターゲットとニーズとつくる技術を確認して確定させる
商品コンセプトを構成するターゲットとニーズとつくる技術を確認して、確定させます。
ターゲットは顧客像と言い換えてもよいでしょう。商品コンセプトをつくるときは「20代の既婚男性」や「50代の働く女性」といったようにターゲットを定めていきます。
ターゲットは、「誰に売るのか」や「誰のための商品をつくるのか」といった視点で探していきます。
ターゲットのニーズは市場調査などで把握していきます。市場調査には消費者アンケートや消費者インタビューなどの手法があります。
ターゲットのニーズとは、ターゲットが得られるメリットでもあるので「この商品はターゲットにどのようなメリットをもたらすか」といった検討も、商品コンセプトづくりでは必要になります。
自社が持つ技術は、社内調査を行うことで確認できます。社内の開発部や研究室、工場などを調査して自社のシーズを確認します。
市場価値、付加価値、差別化を検討する
商品コンセプトづくりでは、これからつくる商品の市場価値と付加価値と差別化も検討課題になります。
商品コンセプトに市場価値を持たせることができると、市場に浸透させやすくなるのでその商品が売れる確率が高くなります。
一度商品コンセプトが完成しても、そこに付加価値があるのか、あるいは、他社の商品と差別化できているのか、といった検証が必要になります。
付加価値が大きければ、市場からもターゲットからも評価されやすくなります。
他社商品と差別化できていれば、ターゲットから選ばれやすくなり、市場競争力を持つようになるので、その商品は長く生き残ることができるでしょう。
コンセプトシートの作成
商品コンセプトには、ターゲット、ニーズ、つくる技術、市場価値、付加価値、差別化を盛り込む必要があります。
そのためにコンセプトシートの利用が有効です。
コンセプトシートの様式
コンセプトシートは「コンセプトに盛り込む項目」と「その内容」で構成されます。構成自体はとてもシンプルです。
例えば次のように書いていきます。
■コンセプトシートの様式例
■ターゲット
●50代の働く女性
■ターゲットのニーズ
●家事の効率化
これはコンセプトシートを単純化したもので、実際は内容部分を詳細に書き込んでいくことになります。
また、記載項目をさらに細分化することで、誰でも商品コンセプトを「みえる」ようになります。
商品コンセプトは概念でありそれを実際にみることは難しいのですが、コンセプトシートを作成するとみえてくるようになります。
コンセプトシートの例
コンセプトシートの例を紹介します。
■コンセプトシートの例
■ターゲット
●年齢:50代
●性別:女性
●職業:正社員
●家族構成:夫、子供1~3人
■ターゲットのニーズ
●大きなニーズ:家事の効率化を図りたい。
●詳細なニーズ:外食が減ったことで家で食べる機会が増え、食事づくりが大変になってきた。ただ、家族の健康を守りたいという意識が強いので、栄養には注意したい。
■自社の技術
●できること:市場調査、メニュー開発、インターネットを使った情報発信、関東全域を網羅した販売網
●できないこと、苦手なこと:食材の調達、製造
●外部のリソース:食材の調達と製造はパートナー企業に委託できる
■市場価値
コロナ禍で「おうち需要」が増え、その後も順調に推移している。健康をコンセプトにした食材やミールセットの宅配事業は成長が見込める。
■付加価値
健康食材や健康ミールセットに低糖質や低カロリーといった付加価値を加えたい。
■差別化
物価の高騰で他社が値上げをしているなか、本商品を割安に提供できれば差別化できる。
商品コンセプトをつくる上での注意点
商品コンセプトやコンセプトシートをつくるとき、次の点に注意するようにしてください。
●顧客目線でつくる
●漏らさず、盛り込みすぎず
●社内外で評価する
1つずつみていきましょう。
顧客目線でつくる
商品コンセプトを構成するターゲットとニーズとつくる技術の3つのうち、ターゲットとニーズの2つは顧客に関することになります。つまり商品コンセプトの3分の2は顧客関連になるので、顧客目線でつくっていくわけです。
「誰が顧客になるのか(ターゲット)、その顧客は何を望んでいるのか(ニーズ)」を考えてから「それを自社が提供できるのか(技術)」を考えます。この順番で考えることが、顧客目線で商品コンセプトをつくることになります。
