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最近の出来事から~職場を辞める理由それぞれ

 ゴールデンウイークが始まった最中に、NPO法人の保育園で仕事をしていた時の話です。私がお手伝いをするようになってから、近所に新たに開園した保育園から園宛に突然電話がありました。うちの代表がおっとり刀で電話に出ると、用件は「園を休園するので、園児を一人でもいいから預かってくれないか」という打診でした。休園となった理由は職員が辞めてしまったとのこと。

 保育園のある最寄り駅は決して人口流入があるところとは言えないのですが、二駅離れた駅は、今もその周辺に新築マンションが建ち、人口流入があるところです。市町村のHPで保育施設等の整備の案内を見ると、いまだに新設の保育施設の開設を進めている地域でもあります。そのため、駅として二駅離れていても、その地域の方から当保育園に声をかけていただけるところがあって、おかげさまで当法人も今年度は定員に空きがない状態です。ただ、保育士さんをはじめとする職員が基準を満たしていないと、定員を埋めることはできないので、職員の離職は園の存続に直結する問題なのは間違いありません。お電話をいただいた園の職員の方がどんな理由でお辞めになったか、定かではありませんが、当法人としても、過去に職員の離職が続いたこともあったので、対岸の火事では済まされない問題です。

 組織に属する人がその組織を辞める理由は様々です。私自身は最初の職場はちょうど30年勤め、その職場の紹介もあって退職して2つ目、3つ目の職場に移りました。2つ目の職場は会社が合併し、消滅会社になったので、かっこよく言えば経営責任をとっての退社となりました。3つ目の仕事は任期のある仕事でしたので、役職定年・任期満了での退社となりました。4つ目については、行政書士の開業のために、任期途中での辞任退社となりました。

 それぞれの会社での同僚の退社理由も様々でした。自分のやりたいことがあるという理由、結婚、この辺りは明確に本人が申し立てる理由になります。会社の先行きへの懸念、処遇に関する不満、今の職場の人間関係への不満といったものは、本人の胸のウチあったとしても、公式な理由として本人が申し立てることはありません。送別会の2次会あたりに行くと本音で話されることがあります。
 
 私が実際に直接本人から聞いた理由に、家族の介護に専念したいからというのがありました。介護の相手は本人のお父様で、普通のサラリーマンをされていて、ご病気は心臓疾患というものだったと記憶しています。その話を聞いた時、私は自分が親だったとすれば、自分の介護をするために子供に仕事を辞めることを認めるはずがないと違和感を感じ、すぐには応諾しませんでした。何回かの面談を経て、本人から辞める理由の介護は方便で、大学時代からパイロットになりたくて、応募の年齢制限の最後の年に養成学校の試験に受かったので、辞めたいというのが本当の理由でした。私は即座に辞めることに賛成し、社内的な手続きを申請しました。
 逆に銀行から保険に行きたいといった申出には転職をやめるように説得をしました。当時、金融自由化が進む中、銀行と証券、保険の垣根は低くなる過程にあって、銀行にいても保険の道に進むことは十分できたからです。

 前述の事例でも分かる通り、本人が公式的に辞める理由としてあげることが多い、「やりたいことがある」というのであっても、本人は理由を隠すことがあります。ましてや本人の胸の内にある、会社の先行きへの懸念、処遇に関する不満、今の職場の人間関係への不満といったものはほぼ顕在化することはありません。私のいた最初の会社は規模が大きく、バブル以降は少し変化もありましたが、そもそも会社先行きへの懸念や処遇に対する不満は発生しにくく、職場の人間関係への不満は人事異動で解消されることも多かったと思います。
 二つ目の会社は、業績面の不安定性や営業プレッシャーなどがあり、会社の規模からすると人事異動がままならず、やめていかれた方にはいろいろな思いがあっただろうなと思います。ただご本人にとって幸いなのは業種がITだったので、営業であっても技術であっても、業界全体としては右肩上がりで、則戦力とも期待され、同業他社への転職は難しくなかったことです。

 そして今、4つ目の会社やお手伝いしているNPO法人を見て思うのは、小さな組織の組織運営の難しさです。組織が未成熟なため、ちょっとした理由で、本当に簡単に職員が離職していきます。そして冒頭の近隣の保育園もそうだと思うのですが、職員が辞めた後、求人難で補充ができないのも今の特徴だと思います。だからこそ離職を防ぐことが猶更大事になります。離職させないためには、目的の共有、やりたいことが出来る職場づくり、人間関係で不満を持たせないような職場環境づくりといったことが本当に大事だなと思っています。

 NPOという組織は、ある社会課題の解決を目的として有する団体で、採用活動において、採用希望者に法人の目的を共有することは、最初に行います。ただNPO法人の理事や会員は原則ボランティアになりますが、職員はボランティアとは限らず、一般の労働者と変わらず有給では働くこともでき、NPOの目的に縛られない面もあります。そうであっても、NPOで働く以上、単純に報酬を得る場としてでなく、NPO自体の目的に共感して、色々な形で、自己実現を図って、生き生きとした人生を過ごしてほしいと感じています。又、人間関係においても自分の出来る範囲で協力し合う関係を作ってほしいとも願います。人にはそれぞれの事情もあるので、こちらの考えを押し付けることができませんが、出来ればそうあってほしいと切に思っています。


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