漏らさず、盛り込みすぎず
商品コンセプトが確定したら、マーケティング担当者、開発担当者、営業担当者、販売担当者は、コンセプトとおりのアウトプットを出していくことになります。
それぞれの担当者は商品コンセプトとおりに仕事をしていくので、商品コンセプトには必要なことを漏らさず盛り込む必要があります。
一方、盛り込みすぎないことも重要です。例えば、ターゲットを「高性能製品を求めている人」としているのに、「既存商品の価格の10%ダウンを目指す」という項目をコンセプトに追加してしまうと、コストダウンを追求するあまり高い性能を出せなくなってしまうかもしれません。
社内外で評価する
商品コンセプトがある程度完成したら、それを「仮のコンセプト」として社内評価を得たほうがよいでしょう。経営者や各職場の管理職などに仮の商品コンセプトをみてもらって意見をもらいます。また、従業員は最も身近な消費者でもあるので、従業員の感想を求めるのもよいでしょう。
そして、仮の商品コンセプトを社外の人に評価してもらうのも大切です。これをコンセプト調査といいます。
コンセプト調査とは
コンセプト調査は、受容性調査と呼ばれることもあります。消費者が商品を購入することを商品を受容したととらえると、受容度が大きいと商品が買われやすくなり、受容度が小さいと買われにくくなると考えることができます。
コンセプト調査では「この商品コンセプトがどの程度消費者に受容されるか」を調べていきます。
アンケート形式のコンセプト調査
コンセプト調査の形態は一般的な市場調査やマーケティング調査と同じです。例えばアンケート形式でもコンセプト調査を行うことができます。
アンケートの設問は例えば次のようになります。
●この商品コンセプトの商品が発売されたら買いますか
●このような商品があれば生活が便利になると思いますか
●この商品コンセプトに、コンセプトを「あと1つ」加えるとしたら、どのような要素でしょうか
●このような商品を必要としない理由を教えてください
インタビュー形式のコンセプト調査
既存顧客や一般消費者などに1対1のインタビュー形式で商品コンセプトの感想を聞いてもよいでしょう。
先ほど紹介したアンケート形式は定量データを入手できますが、定性データを取ることが苦手です(設問を工夫することでアンケートでも定性データを取ることは可能ですが)。
一方、インタビュー形式なら定性データを獲得することができます。例えば、インタビュイー(インタビューを受ける人)が「その商品コンセプトを評価しない」と回答したら「なぜ気に入らないのか」「どうしてそう思うのか」「どうすれば気に入るようになるのか」「ここを改善するとよりよいコンセプトになる」といったように、微に入り細に入り尋ねることができます。
アンケートとインタビューの両方を行うことが理想
コンセプト調査は、アンケートとインタビューの両方を実施することが理想です。
アンケートを実施すると、商品コンセプトの実力が数値でわかります。例えば「気に入った80%、気に入らない20%」といったように算出されるので、商品コンセプトを本採用するかどうかの決断に役立ちます。
しかしアンケートだけでは、消費者の本音がわかりません。アンケートでは例えば「価格があと3%安ければ欲しいのだが」と思っている人が「その商品コンセプトは気に入らない」と回答しているかもしれません。この人はむしろその商品コンセプトを高く評価しているのに、アンケート集計では「気に入らない」にカウントされてしまいます。
インタビューをすることで、なぜその仮の商品コンセプトが受け入れられるのか、もしくは拒絶されるのかがわかります。
まとめ
商品コンセプトは、商品開発の早い段階でつくる必要があります。ターゲットとニーズとつくる技術を確定させて商品コンセプトをつくれば、あとはそのとおりに開発、製造、販売、宣伝、営業していけるからです。
そして商品コンセプトづくりでは、市場価値、付加価値、差別化も盛り込みたいものです。
商品コンセプトをつくるときコンセプトシートを使うと、漏れのない、過剰にならないコンセプトをつくることができるでしょう。
仮の商品コンセプトができたら、社内外に評価を求めます。社外に対しては、アンケートやインタビューを用いたコンセプト調査が有効になります。
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